第10回 作品の仕上げ方(前編)|刺繍やレース編みの作品を洗うときは振り洗いか押し洗いで。色落ちが心配なときはお湯ではなく水で洗います。

お裁縫にまつわるあれこれを、針仕事研究家の安田由美子さんが深掘り解説する「大人の家庭科」。今回は手芸作品などの仕上げや保管の方法についてお話しします。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)

お菓子を食べながらお茶を飲みながら楽しく刺繍をするのもいいですね。でも、その手、毎回洗ってから布をさわっていますか? 

 

手を洗ってから刺繍をする習慣を

刺繍をする際に最初にしていただきたいのは手を洗うことです。手洗いができないときはウェットティッシュなどで拭くなどして、必ず手をきれいにしてから始めます。

でき上がったときはきれいに見えても、1年、2年すると時間の経過とともにシミのようなものが出てくるときがあります。絹糸の刺繍、リボン刺繍、洋服などに仕立てる刺繍など、でき上がってからでは洗えないものは、手で触る刺繍枠は当て布をして使う、台付きの大きな枠に張るなどして、できるだけ刺繍布に触らないで刺繍しましょう。そうすると後で洗わずに済みます。


▲テーブルの上に置くタイプの脚付きスクロールフレーム。2本の棒に布の端を留め、刺し場所を移動するときにスクロールさせると縦に長い布でも刺せる。


▲丸く穴を開けた当て布を刺繍布の上にのせて丸枠にはめた状態。当て布をつかむことで刺繍布が手の汗などで汚れるのを防ぐ。


▲左の脚つきの枠は、Apollonの刺繍台Delphes(デルフ)。右側は画材のキャンバスを張っていない木枠。刺繍布を画鋲などでとめても使える。

 

レースを編むときは糸が汚れないように注意

「手をきれいに」が大事なのは、レース編みも同じです。また、レース糸をそのまま転がしておいて編むのではなく、箱や器に入れて汚れないようにしながら編むようにしましょう。ケースに入って売られているレース糸もあります。


▲左のレース糸立てはDIYショップで見つけた丸い板と円柱の木材で手づくりしたもの。中央と右はプラスチックケース入りで売られているレース糸で、ふたにあいている穴からレース糸を引き出して使う。

 

作品を洗うときは振り洗いか押し洗いが基本

刺繍枠を使わなかったり、手で布をつかんで刺繍したりすると、仕上がるまでになんとなく薄汚れてしまいます。その場合は、洗える生地、糸、技法であれば、洗ってから仕上げます。

まず、布がゆったり入る大きさのたらいなどを準備し、できるだけしわにならないように水に浸します。色落ちの心配のないものはぬるま湯で、色のあるものはお湯ではなく、水を使った方が色落ち、色あせを防げます。洗い方はもんだりこすったりしないで、優しく振って洗うか、押して洗うくらいにします。長時間浸けると色落ちの可能性が出てきます。

洗剤は蛍光増白剤などの入っていないおしゃれ着を洗う洗剤を使いましょう。


▲左から、「海へ」、「プロウォッシュ」、糊付け用の粉末ふのり、洗濯糊「キーピング」(酢酸ビニル系ポリマー)。「海へ」は、水でも汚れがよく落ち、絹やウールにも使えてすすぎは1回でよい洗剤。粉末ふのりは工業用で、ふのりから成分を取りだして使いやすいよう粉末にしたもの。

洗いは手早く終わらせて洗剤が残らないようによくすすぎます。必要な場合は薄く洗濯糊に浸してから、少し水気を切り、白いバスタオルなどに挟んで水分を取ります。できるだけ平らな状態になるようにして乾かします。


▲新しいバスタオルだと水分を吸わなかったり、作品にタオルの繊維がくっついたりすることがあるので、洗って糊を抜いた白いバスタオルを用意する。

 

色落ちが心配な糸はいったんお湯につける

なかには色落ちが心配な刺繍糸もあります。少し古い時代の糸や花糸、赤系の糸などです。そんなときはいったんお湯に浸けて、色を出してしまい、乾かしてから使うこともあります。染料も日々改良されているので、最近ではそんなに色落ちする糸には出会わなくはなってきましたが。

事前に色落ちを見抜けず、刺し上がって洗ったら色落ちしてしまったこともあります。このときは、濡れている状態で色落ちを確認したので、濃い洗剤液に浸け、赤がにじまなくなくなるまで押し洗いをしたら生地は赤く染まりませんでした。乾いてしまうと染まった状態になって落ちにくくなる気がします。

 

しわを防ぐには生乾きでアイロンがけする

水洗いして汚れをとった後、完全に乾いてしまうとしわがとれにくくなります。バスタオルなどで水分を取ったら生乾きの状態でアイロンをかけ始めるといいでしょう。

刺繍作品の場合、表の刺繍をふっくら仕上げたいので、アイロンマットの上に白いバスタオルを敷き、その上に作品を裏にして載せます。生地は横に伸びるので縦方向にアイロンを動かすようにします。必要に応じて当て布をして、アイロンをかけます。接着芯を張ってから刺繍した場合は、芯を張ったときと同じようにクッキングペーパーなどを当てるとよいです。


▲接着芯を張って刺繍した作品は、クッキングペーパーを当ててアイロンがけする。

 

レースのドイリーを美しい形に仕上げる方法

綿のレース糸のレース編みでドイリーなどを編み上げると、少しよれっとしていますが、きれいに伸ばすと見た目がとてもよくなります。刺繍と一緒で、編む際にはよく手を洗ってから編みます。見えない汗などもついているので、特に白い糸などは刺繍と同じように少し洗ってもいいですね。仕上げに薄い洗濯糊に浸してから、タオルなどで水気を取り、手でのばして平らな状態で乾燥させるだけでもきれいになるときもあります。

編み目の種類や大きさによっては手で伸ばすだけではうまくいかないときもあります。その場合は、作品の下に型紙を置いたり、目安になるものを敷いてピンで押さえてアイロンでつぶさないように押さえて仕上げます。

レース編みドイリーのアイロン仕上げ

待ち針は、アイロンで溶けてしまうプラスチックのものは避け、シルクピンやガラスの頭のシルクピンを使いましょう。太い待ち針では刺した穴が残ってしまうことがあるので細い針に。

針の刺せるアイロンマットの上に置いて、あれば、型紙に合わせてピンを打ちます。私はスチーム用の当て布や不織布(接着芯のような樹脂のついてないもの)に印をつけてだいたいの目安にして、ピンを打っています。ピンはアイロンがけのじゃまにならないように打ちます。レース糸にピンのあとが残ってしまう場合は、ピンをはずしたあと少しスチームを当てて手で整えます。

 

ウールの手編み作品を美しく仕上げる方法

ウールの毛糸で編んだものも、レースのドイリーと同じように仕上げます。型紙があれば、型紙をアイロンマットに置き、その上に作品を載せてピンを打ちます。つぶさないように気をつけながらスチームアイロンをかけて、冷めてからピンをはずします。

手編みニットのアイロン仕上げ

後編では、作品の保管方法についてお話します。

 

 

 

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