更新日: 2018/02/06
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
昨年出版した著書、『刺しゅうの基礎』では、クロスステッチについても書いています。スペースの関係で、書籍には写真をたくさん載せることはできなかったのですが、クロスステッチに使える布はいろいろあり、それぞれに特徴があります。
はじめてクロスステッチをされる方には、クロスステッチ用として売られているものが刺しやすいと思います。
ブロック織りと平織りの2種類がよく使われます。ブロック織りは、クロスステッチの×を刺すブロックが織りでつくられていて、「アイーダ」や「ジャバクロス」「オックスフォード」などがよく知られています。1ブロックが1マスのブロック織りは、そのブロックの端に針を入れればよいだけですし、クロスステッチの一目一目も揃いやすいので、初めての方でも簡単に始めることができます。
▲アイーダの布。1ブロックに1目刺したもの。
▲左:アイーダ、右:ジャバクロス。
同じブロック織りでもアイーダとジャバクロスでは織り方が違います。アイーダはしっかりしていて、ジャバクロスはしなやかです。ですから、クッションなどはジャバクロスなどを選ぶと肌触りもよいです。
アイーダには結構おもしろい色もありますよ。
▲アイーダの布。カラフルなものも売られている。
クロスステッチ用のリネンはほとんどが平織りです。織り糸1本1本がはっきり見えるものがクロスステッチ向きです。縦横の織り糸が同じ比率で織られています。平織りのリネンで刺す場合、織り糸の縦2本と横2本を1目として刺すことが多いです。織り糸の1本ずつで刺すこともありますが、とても細かくなります。織り糸2本ずつというのは慣れないうちはむずかしいので、まずは目の数えやすいブロック織りの方が刺しやすいかと思います。
▲クロスステッチ向きの平織りのリネンの布。縦と横の織り糸の間隔がほぼ同じもの。
また、織り糸と織り糸の間の空間が大きく、針を進める方向によっては×の形がいびつになったり、裏を渡る糸が表に見えたりするので、少し注意して刺すことが必要になります。
私が小学校の頃、初めてクロスステッチをしたのは綿のオックスフォード。手頃で比較的手に入りやすかったようです。
▲オックスフォードの布。このオックスフォードは縦横2本ずつ織られている。
同じ平織りでも綿とリネンとの違いとしては、これは好みの問題でもありますが、リネンの方が生地自体、美しいです。これを活かすために全部刺し埋めるようなデザインより、生地を見せる図案を選ぶとよいと思います。
下の写真は、左は綿の平織りのコングレス、右は平織りのクロスステッチ用リネンです。
どの生地にも共通して言えることは、クロスステッチ用の生地は糊付けがわりとしっかりされているということです。ですから、枠なしでも刺しやすかったりします。
生地の準備としては、糊付けはしっかりされていても、やはり刺繍をしている最中に裁ち端がほつれてくるので、刺繍を始める前に端をかがっておきます。目は粗くていいので、手でかがったり、ロックミシンやジグザグミシンをかけたりしてもよいでしょう。
▲耳が櫛のようになっているもの(写真左、ブルーのリネン)、ロックミシンをかけたもの(中央、こげ茶のリネン)、手でかがったもの(写真右、ブルーのリネン)。
布によっては、耳が櫛の歯のようにでているものがあります(上の写真・左端)。そのままにしておくと、刺繍をしている間に刺繍糸が引っかかって毛羽立ったりすることもあります。面倒ですが、ここは少し丁寧に、ロックミシンをかけたり、しつけ糸を使って手でかがったりしておくと、あとで作業が楽になりますよ。
ボンドで固めたり、マスキングテープなどでとめたりしているのを見かけたこともあります。マスキングテープはキャンバスワークのキャンバスなどにはよいのですが、端に硬い部分があると、糸が引っかかって傷んでしまうこともあるので刺繍する際には注意が必要です。
クロスステッチの布の話はまだまだ続きます。後編では、さまざまな布にクロスステッチするときのコツや注意点についてお話します。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/