更新日: 2017/12/28
文:安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
以前、誌面に掲載するためクロスステッチで全面を埋めてお守り袋にする、という仕事をしたことがあります。お正月や縁起物をテーマにして、その年の干支のうさぎや犬張子などをデザインしました。
▲『ステッチidees Vol.12』(絶版)と『クロスステッチの基礎BOOK』(共に日本ヴォーグ社刊)に掲載された作品。
制作するにあたり、有名な寺社まで行ったり、持っているお守りの袋をまじまじと観察したりしました。袋の柄は、吉祥文様などが多く、ひもなどで、袋の口が結ばれています。そのような飾り結びにはいろいろな結び方があり、縁起をかついだり、祈りがこめられています。
お守りには二重叶結び、または二重守り袋結びと呼ばれる結び方がよく使われています。
縁起のいい結び方です。表側が口、裏側が十字に結ばれ、叶(かな)うという字になるからなんですね。
昔、自分の茶道具に毒が入れられないように、持ち主しかわからない、花に結ぶ、複雑な結び方があったとか。持ち主しか、元のとおりに締められないなんて、と思いました。偉い方は手先も器用でないといけなかったのかしら?
そこまで複雑でなくても、生活の中に取り入れられている日本の「結び」。今でもアクセサリーなどで見かけます。
それらに使うひもはいろいろあります。
好きなひもでかまわないのですけど、アクセサリーづくりなどで売っているアジアンコードというのが結構結びやすくて気に入っています。つくりたい形のままで止まってくれるのがいいです。
アジアンコードはポリエステルですが結びやすくて、結び目もしっかりきれいにできます。ほかにも手芸店にはいろいろなひもがあり、1~4.5㎜ぐらいのが結びやすいように思います。
色もたくさんありますし、小分けにされて売られているのが使いやすいです。
ひもの端の始末は、今は便利なコードエンドというプラスチックも手に入りますけど、ひもの玉になっているのもかわいいですね。
淡路結び、あるいはあわび結びや釈迦結びと呼ばれるものがあり、それを引き締めて結び、玉にしたものなどがあります。洋服の飾りボタンのように使うことができます。
下の写真のピンクは、淡路結びのひもを引き絞って玉にしたもの。赤と青は、菊結びです。
▲ピンク:淡路結びを玉にしたもの、赤:菊結び 青:八重菊結び
淡路結びの玉に結ぶやり方はいろいろあり、1回目のところと同じところを2回目で通し、ひもを引いて形を整えると、丸い形になります。
菊結びは華やかさがあるのに比較的簡単に結べる結び方です。引き出すひもの数が増えると八重菊結びになります。写真は1本で結んでいますが、2本どりで結ぶとさらに豪華に見えます。
結び方さえ覚えれば、これをイヤリングとして使う方もいらっしゃるようです。ほかの結び方で、ブレスレットやブローチ、髪留めなどのアクセサリーにもできます。
私はやはり、王道の着物周りの小物に付けたりしたいですね。いちばんしっくりきますから。
Instagram:@tsukurira0714
安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
文化服装学院デザイン専攻を卒業後、同校に洋裁の教員として勤務。現在は刺繍や洋裁の手芸誌で作品を発表する傍ら、つくり方指導、フランス手芸書の日本語版の監修などを行う。2007年から始めたブログ「もったいないかあさんのお針仕事」は、手芸をたしなむ多くの人々に愛され、現在、490万アクセスを超える。 初の著書『刺しゅうの基礎』を日本文芸社より出版。http://mottainaimama.blog96.fc2.com