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第4回 布を切る道具(前編)|糸は糸、布は布。それぞれに使い勝手のいいはさみを揃えるのが、お裁縫が好きになるひとつの方法です。

「大人の家庭科」お裁縫編、第4回は、布を切る道具についてです。前編では、裁ちばさみについてお話します。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB)  撮影:天野憲仁(日本文芸社)

素材と道具の話では刺繍ばさみについては書きました。

糸を切るはさみでは、日本では一般的な小ばさみと呼ばれる握りばさみや、刺繍用のはさみなどがあります。握りばさみは、糸を切るのに具合よくつくられていますので、薄い布であれば細い糸の集まりとして少しなら切れるものの、厚手などになってきますと、はさみにも手にも負担になります。

布用のはさみは小さすぎるとやはり効率も悪く、ある程度大きい方が使いやすいです。そうなると、作業中など頻繁に糸を切るのには向きません。

どちらにも使えそうな1本で何とかするのではなく、糸は糸、布は布、それぞれに使い勝手のいいものを揃えるのが、お裁縫が好きになるひとつの方法でしょう。

 

良い裁ちはさみは研ぎ直しして、一生で一本

裁ちばさみは、裁断ばさみ、裁ちばさみ、布切りばさみ、ラシャばさみ、ラシャ切りばさみともいいます。

ラシャ切りばさみというと、何?と思う方も多いでしょうか。検索するとビリヤードの台に貼ってある厚いフェルトのようなものもラシャと呼ばれているようですね。ラシャというのは、厚手の密に織って起毛させたウール生地のことです。フラノやメルトンなどこのような厚手の毛織物さえもよく切れる刃の長い洋裁ばさみのことをラシャ切りばさみと呼びます。


▲左から、紙用はさみ、接着芯を切るために使っているはさみ、裁断鋏・裁ち鋏( 団十郎 文化特選26㎝・学校法人文化学園購買部)

この厚手の毛織物でも切れるよい鋏を1本持っていると作業がはかどるのでおすすめです。

良いはさみは研ぎ直しができること。もちろん、これは刃物の専門家に任せなくてはいけませんね。素人やあまり扱ったことのない人に任せられるものではありません。そうして、専門家に研いでもらいながら使うことで、一生で1本あれば、十分の働きをしてくれるのが良い裁ちばさみです。

切れ味はおおむね値段に比例すると考えていいと思います。お店で研いでもらえるものという基準で選んでもよいと思います。高いものでも使いにくいと思うのもありますし、刃に使われている鋼の質などによっても違ってきますから、お店で相談するのが良いですね。

私が使っているのは文化服装学院に入学したときの教材セットに入っていた裁ち鋏です。仕事柄、これを研ぎに出している間は使えなくて困ってしまうので、2本持っていて交互に研ぎに出すようにしています。洋裁を職業としてない場合なら、これを1本持っていれば十分だと思います。

 

接着芯を切るために1本、紙用に1本

そこまでいいはさみでないものも別に用意しましょう。
なぜかというと、いいはさみは、表になる布を切るときの話。接着芯を切るとどうしても樹脂がくっついて切れなくなってきてしまいますから、ここまでよくなくてもいい裁ちばさみも別に持っていると良いです。接着芯も布ですからある程度よく切れないと織り糸がつれてしまったりすることもあります。

そして、型紙を切る、紙用のも別にあるといいですね。型紙は定規とカッターで切ることもありますが、やはりはさみを使うときもあります。紙を切るのには布用のはさみは使わないでください。

 

はさみの使い方

裁ちばさみの正しい使い方について少しご説明しましょう。

大事なことなのに何となくやってしまう失敗があります。まず、型紙を待ち針で止める場合は、はさみが通るところに針をはみ出して打ってはいけません。裁ちばさみで針を挟んでしまうとたった1回でも刃が傷んで切れなくなります。注意しましょう。

できるだけ、切っていく線が自分からまっすぐ見えるような位置に体を移動して、立って切ると正確に切ることができます。刃がテーブルに対して垂直になるように、左右どちらにも寝かさないようにします。

人指し指は輪に入れないでその前の溝に添えるように持ちます。鋏の刃をテーブルに付けた状態で切ると安定して切ることができます。刃を大きく動かし、刃の長さの全体を使って切るようなつもり、長い距離を一息で切る感じです。一息で切ったら次にはさみを大きく開きながら前に進め、同じように繰り返して切っていきます。刃先だけでちょこちょこ切り進めたりはしません。

 

はさみの扱いと手入れのしかた

裁ちばさみでやってはいけないことがいろいろあります。
落としたり、強い衝撃を与えること。微妙な刃のかみ合わせがくるってしまいます。そして、刃の部分など金属の部分を握ること、あるいは手で直接さわること。錆びてしまいます。塗装してある部分を持ってください。

学校で洋裁の勉強を始めたとき、最初に教わったのは、裁ちばさみは人に貸さないこと、でした。これはよく考えると、上の二つの要素が入っていると思います。そして、すごく大事なものなのだから大切にしなさいという教えだと思います。

はさみの手入れのしかたとしては油をしみこませた布で、金属の部分を拭いてほこりなどを取ります。この油ははさみ用として売っているものですが、ミシン油でもよいです。


▲はさみ用ミニ油(学校法人文化学園購買部)

 

裁ちばさみの手入れ方法

 

裁ちばさみの保管方法

はさみは、刃先が錆び防止の袋に入るようにしてケースに入れて保管します。錆び防止袋は防錆紙でできていて、錆を防いでくれます。刃の部分はこれに入れてから、クッション性のある丈夫な素材のはさみケースに入れると安心です。


▲裁断ばさみ・裁ちばさみ用 さび止め袋。黒いケースは、「BUNKA・裁断鋏用」はさみケース(学校法人文化学園購買部)

後編では、はさみ以外の布を切る道具についてお話しします。

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