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第5回 製図の道具(前編)|型紙をつくるときは、細くて濃い線が描ける筆記具を選びます。鉛筆なら「HB」よりは硬いものがおすすめです。

手芸や洋裁の基礎本にはあまり詳しく載っていない・・・お裁縫にまつわるそんなあれこれを、針仕事研究家の安田由美子さんが深掘り解説する「大人の家庭科」。今回のお話は、型紙をつくったり、写したりするときに必要な製図の道具についてです。前編では、書くための道具を紹介します。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB)  撮影:天野憲仁(日本文芸社)

服をつくるうえで、裁断はとても重要です。その裁断に使う正確な型紙(パターン)を準備することもまた大事です。きちんとした型紙をつくれると洋裁の腕前はぐっとアップします。何となく引いている線を見直してみませんか?

まずは型紙をつくるときに線を引くための道具についてお話ししましょう。小学生が使う書き方の鉛筆や、絵を描くための鉛筆、普段使っているシャーペンでもなんでもいい、というわけではありません。正確で、細く、濃い線が必要です。

 

「H」と「HB」の中間、「F」の鉛筆が使いやすい

 洋裁の製図で鉛筆を使う場合は、よく削って細い線を描くようにします。自分の筆圧と相談して、折れにくく、なめらかな書き味で、よく見える細く濃い線が描けるものを選びます。


▲上から トンボ MONO(H)、ステッドラー マルス ルモグラフ(F、HB)、三菱 色鉛筆(赤色、朱藍 5:5)、ステッドラー ペンシルホルダー、クツワHiLiNE鉛筆ホルダー
ルモグラフは製図用高級鉛筆で折れにくい、摩耗が少ない、なめらかな書き心地で定着がいい。赤鉛筆は仮縫いなどをして補正したら、古い線を消さずに直した線を赤で書き込むために使用。鉛筆ホルダーは手に合ったものを選ぶ。

製図用は「H」のつくもの、文字や絵は「B」のつくものを基本に選びます。芯が硬いものだと実物大のパターンでは薄すぎて見にくいという場合もあります。筆圧を考慮して自分に合ったものを選びましょう。「HB」よりは硬い程度のものをおすすめします。

アルファベットの「H」は硬さを表すHARD=硬い、「B」は芯の濃さを表すBLACK=黒い、です。「F」はその中間のFIRM=しっかりした、と言う意味です。「F」は「H」と「HB」の間の硬さです。シャープペンシルの芯では「HHB」や「HBB」という表記もあります。硬い方からH,HHB,HB,HBB,Bの順ですね。私は洋裁のパターンを描くのには『硬度は「H」で濃さは「HB」』な書き心地に感じる「F」を使ってきました。

短くなったら鉛筆ホルダー(補助軸)を使うと、すべり止めにもなって重心のバランスもよくなり、つけたほうが使いやすいなと思うときもあります。

 

製図用芯ホルダーと替芯

洋裁を勉強し始めたとき、教材にセットされていたのが2mmの芯を入れて使う製図用芯ホルダーでした。製図用芯ホルダーに芯を入れ、芯研器(しんけんき)で削ります。手軽に削れることで常に尖った先が保たれますし、持ったときバランスのよいホルダーを使うことで、長時間使っても線を描いても疲れません。また、丈夫にできていて、何十年使ってもまず壊れることがないというのもいいですね。私の使っているものは30年物です。このような使いやすい筆記具も昔からあります。


▲上から、GAKKEN PENCIL SAM KNOCK、SAM LONG、SAM LONG替芯、三菱 ユニホルダー(茶、赤のもの)、ステッドラー マルス テクニコ2㎜芯ホルダー、uniホルダー替芯、ステッドラー マルス カーボン
上の2本は昭和レトロなノック式の芯ホルダーで軽い。下の3本の製図向きの芯ホルダーは重心のバランスも良く持ちやすい。下の2つはケースに入った替芯。上から、uniホルダー替芯、ステッドラー マルス カーボン(2mmシャープペンシル、2mm製図用ホルダー用替芯)、マルス カーボンはステッドラーの鉛筆ルモグラフと同じ高品質の芯。回転や滑りを防止するために縦溝が彫られている。ユニホルダー替芯も書きやすい。

 

