アート刺繍(前編)|伝統的なゴールドワークで「蜂のピンブローチ」に挑戦!作品を美しく見せるポイントとは? 講師:倉富喜美代さん

アート刺繍(前編)|伝統的なゴールドワークで「蜂のピンブローチ」に挑戦!作品を美しく見せるポイントとは? 講師:倉富喜美代さん

金銀にきらめくゴールドワークは、中世の時代より受け継がれてきた英国の伝統刺繍。英国王室の戴冠式のローブの装飾をはじめ、王室や教会、軍などの儀式や衣装に用いられてきました。今回、参加させていただいたのは、ゴールドワークのエッセンスを体験できるブローチづくり。前編、後編2回に分けてお届けします。

撮影:奥 陽子  取材・文:つくりら編集部 協力:パセリセージ

金糸、銀糸がびっしりと並んだゴールドワークは、一度はやってみたいあこがれの刺繍。でも、いかにも難しそうです。

 

初めての人でも1日ででき上がる?

今回、参加した倉富喜美代さんのレッスンは、そのゴールドワークが、“初めての人でも1日で作品を仕上げられる”という夢のようなワークショップ。

テーブルには、刺繍枠に張られた黒い布が用意されています。倉富さんが途中まで仕上げてくれている刺繍を見ると、その小ささにびっくり。本当にできるのだろうか・・・早くも不安がよぎります。

用意された刺繍枠には、布が動かないように白い晒が巻かれています。少しのたわみもなく、まるで太鼓の鼓面のようにパンパンです。

こちらが先生の見本。色違いで2つも。幅3㎝、高さ3.5㎝。本当に小さい!

 

蜂の胴体部分をつくる

蜂のブローチは、1.胴体部分(下部)、2. 胴体部分(上部)、3. 羽部分 と3つの工程の順に進みます。

胴体下部の一番上に留めつける紫のメタル糸をカットします。

このメタル糸というのが、ゴールドワークの立役者。細い針金のような糸がコイル状になっていて、真ん中は空洞。そこに針を通します。カットして竹ビーズのように留めつけることができます。

一度、割れたり、曲がったりすると元には戻らないので、糸に対して直角にはさみを入れることがポイント。慎重に。

12番という超極細針に糸を通して留めつけていくのですが、その前に忘れてはならないのが、糸のロウ引きです。

「ロウ引きは、糸の強度を高めたり、糸通りをよくするために行うものです」と倉富さん。慣れない手つきでおぼつかないのですが、ロウ引きを。

メタル糸に通す糸には、必ずロウ引きをする。作業が進むにつれ、この“鉄則”を忘れてしまうことも。うっかりロウ引きを忘れて刺し始めてしまうと、とたんに糸通りが悪くなり、その違いに愕然。ロウ引きの大切さを実感しました。

ロウ引きを終え、いよいよメタル糸の留めつけ作業です。胴体下部の内側の輪郭の際(きわ)ギリギリのところに、紫のメタル糸の先端を出さなければならないのですが、この「裏側から針を出す」が、なんとまあ、ビギナーには難しいこと!

「目打ちを使ってメタル糸をしっかり際に寄せましょう」と倉富さんが実演。

「針を刺したら、針を細かく動かしながら、出したい位置に少しずつ針を移動させていくような感覚で」と倉富さん。なるほど、とナットクするものの、指はなかなか言うことを聞いてくれません。

この「裏から針を出す」がうまく行くまで、ずいぶんと時間がかかってしまいました。でも、0.1ミリくらいの細かな狂いを「ま、いっか」と妥協しないことが、美しい仕上がりにつながるということを、刺し進めていくうちに痛感するのでした。

紫のメタル糸を刺し、続いてシルバーのメタル糸を刺し終わりました。たった5本の糸を刺す工程ですが、かなりの集中力。へとへとです。

 

キラキラ糸でお尻にきらめきを

蜂のお尻は、ブライトチェックと呼ばれるコイル状のキラキラした糸をランダムに留めつけます。約2㎜の幅でカット。

あっち向いたり、こっち向いたり、という感じで、ランダムに留めつけていきます。

 

胴体上部はカーブで難易度アップ

胴体上部は、右側、左側それぞれ、メタル糸をカーブするように留めつけます。今回の作品いちばんの難所です。

ゆるやかにカーブした状態で、枠のなかに、短すぎず、長すぎず、ちょうどいい長さにメタル糸をカットするのが、これまた難儀。寸足らずになってしまうのを避けたくて、ついつい長めにカットしてしまったり・・・。

際ギリギリから針を出し、メタル糸を通します。

右側だけ留めつけたところ。いちばん外側のメタル糸がやっぱり少し長すぎたみたいで、シワが寄ってしまいました。

このあと、左側も留めつけ、さらに真ん中の三角のスペースにブライトチェックを少し刺して、胴体終了。ここまでがとても細かい作業だそう。

 

羽は太めのメタル糸で

最初の針は、真ん中のバロックパールの下あたりから刺し、ぐるりと輪にして両端を留めつけます。

端だけとめると、このようにピンと張った状態に。

メタル糸を軽く手で引っ張りながら、コイル状の溝に糸が入るように、バランスよく羽を留めつけていきます。

細めのメタル糸と丸小ビーズを使って、羽の中の脈と模様を刺していきます。

丸小ビーズは、もっとたくさん刺したかったのですが、途中で糸がからまってしまい、作業が遅れてしまったので、やむなく左右各4個にとどめて、先へ進むことに。

 

足と目をつけて、蜂らしく

バロックパールの両脇に、ブライトチェックで足を刺したら、目を入れて、裏側を始末したら、でき上がりです。

刺繍枠から布を外し、輪郭に沿ってはさみでカットします。

裏布を当てて、カットします。

ピンブローチを固定し、裏側をボンドでとめて、でき上がりです。

左が倉富さんの見本。右が私の作品です。少々、ずんぐりむっくりになってしまいましたが、初めてにしてはまずまずのでき映えと自画自賛。

「はさみでカットするときに頭を小さく、羽の部分からふくらませていくと、美しいダイヤ形になります」と倉富さん。できる限り左右対称、シンメトリーなシルエットにするのもポイントのよう。「仕上がったら、蒸気をあてると下書きの線が消えますよ」

 

作品を美しく見せるポイントとは?

ワークショップ中、裏側から針を刺す位置やステッチが揃うことに腐心していましたが、完成度の高い作品に仕立てるためには、もうひとつ大切なポイントがあると倉富さんは言います。

「作品をより美しく見せるコツは、裏打ちなどの仕上げをきれいに行うことです」

ワンディレッスンの「蜂のブローチ」は、刺していく工程も時間がかかるので、裏生地は接着剤でとめるという簡易な仕上げですが、ひとつの作品を数回で仕上げるレッスンだと、この仕上げのテクニックもたっぷり教えてくれるそう。

「どんなに緻密で細やかな刺繍であっても、仕立てが雑だと、やはり商品としてお客様にはお出しできませんから」

百貨店やギャラリーで作品展を数多く手がけてきた倉富さんの説得力のある言葉です。試行錯誤を重ねて培われたプロのテクニックを伝授していただけるとあれば、今度はぜひ連続したレッスンで作品を仕上げてみたい――そんな意欲も湧いてきました。

「蜂のブローチ」のレッスンは、12月5日にも開催されるそう。

 

後編では、倉富さんのアーティスティックな作品を紹介します。

おすすめコラム