更新日: 2018/06/01
「大人の家庭科」お裁縫編、第2回の(前編)では「運針(うんしん)」をする場合の、針の選び方や持ち方についてお話しました。後編では、運針のしかたを説明しましょう。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
糸の長さは長すぎると腕を振り回すような動作になって疲れますし、糸もからまりやすくなったり、糸が擦れたり毛羽だったりもします。腕の長さにもよりますが、50~60㎝くらいに切ってから始めるとよいでしょう。絹糸は滑りがよいので、少し長くしても大丈夫です。慣れてきたら糸が傷まない程度で、中途半端に糸を継がなくて済むような長さをとります。
▲糸の長さは、針に糸を通して右手でつまんだ状態で、肘から15㎝くらい垂れてるくらいを目安に。
針穴に糸を通したら、糸を両手でしっかり引っぱった状態で、ギターの弦を弾くように糸をはじきます。うねっていた糸もまっすぐになってからまらないで縫い進めることができるようになります。この一手間でぐっと縫いやすくなります。
糸をまっすぐにする方法
2枚の布を重ねて直線を縫ってみましょう。縫い方としては姿勢をよくするのがまず大事ですね。
縫い始める前に端に玉結びをしておきます。
縫いたい線の最初に、針を出します。
同じところを小さくすくって最初した位置に針を出します。
▲縫いたい線の最初に針を出す。
▲同じところを小さくすくって最初した位置に針を出す。
針を持つ手で、縫いたい線の端を持ち、そこから15~20㎝くらい縫い進む先を反対の手でしっかり持ちます。顔からは30㎝くらい離します。
針を刺して縫い始めます。針は動かさずに進めるだけ、針を持っていない方の手で布を上下に動かして、針が布に対して直角に入るようにしながら、縫い進みます。針を持たない方の手は針の先を中心として弧を描くような動きになります。ですから、写真はテーブルの上で見せていますが、針を持つ手首は動かさないようにし、針を持たない方の手がテーブルに当たらないようにテーブルから離れて縫うとさらに効率よく縫えます。
進んだ分だけ、針を持つ手の中に布がたまっていきます。間隔が狭くなっても布をつかんだ位置は変えません。上下に動かす手が針の近くまで来たら、縫い始めた最初のところから、布を指の腹で挟んだまま縫い進む方向にしごいて、布を平らにします。爪を立てると布や糸が傷むので、指の腹でしごきます。
ある程度縫えたところでいったん針を引きだし、縫ったところを指でしごきます。これを糸こき(糸扱き)といいます。
▲ある程度の長さ縫い進んだら糸こきをする。
縫うときに必要以上にしごかなくてはいけないほど縫い縮めてしまったり、また、しごきすぎて縫い目を伸ばさないように注意します。運針が上手になってくると、手の加減が上手になってきて、それほど一生懸命糸こきをしなくてもすぐに平らになります。
縫い終わりまで縫っていったら一針戻ったところをすくって玉どめをし、糸を切ります。
「運針」のお話、いかがでしたか? 次回は「運針」と並ぶ、基本の縫い方、「まつり縫い」についてお話します。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/