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二十四節気 暦のレシピ 第6話 夏至|半夏生の籠活け

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6月22日から7月6日までが夏至。この時季に花を咲かせる半夏生を使って籠活けのアレンジをご紹介します。

制作・文:猪飼牧子(NEROLIDOL) 撮影:清水美由紀

6月22日より二十四節気は夏至(げし)となります。夏至になったその日は、一年の中で昼の時間が最も長い一日です。

ちょうど梅雨時で、日の長さの変化を実感しにくい時季でもありますが、夏至になった日を境に一日の昼の時間は短くなってきます。ただし、夏至は日の出が一番早く、日の入りが一番遅い訳ではありません。

一年の中で日の出が一番早いのは夏至の10日ほど前、日の入りが一番遅いのは10日ほど後なのですが、トータルすると夏至の日の昼の時間が一番長いという訳なのです。

 

七十二候「半夏生ず」にちなんだ2つの植物

夏至から11日目位にあたる七十二候は「半夏生ず(はんげしょうず)」です。「半夏(はんげ)」とは「烏柄杓(カラスビシャク)」という薬草のこと。ちょうどこの時季に生えてくるサトイモ科の植物で、漢方の生薬「半夏(はんげ)」として知られています。

「半夏」と名前がよく似ている植物に「半夏生(はんげしょう)」があります。こちらはドクダミ科。本草学者によると、暦の「半夏生ず」の時期に花が咲くことから「半夏生」という名前がついたとも。

半夏生の花はとてもとても小さい花。余りに地味で受粉を助けてくれる虫たちに気づいてもらえないため、花に一番近い葉(苞葉)の色を白く変化させるのが特徴です。それがまるで化粧をしているように見えることから「半化粧(はんげしょう)」ともいわれています。

まぶしいほどに白く染まった葉が一面に広がる姿は、瑞々しく清らかで麗しい。吸い込まれるように目を奪われます。

花の時期が終わると、白く変化していた葉はもとの緑色に戻ります。不思議なものですね。植物の知恵を感じます。

 

半夏生の籠活け

半夏生は白くなった時季だけ、花材として市場にも出回ります。涼しげな半夏生は花束などに入れてもよいですが、籠にシンプルに活けるのも粋なもの。

籠に活けるときのコツは「落とし」と「花留め」です。「落とし」とは、直接水を注げない花器の中に入れる容器のことです。「花留め」は、器に背の高い枝物などを活けるときに植物がぐらつかないように固定するためのもの。フラワーアレンジでは枝を十字に組み合わせてつくったりします。

今回は、身近にあるペットボトルを使って、花留めつきの落としを手づくりして、半夏生とドウダンツツジの活け方を紹介します。

用意する材料と道具 
上段左上から、花を活けたい籠(直径10cm、高さ14cm)、底の平らなペットボトル、下段左から、黒い厚紙、ワイヤー20号〜18号を2本、キリ、ハサミ(写真の材料のほか、セロハンテープも使用)

花材
左から、半夏生、ドウダンツヅジ

1.籠の高さよりも3〜4cmほど低い高さにペットボトルを切る。

2.ペットボトルにキリで穴をあける(合計12か所)。1つめの穴と2つの穴は1センチ弱ほど離して隣り合わせに。次の2つの穴は最初の穴の真向かいになるようにあける。

3.次の4つの穴は、最初にあけた穴と90度ずれた位置に同じように向かい合うようにあける。最後の4つの穴は2であけた穴の間に向かい合うようにあける。

4.ワイヤー2本は3分割に切り、合計6本つくる。

5.1つめの穴とその向かいの穴にワイヤーを通し、両脇の余りのワイヤーは器の内側に折り込む。

6.同じように2つめの穴にもワイヤーを通す。

7. 次に最初に開けた穴の90度隣にあけた4つの穴に同じようにワイヤーを2本平行に通す。ワイヤーを交差させるときは、隣り合ったワイヤーの上下を互い違いにするとより安定する。

最後の2本のワイヤーも残りの4つの穴に平行に通す。

8.厚紙をペットボトルの高さより2cmほど高く切り、上側を1cmほど折り、ペットボトルに巻きつけ、セロハンテープで固定する。黒い紙を巻くことで外から「落とし」が目立たなくなる。

9.ペットボトルに水を入れ、籠の中に入れる。水の量は背の高い枝物を入れる場合は、器を重くして安定感をもたせるためにも半量以上、草花の場合は水が多すぎると腐敗の原因にもなりやすいので半量以下にするとよい。

10.ワイヤーのちょうど中央の四角の場所にドウダンツヅジを活け、同じ場所に半夏生も活ける。

11. 同じ場所に半夏生も活ける。

12.  バランスを見ながら枝の向きなどを整えて、でき上がり。

 

「落とし」を使えば、アレンジの幅が広がる

水の注げない器でも落としがあれば、何にでも花は生けられます。

ペットボトルを隠す厚紙の色は、籠が濃いめの茶色だったため黒色にしましたが、薄い色の籐籠のようなものならベージュの厚紙でもOK。使いたいものによって厚紙の色を変えるとしっくりします。

今回は背の高いドウダンツヅジを真っ直ぐに立てるため、ワイヤーの真ん中の空間に2種類の植物を活けましたが、細かな山野草をたくさん入れたりする場合は、他の隙間を使って活けたり、ワイヤーを変形させて植物を固定させてもいいと思います。

また、一度活けてしまうと中の水をチェックするのを忘れがちなので、特に多くの種類を生けたときなどは水替えを忘れないようしましょう。

身近な籠や箱、または袋などに落としを入れて、新しい植物の楽しみ方をぜひ試してみてください。

 

つくりら編集部よりお知らせ

NEROLIDOLの猪飼牧子さんとフォトグラファーの清水美由紀さんの連載、「二十四節気 暦のレシピ」は、大幅な新規取材を加えて、書籍『二十四節気 暦のレシピ』としてみなさまにお届けします。

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