芯先の形を整えるための道具、芯研器 

芯を削るには芯研器を使います。ステッドラーの芯ホルダーのノック部分には簡易削り器もついていますが、効率のためにも芯研器を使うことをおすすめします。


▲左:ステッドラー マルス ミニテクニコ(2㎜ 芯ホルダー専用芯研器)、ミニテクニコ用 芯クリーナー 右:ドイツ製の芯削り器

いまではステッドラーをはじめ、手で持って使う小さな製品が主流。右のUCHIDA-dahleと書かれた芯研器は裏にMade in W.Germanyと刻まれた古いもの。クランプで台に取り付けて使う。ホルダーの軸の太さに合わせてキャップを取り替える。

ホルダーの先から芯を出し、細い尖ったマークの方に入れて芯の長さを調節します。削る方の穴に入れ、回転させて削ります。先を尖らせたくない場合は、もうひとつの方で芯を短めに調節してから削ります。単純な動作で効率よく芯を尖らせることができます。削ったあとの粉がついた芯の先を白い芯クリーナーにくっつけてきれいにします。必要に応じて出ている芯を好みの長さに調整してから書きはじめます。

 

芯研器の使い方

 

ステッドラーの芯削りは小さいので持ち運びが楽です。使い終わったら、かならず、回す部分をはずして削れた芯の粉を捨てます。私はワインのコルク栓をカッターで切って、ホルダーを入れる穴にはめて、粉の漏れを防いでいました。

芯ホルダーはメーカーごとに形状が違うため、うまく削れないこともあります。父が使っていた古いドイツ製のものはいろんなメーカーのホルダーに対応できるのが便利で、本体の色が変わってしまったけれどまだ大事に使っています。

 

薄くて、長くて、丈夫。製図用シャープペンシル

製図用のシャープペンシルというと、普通に売っているシャーペンとどこが違うの?と思われるでしょう。

製図用は先の細い筒の部分(スリーブ)がおもに金属でできていて、薄く、長く、丈夫にできています。ちょっと重いのは重心のバランスが良いためで、快適に描き続けることができます。傷みやすい先端のパーツは壊れたら取り寄せられるものもあります。もちろん文字を書くのにもよいです。製図用シャープペンシルには太さもいろいろあります。


▲上から、シャープペンシル替え芯 ステッドラー 0.7㎜H、0.5㎜F、0.3㎜HB、ぺんてる製図用シャープペンシルグラフレット(0.7㎜、0.5㎜、0.3㎜)、ステッドラー製図用シャープペンシル(ともに0.3㎜)


▲左から2本は製図用シャープペンシル、右の3本は一般的なシャープペンシル。一般的なシャープペンシルは、先端が太かったり短かったりで、思ったより定規から離れた部分に線が描けてしまうことや、定規の厚みが邪魔になることもある。

 

消しゴムは用途に合わせていくつかあると便利

製図をしていて意外と大事だと思うのが消しゴムです。「まとまるくんロング」を長年愛用しています。ほかにもペン型のものは本当に細かいところまで消せるのでいいですね。字消し板は消したくない部分をおおって消したいところだけ消せるので、あるととても便利ですよ。


▲左側:上から、ステッドラー メッシュ字消し板、ステッドラー フリーホルダー字消し、MONO one(ブルー、スタンダード)、ヒノデワシ まとまるくん紙巻き消しゴム 右側:上から、ステッドラー ホルダー型字消し、ぺんてる クリックイレーザー(ケセケセ)、トンボ鉛筆 ホルダー消しゴム モノゼロ (替え消しゴム、ホルダー消しゴム)、ヒノデワシ のっぽまとまるくん(旧タイプ、新タイプ)

細かい場所が消せるもの、広い面積が消しやすいもの、消しくずがまとまるもの、よく消えるものなど自分に使いやすい基準で選びましょう。

 

あるとないでは大違い!製図用ブラシ

私にとって製図用のブラシはあると便利というより、ないと困る存在です。手でかき集めると描いた線が擦れてしまうこともあります。馬の毛のものは毛も長くていいですね。ちりとりもあるといいです。私は場所をとらない業務用のダストパンなどを使ったりもしています。


▲上から、白毛の製図用ブラシ、ドラパス製図用ブラシ(大、小)、ノーブランドのブラシとパンくず用のダストパン。大きめのものが便利。使いやすいものがひとつあればよい。

ほかに、白く、丈夫な紙質で、少し透けて、下の線を写し取ることができる製図用紙、型紙を写すときにずれないように文鎮も用意しましょう。文鎮は第4回(後編)「布を切る道具」でご紹介しています。

後編では、定規についてお話します。

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