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暮らしの本
読んだ人:庄司靖子(編集者)
『刺し子の手しごと』をひと目見て、いい本だな、ほっとするな、と思った。ページをめくると、目に飛び込んでくるのは藍や生成りの素朴な色、刺し子というと思い浮かぶ、伝統的な模様。そんな落ち着いた雰囲気が私をほっとさせてくれたのだ。紹介されている作品もとてもいい。ふきんをはじめ、コースターやティッシュボックスカバーなど、身近に置いて使えるものばかり。
また、「刺し子のはなし」というコラムでは刺し子の歴史にも触れ、実用から始まった刺し子がやがて装飾的な意味を持ち、こんにちまで受け継がれてきたということがわかり、とても興味深い。
担当編集者は刺し子の魅力について、「素朴でありながら潔いところ、ひと針ひと針、刺し進める時間の積み重ね。刺し子の奥深さは、防寒や節約といった、昔の人の知恵やものを大切にする心に通じるのだと思います」と教えてくれた。
昔、家庭科の授業で刺し子のふきんをつくったことがある。そのときは針目の長さがそろっていないということで注意を受け、急に楽しくなくなってしまった。そんな経験のある私に、担当編集者がこんな言葉をくれた。
「刺し子の魅力はひと針ひと針、無心になって“刺す”ことです。出来栄えの美しさよりも、手しごとの時間、そこから得られる充実感や癒しが大切なのではないでしょうか」
必要から生まれた刺し子という技術だが、昔の人も、無心に針を動かして、そのひとときを楽しんだのかもしれない。
伝統柄を中心とした刺し子の作品集。藍や生成りのシンプルな色をメインに、ふきんや袋物なども。刺し子本来の美しさを堪能して。
書籍名:刺し子の手しごと 伝統柄で楽しむふきんと小もの
ページ数:96ページ
判型:判型A5変型判
発売日:2017年9月
定価:1,404円(税込)