ロウ引き|ナチュラルな風合いが出せる麻の刺繍糸。毛羽立ったり、途中で切れてしまうのが難点ですが、軽くロウ引きすることで刺しやすくなります。

文:安田由美子(もったいないかあさん NEEDLEWORK LAB)  撮影:天野憲仁(日本文芸社)

麻の刺繍糸について、もう販売されなくなった商品もあると書きました。少し刺しにくさもあるのが一因でしょうか。

上の刺繍は、麻の刺繍糸で刺したものです。ナチュラルな雰囲気がいいですね。でも、刺している途中で毛羽立ったり、やせ細って切れてしまったりということもよくあります。

糸を長くして使わないようにして切れるのを防いだりもしますが、軽くロウ引きするという手もあります。軽く、というのは、たくさん付けてしまうと、ロウが表面に付くことによって、毛羽立ちが抑えられてしまい、見た目が極端に変わることがあるからです。

 

ロウ引きするロウの種類

ロウには、蜜蝋(ミツロウ)やパラフィンなどがあり、レザークラフトでは蜜蝋(ミツロウ)、洋裁ではパラフィンが使われています。

こちらが蜜蝋(ミツロウ)です。

こちらがパラフィン。左は100円ショップの洋裁ロウ、右は文化学園ショップで買った洋裁ロウです。

レザークラフトの手縫いの麻糸もロウ引きをすることで丈夫に、また、滑りがよくなって切れにくくなります。レザークラフトで使うのはミツロウ、ビーズワックスとも呼ばれています。ロウ引きするときはロウに糸をのせ、親指で押さえて糸を引きます。

麻の手縫い糸はレザークラフトで革を手縫いするときによく使われます。 糸の擦れの防止と、縫い目がゆるまずにしっかりするよう、必ず、ロウ引きして使います。

 

パラフィンとミツロウの違い

パラフィンは、糸の表面に付くと白く粉状のものが付いたようになります。下の写真は、上からロウ引きしていない麻糸、ミツロウでロウ引きした麻糸、パラフィンでロウ引きした麻糸です。パラフィンだとずいぶん白くなってしまうのがわかります。

ですので、パラフィンはそのまま使うよりアイロンをかけるのがおすすめです。

糸の表面に粉状に付いてしまったパラフィンは、アイロンで中までしみこませるのが大事です。紙に挟んでアイロンをあて、ロウを熱で溶かして余分なロウを紙に吸い取らせます。

洋裁では絹の穴糸にロウ引きしてボタン穴かがりをすることがあります。絹の穴糸はZ撚りの糸で普通の手縫い糸に多いS撚りとは逆です。

ですから、そのまま使うとからまりやすかったりしますが、洋裁ロウをしみこませることによって滑りもよくなり、また、糸が安定してからまりにくく、丈夫になります。

ロウ引きされた糸は絹糸でもピンと立ちますよ。

 

刺繍糸にはミツロウがおすすめ

糸を見せる刺繍としては、パラフィンを使ってアイロンをかけるより、そのままで白くなってしまわないミツロウが個人的にはいいと思っています。

紳士物のボタン付けなどに使われる「ツレデ」などは、すでにコーティングして売られている麻糸です。

私が紳士服の修業をしたことのある先生に教わったとき、ツレデという糸を知りました。今はレザークラフトでも使われていますね。ロウ引きした麻手縫い糸【細】と同様の目的に使われ、より細いものが必要なときに使われています。

現在はボタン付けというとポリエステルが多いですが、麻糸のほうが絹糸のボタンホールに優しい気がします。

ビーズ刺繍に使う糸も、ミシン糸などを使う場合、からまってきますので、ロウ引きしてから使うとからまりにくく、滑りもよくなって丈夫になります。

短く切って使えばそれほど絡まりは気にならないかもしれませんが、この一手間でぐっと作業が楽になります。

 

ミツロウにひと工夫

洋書でアンティークのお裁縫箱を見かけます。なかにはミツロウが入っていることがあるようです。それがなかなかおしゃれな形だったりして、手持ちのボタンを利用して、似た形のものをまねしてつくってみました。

ミツロウは焼き菓子のカヌレをつくるときに使ったり、リップクリームをつくったりするのに使った残りでつくりました。

お裁縫箱にひとつ入れておくとなにかと便利ですよ。

 

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