針の捨て時の見極め|針磨きを使って寿命を延ばす方法もありますが、曲がったり、先がつぶれたり、錆びたりしたら、新しい針に替えましょう。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB)  撮影:天野憲仁(日本文芸社) 

手縫い針、針通りが悪くなったら、針みがきでちょっと復活

針はいい針を選んでも、さすがに一生ものというわけにはいきません。錆を防ぐことはできますが、使っていれば、折れたり曲がったりというのはしょうがないですね。

曲がっていると縫いにくいですから、やはり、布に適した針で正しい使い方をして長く使えるように努めることと、だめになったらあきらめて、新しい針に替えることが大事です。

ほんのちょっと針通りが悪いだけ、というようなときはまだ捨てないで、針磨きを使います。針磨きに針を何回か刺します。すると針通りの悪かった針でも、少し縫いやすくなります。これでもう少し針の寿命を延ばすことができます。

ただし、この針磨きは新しい針には使わない方がいいそうですよ。新しい針は研磨され、錆び防止のメッキがされているので、汚れのついてない状態で磨いてしまうのはよくないのでしょうね。


▲左に刺してある針は、先端が曲がってしまった刺繍針9番。こうなったらあきらめます。.右のいちごは針磨き。

 

錆びちゃったら・・・

湿気の多い日本では、針が錆びることもあります。いったん錆びてしまうと、今度は針磨きを使っても元のようにはなりません。

私が失敗したのは、あまり使わない木の裁縫箱の中に、表は木綿のパッチワーク、中はポリエステルの綿でつくったピンクッションに針を刺してしばらく使わなかったときのことです。

木綿の部分と接触していたところだけ、錆びました。こうなると、磨いてから布を縫ってみても、その部分に引っかかりが生じるのがわかります。

 

ベストな保管方法

桐の箱に入れてしまっておくと、錆びたりはしません。


▲三條本家みすや針の桐の箱

チューリップの針には、どの針のケースにも防錆紙が入っています。この紙は大事なので無くさないようにしましょう。


▲チューリップのクロスステッチ針とフランス刺繍針。

よく使う針はウールの針刺しに。ピンクッションは自作で、中身も、くるんでいる生地も毛100%にしてつくります。ウールが湿気の調節をしてくれるので、針にいいですね。

 

糸を通したままもよくない

綿の刺繍糸を刺繍針に通したまま、しばらく放っておいたことがあります。なんとまあ、針の穴の中が錆びてしまいました。

このときは、もう少し使うために、紙やすりを入れて中だけ錆を落として使いました。ただ、あくまでも応急処置です。


▲刺繍針の穴に紙やすりを通したもの。

 

ミシンの針

ミシンの針の先はいつも新品同様であるべきで、曲がったり、つぶれていたり、すりへっていたりしていてはいけません。

糸引け、糸返り、パッカリング(縫製時にできる縫い縮み)などが起きてきれいに縫えないことがあります。ミシンの不調は針を替えるだけでよくなることが、かなり多いです。


▲ミシン針。世界中で針のトップブランドとして認められている「オルガンを弾く婦人のマーク」のオルガン針。

洋服を1枚縫ったら、針も取り替えるように、とおっしゃる先生もいらしたくらい。特に裏地などはデリケートで針が悪いとキズになってしまいますから。

紳士服のお店で修業した経験をお持ちだった恩師は、ほんの少しだけ引っかかるだけでもだめだから、指先で確認して、少しでも引っかかりを感じたら、お茶碗の糸じりでこするといいと教えてくださいました。私は、細かい目の紙やすりを使っています。これは応急処置的なものですから、できれば早めに取り替えるのがよいです。

 

折れ針の保管法

折れてしまった針はビンなどに入れて保管しておきます。

水性ペンやスティックの糊の替えが売られていて容器はただ捨てるしかないですが、折れ針入れには十分使えるので利用しています。ほかに、ビーズの入っていた容器も使えます。


▲手前:(左から)ビーズの入っていたガラスビン、スティック状の糊の替えが入っていた容器、ビーズのプラスチック容器、奥:ペンの替え芯

 

針に感謝する日本の習わし「針供養」

洋裁を習っていたときは学校で「針供養」もありました。

豆腐やこんにゃくといった軟らかいものに刺して、硬い布を縫った針に感謝し、針仕事の上達を願う、いかにも日本らしい習わしです。12月8日や2月8日に行われています。

私が使っている和裁の針やクロスステッチの針のお店では、鉄なので、土に埋めれば土に返っていきますとのことでしたので、うちではプランターの隅に、わかるように札を立てて埋めておきました。たしかに消えてなくなりました。

錆びないということで、洋裁ではステンレスの針もありますし、待ち針の頭も土に返らない素材がほとんどですから、どれも土に埋めていいというわけではないでしょう。

捨てるしかないとしても、感謝の気持ちを持って処分したいものです。

 

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