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第6回 しつけ糸としつけの方法(後編)|布がずれにくい「置きじつけ」、印つけ用の「切りじつけ」など、覚えておくと制作スピードと仕上がりに差が出ます。

前編では、しつけ糸の種類をご紹介しました。後編では、しつけの方法についてお話しします。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB)  撮影:天野憲仁(日本文芸社)

仮縫いのしつけは粗い並縫いなどでします。厚手のものは一度にすくえないので、一針ごとに突き抜けるように縫います。刺し縫いと呼ぶこともあります。このとき、粗いとずれやすいので、ずれやすい布の場合は、「小さくすくってから針足を長く」を繰り返す縫い方にするとずれにくくなります。

 

置きじつけ

台の上に布を置いて、左手で押さえながら、短くすくう縫い方です。布を持ち上げないのでずれにくい方法です。

置きじつけの方法

 

針目の種類

針目は一目落としと二目落としなどがあります。切りじつけなどもこのやり方で行います。


▲上から粗い並縫いのしつけ、一目落とし、二目落とし、三目落とし、斜めじつけ(幅を広くしたもの)、斜めじつけ(狭い幅でしっかりとめたもの)

一目落とし 

表に見える方を長く、裏に出る方は短くすることで、ずれにくい縫い目になります。

二目落とし

一針目を長く、次に短く二つ縫うと、表には長い針目と一つの短い針目の繰り返しになります。一目落としより、しっかり押さえられます。和裁では大小しつけとも呼ばれますが、わかりやすい呼び方ですね。絹物などにはもっとしっかり止められる三目落としにします。

 

斜めじつけ

糸が斜めに渡るしつけ。布がずれたり動いたりしないように押さえることができます。裏付きの仕立ての際に使われることがあります。手前からすくいながら向こうに進むようにすると縫いやすいです。ファスナー付けの際、しつけでとめるような場合は、刺繍のアウトラインステッチのような針目にすると、なおしっかりとめることができます。


▲ファスナーへのしつけ。上の写真の一番下と同じように小さな点ですくいながらしつけするとしっかり止まる。

 

押えじつけ

洋裁においてウールなどで仮縫いするときなど、アイロンはかけられませんから、縫い代を倒して表から一目落としで押えておくと縫い代が起き上がりません。


▲グレーのフラノにしろもで押さえじつけをしたもの。仮縫いの際には縫い代が片側に倒れるように必ず「押さえるしつけ」をする。

 

印つけが目的の「切りじつけ」

印つけとして、ウールなどによく使う印つけです。「切りびつけ」や「切りび」とも呼ばれます。2枚の布を中表に合わせてしろも2本どりで一目落としで置きじつけをします。点や角を表すところは十文字に縫います。長く渡っている糸を切ったあと2枚の間をそっとめくって、裁ちばさみでしつけ糸を切っていきます。上に浮いた糸の余分も裁ちばさみで切り、糸が抜けないように押さえます。あとで、毛抜きで糸を抜き取ります。

 

(動画3)切りじつけ

ほかに高級素材などにしつけ糸の縫い目で印を付けるのには「縫いじつけ」もあります。

 

はずさないしつけ

しつけ糸で縫っているのにはずさないのもあります。きものに「ぐしじつけ」、「縫いじつけ」または「ぐし」「ぞべ」と呼ばれる、「きせ」を押さえるためのしつけです。「きせ」というのは、できあがり線より少し縫い代側を縫ってからできあがり線で片側に折ることでできるゆとりの部分のことです。

縮緬などの素材で、きせがはずれないよう、折り目もしっかりつくように施される、点のように小さな針目が並んだしつけです。喪服でも黒留め袖でも、白のぞべ糸を使ってします。「ぞべ糸」を使うから「ぞべ」、「ぐし縫いのしつけ」をするから「ぐし」と呼ばれるようです。

白く目立って取らないしつけだから、腕のいい和裁職人の方にしか任せられないものと聞きますね。


▲留め袖や喪服の取らないしつけ。写真は留め袖の衿下から裾にかけての取らないしつけ「ぞべ」「ぐし」

 

もっと簡単にしつけをする方法

あとでしつけを取らないという意味で考えると、デンプン糊や、水に溶けるテープや水に溶ける糸なども取らないしつけの仲間です。素材を選びますが、これらは仮止めの役割を果たし、楽で早いです。

裏付きでウールを縫うときに、スレキ(綿の綾織りの布)をポケットの袋布に使うときなどは、糊で、ということもあります。いまは布用のスティック糊も売ってますね。昔からあるデンプン糊も便利ですよ。ほんの少し付けてアイロンで押さえるとすぐに乾いてくっつきます。


▲上:ヤマト糊(ヤマト株式会社)、左:布用スティックのり(KAWAGUCHI)、右:水溶性両面接着テープ(クロバー)

しつけの方法のお話、いかがでしたか? 前編ではしつけ糸のご紹介もしていますので、合わせてご覧ください。

 

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