ソーイングアート(前編)|ミシンで縫い描くさまざまな植物。栗のイガで染めた因州和紙をキャンバスに。作品展:Nutel exhibition

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ソーイングアート(前編)|ミシンで縫い描くさまざまな植物。栗のイガで染めた因州和紙をキャンバスに。作品展:Nutel exhibition

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東京・西荻窪の栗農園で開催された「青空市」に合わせて、4日間だけオープンしたNutel(ヌウテル)さんの作品展。さわやかな秋の週末、カタカタと鳴り響くミシンの音に誘われて、小さなギャラリーにおじゃましました。前編、後編の2回に分けてお届けします。

撮影:田辺エリ  取材・文:つくりら編集部

東京にもこんなところがあったなんて! 西荻窪駅から歩くこと15分、静かな住宅街に、突然、栗園が現れました。色づいたイガがぱっくりと口をあけて、今にも栗がこぼれて落ちそうです。

 

気持ちのいい「青空市」の会場へ

栗の収穫の時期に企画された「青空市」。会場の入り口には、朝10時のオープンに先立ち、すでに行列ができています。みなさん、こちらで販売される栗がお目当てのよう。

会場に入ると、「栗、お売りしています」の看板を発見。その横の壁に飾ってあるのは、そう、Nutelさんの作品です。

まわりには、コーヒーを売る人、おやきを売る人、どの人も地元応援団といった雰囲気で和気あいあい。楽しそう。

食べ物のとなりには、栗イガ染めの布が。近江で織られた麻の生地、苧麻布とリネン。ストールや風呂敷、ハンカチなどもありました。

 

実寸で縫い描いた植物たち

青空市の会場からのんびりと歩くこと数分、ぽっかりと光のオアシスが出現。全面ガラス張りの開放的なギャラリーがNutel exhibition「秋の実りをつんで」の会場です。

天井からモビールのごとく吊るされているのが、Nutelさんの作品です。

今回のテーマ、「秋の実り」のヒントになったと見せてくれたのが、狩野重賢(かの・しげたか)の『草木写生』(そうもくしゃせい)、秋の巻です。

「近くの植物園で見つけたんです。この本からインスピレーションを受けました。たとえば、サギソウとかマツムシソウ、ノウゼンカズラなど」

狩野重賢が描いた江戸時代の植物スケッチ。Nutelさんは、着彩された植物よりも、ラフなタッチの線画の下絵に惹かれたと言います。

Nutelさんの作品、線画のように見えますが、実はすべて黒のミシン糸。丸みを帯びた花びら、ギザギザとした葉っぱの輪郭、放射状に走る葉脈・・・。ミシンドローイングならではのふぞろいな線が、生き生きと語りかけてくるよう。

土台は布ではなくて、紙。「栗園のイガで染めた因州和紙を使っています。破れるかなと思ったら、意外に丈夫で」とNutelさん。ミシンで縫い描いたら、絵の輪郭に沿ってはさみでカット。花びらを何枚か重ねることで、造形的な表情に。

「モビールのように天井から吊るしてもいいし、キャンバスにつけて壁掛けにしてもいいですね。花を買うようにみなさんに選んでもらって、持って帰っていただけたらと思います」

因州和紙のもつやわらかなコシとハリ。重ねたり、つなげたりすることで、それとなく空気をまとい、軽やかな立体のオブジェとなって空間にやさしく溶け込みます。

いっぽう、ガラスのフレームに封じ込めたキノコは凛とした表情。二次元のアートとして、しなやかにその姿を変えていく様に、和紙×ミシンドローイングの懐の深さを感じます。

 

まるで一点ものの刺繡布のように

栗の形をした巾着ポーチがサイズと色違いで並んでいました。

「実家は縫製工場を営んでいるのですが、ここで製品にしてもらい、後染めしました。草木染めで、グレイは鉄媒染、茶は銅媒染を使っています」

ミシンで描いた絵は、猫だったり、葉っぱだったり。葉っぱは栗の葉をイメージしています。

 

アクセサリーや雑貨も発見

インテリアとして愛でるだけでなく、Nutelさんの作品は、アクセサリーとしても人気です。こちらは紙ではなくて、布製。青のピアスは、藍染めの布、白のイヤリングは、コットンに耐水性の絵の具でペイントしたものだそう。

会場にはヘアゴムのような小さな雑貨も。英文字を綴ったものや、ウールの生地を土台にしたものなど、本当にさまざま。小さな絵画をながめるように、ひとつひとつ手にとって見入ってしまいました。

後編では、つくりら記者が参加したブローチづくりの様子をお伝えします。

 

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