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第12回 雑巾の話(前編)|雑巾は手になじむ手縫いがおすすめ。しぼりやすい輪っかタイプやカラフルな刺繍糸の布巾などは掃除も楽しくなります。

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もうすぐ4月。新しいことを始めたくなる季節です。お裁縫にまつわるあれこれを、針仕事研究家の安田由美子さんが深掘り解説する「大人の家庭科」。今回は、そんな新生活応援企画、雑巾のお話です。つくりおろした新しい雑巾で身のまわりを清めれば、心機一転、気持ちも引き締まりますよ。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)

雑巾の起源は浄巾(じょうきん)で、拭き清めるための布だったという話を聞きました。現代では、台の上を拭くには台布巾、床などを拭くのは雑巾でしょうか。台の上を拭くには新しい布で、雑巾は使い古した布でつくると分けていることもありますね。

いまや雑巾も買う時代になってきましたが、この場合は新しい布で雑巾がつくられます。まだ使える布を活かしてあげる意味でも、古いタオルなどで雑巾をつくるのがいいように思います。

 

雑巾を縫うなら、綿の手縫い糸がおすすめ

よく「ミシンの練習で雑巾を縫いましょう」と言うのを聞きますが、ミシンで縫った雑巾はちょっと硬い感じがします。手縫いの雑巾の方が柔らかく、手になじむように思います。あくまでも好みですが。

雑巾には綿の手縫い糸がよいように思います。20番や30番の糸だと2本どりにします。私は刺し子糸などを使うことも多いです。1本どりでも太いのでしっかり縫えますし、2本どりのようによじれてしまわなくて縫いやすいです。刺し子糸を通すのには普通の針だと穴が小さくてちょっと通りにくいときは刺し子針も使います。


▲左上から、手縫い木綿糸20番(カセ)、手縫い木綿糸30番、中段:刺し子糸、下段チューリップ刺し子針(太番手、細番手)、クロバー刺し子針、手縫い木綿糸20番(カード巻き)。

 

タオルの厚みや柄に合わせて折り方を変える

タオルは二つ折りでも三つ折りでも、あるいは四つ折りでも、好きな大きさに折ります。タオルが厚い場合は二つ折りがよかったりしますし、会社の名前などが入っているときは文字を隠すように三つ折りにしたりすることも。お子さんには薄手で小さめの方が絞りやすいですね。

薄手のタオルなどで小さめにつくりたい場合、両側を中心に折り込み、さらに半分に折ります。大きさがよくても厚みが気になる場合は、四分の一を切り取って、3枚重ねで縫ってもいいですね。


▲左から、フェイスタオルを4つに折って縫ったもの、3つに折って縫ったもの、2つに折って縫ったもの。

 

タオルの端は平らにしてから縫う

タオルの端はだいたい三つ折りになっています。このまま使うと、硬くて縫いにくく、乾きも遅いので、平らにしてから縫うとよいでしょう。使い古したタオルなら、糸も弱っていて、ミシン目は簡単にほどけます。ほどくのが苦手な方、タオルの端が擦り切れてしまっている場合などは切り落としてしまってもいいでしょう。


▲右上から、タオルの端を全部ほどいたもの、途中までほどいたもの、三つ折りのままの状態のもの。

 

雑巾は縦横のマス目に縫うと使いやすい

縫い方に決まりはありません。人生でいったいどのくらい縫ったかわからないほど雑巾を縫ってきた母に言わせると、基本的には縦横に縫い、斜めには縫わない方が絞りやすいのではないかとのことです。斜めに縫うとバイアスに動くはずの織り地に無理がかかってしまうということでしょう。そこで、私がおすすめするのは、縦横のマス目に縫う縫い進め方です。

 

三つ折り雑巾のつくり方

1 両端の三つ折りのミシン目をほどくか、切り落とします。
2  三つ折りの端の折り目だけは折ったまま、タオルを3枚重ねになるように折ります。
3  糸の端に玉結びをつくり、目立たない場所から針を入れ、端から並縫いします。

4  真ん中を縫います。

5 縦横にマス目になるように縫います。


▲マス目に縦横縫ったところ。

脇は並縫いで縫うか、厚かったりしてやりにくい場合はかがります。

6 玉どめをし、縫い目に針を入れ、玉どめの玉を布の中に引き込んで糸を切ります。

 

しっかり絞れる!雑巾のにぎり方

剣道で竹刀を握るような握り方で持ちます。この形で絞るとしっかり絞ることができます。

 

絞るのが苦手な人へのとっておき雑巾

雑巾を十分に絞れないこともあります。その場合には雑巾の形を工夫します。輪になるように縫うことで、比較的簡単に絞ることができます。


▲2枚重ねでわになるように縫った雑巾。

こうすると裏返して使うこともできますし、重なっているのは2枚なので乾くのも早いです。

 

刺繡糸で気分が上がる!カラフル布巾

綿の25番刺繍糸はつやが命。刺し間違えてほどいたりするとつやが無くなってしまうことがあります。新しい糸に取り替えると、そのたびにちょっとずつ残ってしまう刺繍糸。まだ色がきれいですし、もったいないですよね。試しにこの余った刺繡糸を使って布巾をつくってみたら、とてもきれいにでき上がりました。


▲余った刺繍糸を使って縫った布巾。

刺繍に使った針でそのまま布巾を縫う場合、フランス刺繍針を使っていたら、タオルや晒、リネンの生地などに刺します。先が丸いクロスステッチ針は普通の布には刺せないので、先丸の針でも刺せるドビー織りの生地などに粗く並縫いしていきます。余った糸を、ただ、縫いつけていくだけで、雑巾や布巾になります。糸の最初と最後は重ねて縫い、一針返し縫いをしておけば糸は抜けません。


▲水で消えるペンで先にマス目を書いておき、余った糸を縫いつけていくだけ。

雑巾のお話、いかがだったでしょうか? 後編では、お裁縫がいっそう楽しくなる、知っておくと便利なあれこれをご紹介します。

 

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