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二十四節気 暦のレシピ 第13話 寒露|重陽の節句に思いを馳せる菊花寿司

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10日8日から10月23日までは寒露(かんろ)。今回の暦のレシピは、菊花寿司です。

制作・文:猪飼牧子  撮影:清水美由紀

10月8日から二十四節気は寒露となりました。空気は澄み渡り、見上げた空は高く、日に日に夜が長くなってきます。

 

菊は「重陽の節句」を祝うおめでたい花

この時季、私たち日本人にとてもなじみのある菊の花が旬を迎えます。今は一年中花屋さんには菊の花が置いてあるので、実際の菊の季節がわかりにくいですが、昼よりも夜が長くなってくると蕾を膨らます短日植物の菊は、本来この時季に咲く花です。

菊の花は「五節句」という祝いの日とも深いつながりがあります。五節句とは、中国から伝わり、江戸時代に制定された祝いの日で、無病息災、子孫繁栄、五穀豊穣などをさまざまな形で祝っていました。

五節句は、「1月7日 人日(じんじつ)の節句」、「3月3日 上巳(じょうし)の節句」、「5月5日 端午(たんご)の節句」、「7月7日 七夕(しちせき)の節句」そして、「9月9日重陽(ちょうよう)の節句」の5つの日。この中の「9月9日 重陽の節句」は「菊の節句」ともいわれ、菊を観賞したり、薬効の高い菊の花の香りを移した菊酒を飲んで長寿を願ったりしたそうです。

古来から薬用や食用としても親しまれ、解熱や解毒作用などから漢方にも多く使われている菊は、節句を祝うおめでたい花でもあるのです。

重陽の節句の9月9日は旧暦。旧暦と1か月差がある新暦では、実際の菊の旬の時季は10月、二十四節気でいうと寒露の頃です。新暦の9月9日頃は菊の旬にはまだ早いため、重陽の節句は、他の節句に比べてあまり注目されることがなくなってしまいました。素敵な風習なのにもったいないですよね。

ちょっと影の薄い重陽の節句ですが、寒露の七十二候「菊花開(きくのはなひらく)」にもちなみ、今回は旬の時季に菊を楽しめる菊花(きっか)寿司のつくり方をご紹介します。

 

菊花寿司のつくり方

材料(1人分)

写真上段左から
食用菊・・・3〜4つ(菊の花の大きさによって調節)
乾燥菊「もってのほか」・・・1.5g
シソの葉・・・2〜3枚 
下段左から
寿司酢・・・小さじ2強
白ごま・・・小さじ1.5
白米・・・100g

今回は生花と乾燥の2種の食用菊を使います。生花はフレッシュな香りと新鮮な歯ごたえを楽しむことができますが、長期の保存には向きません。乾燥菊は生花の香りや歯ごたえにはかないませんが、保存に優れ、必要な量だけその都度使えるのでとても便利です。

※キク科アレルギーの方はお召し上がりにならないでください。万が一、体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。

つくり方

1.乾燥菊に酢小さじ1(分量外)を加え、30℃ほどのぬるま湯に漬けて10分〜15分ほど置いておく。

2.食用菊は花弁だけを取り、ほぐす。

3.沸騰した湯に、酢大さじ1(分量外)を加え、花弁を入れてさっと湯がく。

4.すぐに冷水に浸す。

5.1でぬるま湯に漬けておいた乾燥菊と、湯がいた食用菊の両方ともしっかり水を絞る。

6.シソの葉を2ミリ幅のせん切りにする。

7.白米に寿司酢を混ぜ、酢飯をつくる。

8.絞った菊の花びらを、手でほぐしながら酢飯に入れる。ほぐさないと全体を混ぜるときに固まるので注意する。

9.シソの葉と白ごまを加える。

10.全体をよく混ぜる。

11.ラップに包んで両脇を絞り、俵形にする。

12. 器に盛ってでき上がり。

 

スーパーでも手に入る食用菊

食用菊はあまりなじみがないかもしれませんが、東北や北陸あたりの方はご存じの方も多いかと思います。特に山形県は食用菊の産地として有名です。

今回は黄色と赤紫色の食用菊を使いましたが、黄色の食用菊は、比較的どこのスーパーでも通年販売されています。赤紫色の菊は「もってのほか」といわれる菊で、9月末〜10月になると生花で出回ります。干し菊や菊海苔といわれる乾燥菊は、黄色の食用菊、赤紫色「もってのほか」ともに通年インターネットなどで販売されています。

スーパーで売っている食用菊は量が多くて使い切れない・・・という方も多いかと思います。その場合は、買ってきたら全ての花弁をとって今回のレシピでご紹介したように、湯がいて絞り、タッパーに入れておけば冷蔵庫で1週間は持ちます。小分けにしてラップで包み冷凍保存も可能です。使う場合は自然解凍で、2か月ほどで使い切るようにしましょう。

 

菊花寿司はお弁当にもおすすめ

彩りも美しい菊花寿司は、お弁当にも最適。酢を使っているため傷みにくいので、運動会シーズンのこの時期にぴったりです。曲げわっぱのお弁当箱に詰めたらとってもきれい!食欲をそそります。

みんなで少しずつつまむお弁当なら小さめのお団子状にしても可愛らしいですね。

冷凍や冷蔵保存した菊は、菊花寿司のほかにもいろいろな活用法があります。汁物や煮物の彩りにしたり、そのまま三杯酢や寿司酢を菊にかけたりするだけでも、しゃきしゃきとした歯ごたえがあり、美味しく手軽に食べられますよ。

見た目にも、健康にも良い菊。ぜひ気軽に試してみてくださいね。

 

つくりら編集部よりお知らせ

NEROLIDOLの猪飼牧子さんとフォトグラファーの清水美由紀さんの連載、「二十四節気 暦のレシピ」は、大幅な新規取材を加えて、書籍『二十四節気 暦のレシピ』としてみなさまにお届けします。

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