更新日: 2018/02/08
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
前編では、クロスステッチ用の布をご紹介しました。後編では、さまざまな布にクロスステッチをするときのコツや注意点についてお話します。
端の始末は手間がかかって苦手という場合は、テーブ状のものがおすすめです。気軽に刺し始めることができます。
▲上:綿のクロスステッチ用テープ、下:リネンのクロスステッチ用テープ
生地売り場のリネンや、雑貨売り場のキッチンクロスなどでもクロスステッチのできるものがあります。
▲平織りのリネンで織り糸が数えやすく、縦横の織り糸の並び具合が同じならクロスステッチ向き。重ねてある上からリネン100%の市販のキッチンクロス(青の縞)、ヘムかがりをした平織りリネン(緑)、はぎれで売られていた平織りのリネン(一番下)。
▲キッチンクロス(布巾)としても使える薄手の平織りリネン。織り糸2本を1目としてクロスステッチ。(図案 NEEDLEWORK LAB オリジナル)
▲粗いチェックのリネン生地のポーチ。(図案 Sajou 5)、トリコロールのライン入りの綿麻生地。(図案Rouyer 293)
▲服地として売られていたイギリスの綿100%の生地。スカートなどに。
クロスステッチ用以外の布に刺すときは、縦横の比がほぼ同じになることが大切です。同じ図案でも縦地に刺すか、横地に刺すかで、縦長になったり横長になったりしてしまいます。
▲ 左:縦地で刺すと縦長に。右:横地で刺すと横長に。 図案デザインRouyer264
毛糸などを使ってクロスステッチする場合はキャンバスを使います。キャンバスは平織りのリネンなどと違って、穴の部分が大きいため、一つの穴に糸が4本入る余裕があるので、綿の刺繍糸でも細かいキャンバスを使って、クロスステッチなどをするとプチポアン風の繊細な作品をつくることができます。
▲目の粗いインターロックキャンバス。左から70目、56目、48目。
▲絹キャンバス。綿の刺繍糸でもプチポアン風に繊細なステッチをすることができる。
刺せそうだけれど、意外と刺しにくいものもあります。リネンガーゼなどは織り糸が細い平織りで、糸と糸の間が空きすぎているうえに、インターロックキャンバスのようにからみ織りではないので糸が動いてしまいます。
▲リネンガーゼ。麻の粗い布で織り糸が動いてしまって刺しにくい。
抜きキャンバスは、目の数えられない布の上にマス目を付けて刺すという道具で、あとで抜いてしまうものです。ごく普通のブロードやシーチングなど、目の数えられない布に刺したいときに使います。
織り糸が1本1本数えられないような布にもクロスステッチを刺すことができます。その場合は、抜きキャンバスを使ってクロスステッチをします。抜きキャンバスを載せてクロススステッチをし、織り糸を引き抜くとクロスのステッチが残ります。
▲抜きキャンバス。しつけ糸で止めてクロスステッチをしてから織り糸を抜く。
また、方眼になるように穴が開いていて、そこに刺繍をし、水につけてシートを溶かす「ソルブルキャンバス」(DMC)、溶けるシートに方眼紙が印刷されていて、貼ってクロスステッチをしたあと、シートを水に溶かす「ソルブルステッカー」(DMC)、「はるはるキャンバス」(チャコペーパー株式会社)などもあります。
▲下の「家」のデザインのクロスステッチが「抜きキャンバス」を使って刺した作品。『刺しゅうの基礎』の78ページに掲載。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/