, , ,

第8回 ほどくということ(前編)|目打ち、小ばさみ、リッパー。この3つの道具を使いこなせると、ほつれたときも、リメイクしたいときも、縫い目をほどくのが苦にならなくなります。

, , ,

縫い方同様、ほどき方についても知っておくと、お裁縫がもっと楽しくなります。針仕事研究家の安田由美子さんの「大人の家庭科」、今回は、ほどくということについてのお話です。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)

ほどくために使う道具

目打ち、小ばさみ、リッパーなど、ほどくための道具はいろいろあります。眉用カミソリなども使えます。

道具というのはそれぞれよい点、悪い点があり、人によって使い勝手も違います。ある人にとってはこの上なく使いやすい道具でも、別の人にとっては使いにくい、ということもあります。試してみて、また、練習して上手に使える道具を使ってください。


▲左から、先の尖った目打(クロバー)、目打ち(BUNKA)、先丸の目打(クロバー Nなめらか目打)、先丸目打ち(チューリップ クッショングリップ付き先丸目打ちM)、ボールポイント目打(クロバー)、カーブ目打(クロバー)


▲目打ちの先端。左から、先の尖った目打(クロバー)、目打ち(BUNKA)、先丸の目打(クロバー Nなめらか目打)、先丸目打ち(チューリップ クッショングリップ付き先丸目打ちM)、ボールポイント目打(クロバー)、カーブ目打(クロバー)

目打ち
先の尖った目打ちはミシンの針目に簡単に入り、奥まで押し込んで糸を切ることもできますし、引き抜くこともできます。でも、刃がなく、側面は丸いので、布を切ってしまったり、傷つけたりすることがありません。うまく一気に引き抜けば、早くほどくこともできます。初めて使う方でも扱いやすい道具だと思います。ミシンをかけるときなどほかの作業でも使う場面がたくさんあるので、品質の良いものを1本持つとよいですね。品質が良くないと生地を傷めたり、先が曲がってしまうこともあります。

カーブ目打ち
メーカーでは洋裁用具の部類に入っているようなのですが、私は刺繍でほどくときに活用しています。先端のカーブに糸がうまく引っかかってほどけるのです。先が丸いため、生地を傷めません。

小ばさみや刺繍ばさみ
小ばさみは、にぎりばさみ、糸切りばさみともいうように、糸を切るのに都合がよく、先が尖っています。これが尖っていない、あるいは先がうまく重ならない場合は上手にほどけませんので、尖っていて、先の切れ味がよいことが大事です。


▲左から、小ばさみ(BUNKAすみれ【イブシ】)、スプリングバネ化粧はさみ【反り刃】、キューティクルシザー【反り刃】、刺繍ばさみ【コウノトリ】、刺繍ばさみ【クジャク】

小ばさみは、先が尖っているので、針目に刃を差し込んで切ることができます。また、刃と刃を合わせて「はさみ」として切ることもできますし、刃が鋭いので、ナイフのように刃を押し当てて切ることもできます。また、縫い合わされた布を開いてその間のゆるんだ糸を切っていくこともできます。本来の用途ではありませんが、甘皮などを切るはさみも、刃が薄く尖っていて切れ味がいいので、同じように使えます。

リッパー
別の用途としてボタンホールを開けることもできるリッパーですが、本来の仕事はほどくこと。先端は目打ちのように尖っていて、奥には糸が切れる刃がついています。

学校で洋裁を教えていたとき、リッパーで失敗して布を切ってしまう学生を少なからず見てきました。楽にほどけるとても良い道具なのですが、うっかり布まで切ってしまうことも多いのも事実。確実に糸だけ切れるような使い方をマスターしてから使うのがおすすめです。


▲左から、リッパー(クロバー)、黒羽志寿子オリジナルリッパー(左はそのまま、右は革を貼って持ちやすくしたもの)、眉そり用カミソリ

眉用カミソリやカーブした刃の道具
布と布の間を広げて、間に渡っている縫い糸を切るのに使います。布を切ることはないとは言い切れませんが、リッパーの逆で、もしかしたら切れちゃうかも、と気をつけて使うせいか、意外と布を切ってしまうことは少ないです。手早くほどくことができるので、古着のリメイクなどでバンバンほどいていきたい!というようなときに使うと便利です。カーブした刃のナイフは革で持ち手部分を持ちやすくしてから使っています。

 

あると便利な道具

ほどくときは糸くずがたくさん出ます。ポリエステルの糸などは静電気で指にくっついてしまうこともあります。そんなときは、ガムテープやコロコロする粘着テープで取ると楽に取れます。もちろん、粘着テープを使うと毛羽立ってしまうデリケートな生地には向きません。取っ手つきのクリーナーは個人的には縦型のものが使いやすいと思っています。くい込んでしまって取れないようなときは、毛抜きを使うと取りやすいです。


▲上段は衣類用クリーナー(無印良品)、下段・左よりガムテープ、毛抜き


▲布にくい込んでしまった糸は毛抜きを使うと取りやすい。

後編では、手縫い、ミシン縫い、刺繍のほどき方についてお話します。

関連記事

おすすめコラム