更新日: 2017/11/29
文:安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
手芸屋さんの毛糸の売り場に行くと、似たような感じで、値段はだいぶ違う毛糸がたくさん並んでいます。
毛糸といいますと、私の中ではウールなど毛のもの。混紡までは、まあ、毛糸かな?という感じで、アクリルになると何となく毛糸とは違う感覚です。きっと、手ざわりや編んでいるときの感触がどこか違うからだと思います。
子どもの頃は、ハマナカの編みもの小冊子みたいのを年間購読していたり、編みものの本もけっこう買っていました。そして、そこに載っているものと同じ毛糸を買って編んだりしていました。同じ糸なら、まあなんとか同じくらいのゲージになるし、同じようにできあがるのがよかったのです。
大人になると、こんどはちょっとこれで編んでみようか、本と同じ材料でなくても大丈夫じゃない?と、安い糸に手を出してみるわけです。
編んでいるとふんわり柔らかくて気持ちよかったりするので、さぞかし「いいもの」ができるかと思ったら、ベストは着ているうちにだら~んとなってきました。とろけるように気持ちいいと思っていた獣毛の糸も楽しく編んでみたものの、弾力性に欠けるというか。実際に着ていると、これまた、たら~んとしたカーディガンに。
一方、ある程度の値段のメーカー品で帽子を編んでみましたら、編みやすいのはもちろん、着用を繰り返しても型崩れせず、古っぽくならずにいます。
編み目、編み方やゲージなどにもよるのでしょうが、個人的にはパピーの「クイーンアニー」などは、羊毛の違う品種をブレンドすることでやわらかさと弾力を出しているそうで、昔から気に入っています。
編み目もきれいに出て、じぶんが編みものが上手なのかな?と思えてきて、さらに楽しくなります。
また、フェアアイルセーターを編むためのシェトランド・ウールは、弾力があって、軽く暖かく、編んでいても疲れにくいというか、楽しく編める糸です。
とにかくものすごく種類のある毛糸というものは、編みやすいか、着ていてだら~んとしてこないかなどは、編んだあとに気づくもの。糸を買う時点ではなかなか気づけません。
わかる人にはわかるのでしょうが、むずかしいです。まして、ネットでは手に取って確認することもできません。値段と品質はある程度比例すると思っています。編むのにかかる時間を考えると、お値段が少々張っても、編みやすい、編み上がりがきれいで、着ていてだれてこない「いい糸」で編みたいものです。
安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)
文化服装学院デザイン専攻を卒業後、同校に洋裁の教員として勤務。現在は刺繍や洋裁の手芸誌で作品を発表する傍ら、つくり方指導、フランス手芸書の日本語版の監修などを行う。2007年から始めたブログ「もったいないかあさんのお針仕事」は、手芸をたしなむ多くの人々に愛され、現在、480万アクセスを超える。 初の著書『刺しゅうの基礎』を日本文芸社より出版。http://mottainaimama.blog96.fc2.com