更新日: 2018/12/03
前編では、ほどくための道具についてご紹介しました。後編では、手縫い、ミシン縫い、そして刺繍のほどき方についてお話します。
文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)
並縫いは糸を引くだけで糸が抜けます。目打ちで引っ張って抜いてもいいですし、小ばさみなどで糸を切りながらほどいてもいいです。一目ずつ縫っている返し縫いは、糸を引くだけでは抜けないので、リッパーなどを使うとよいでしょう。また、並縫いでも、たくさん洗った木綿などは、糸と布が一体になっていたり、縫い目にほこりがたまっていたりで、糸はスッと抜けません。その場合も同様にリッパーなどを使いましょう。
▲並縫いは糸を引っ張るだけでスッと抜ける。
▲半返し縫いは一度に抜けない縫い方なので、糸が長く裏を渡っているところを一目ずつ切る。
布を傷つけないように注意します。デリケートな布などでは、念のため裏側で作業するなど気をつけましょう。
1 上糸、下糸のどちらかを抜く方法
目が粗いときにはこのやり方が便利です。目打ちを使います。
▲布を裏側にして、下糸(青い糸)に目打ちを差し込んで引き抜く。
2 何目かごとにミシン目を切る方法
表に見えているミシン目をところどころ切り、反対側の切っていないミシン糸を引っぱったり、縫い合わせた布を広げると、切った方の糸がぽろぽろと取れていきます。ミシン目にはさみやリッパーが入る場合はこのやり方ができます。
リッパーを使ったミシン目のほどき方
3 布を開いて糸を切る方法
縫い合わせた布の間を広げて、小ばさみやカミソリで切ります。ミシン目が細かすぎてほどきにくい場合などにはこのやり方が適しています。布の片側をくけ台と引っぱり器を使って引っぱると楽です。ミシンの前で作業する場合は、ミシンの押さえ金で押さえてしまうと楽ですよ。
▲布を開いて間に渡っている糸をはさみで切る。
▲布を開いて間に渡っている糸をカミソリで切る。
4 布を開き、間の糸を抜きながらほどく方法
縫い合わせた布を開きながら、目打ちで糸をほどいていきます。目打ちなので、布を切ってしまう心配もなく、ミシン目が細かくても確実にほどいていけます。糸の端を残しておき結ぶなどして始末したい場合は目打ちを使うと糸を傷つけずにほどくことができます。
ほどいた糸の始末
直線縫いのミシンの目をほどいたあと、そのまま切ってしまうと、さらにそこからほどけていってしまいます。ミシン目の端を重ねるように、返し縫いをしてから縫い始められるときは、切りっぱなしでも大丈夫です。もし、重ねて縫うことができない場合、たとえば、表からよく見えるステッチなどの場合、ほどいた糸を切り落とさずに残しておきます。布と布の間で結ぶか、針に通して見えないところで返し縫いをしておくかして、ほつれないようにしておきます。
▲ほどいた上糸と下糸どうしを結ぶ。
もし、普通の縫い針の穴にほどいた糸が通しにくい場合は、刺繍針を使うとミシンのくせがついてしまっている糸も楽に通すことができます。
ロックミシンの糸のほどき方も書いておきましょう。着ていて擦れてしまったりすることも多いですね。ほどいて、手縫いで止めておこうと思うことも多いと思います。縁のほつれを防ぐためにかけられるロックミシンの縫い目は、直線縫いのミシン目と違ってほどくのが楽です。ロックミシンは1本の針と3本の糸、あるいは2本の針と4本の糸で縫われているものが多いです。
これらのロックミシンの目のいちばん簡単なほどき方は、針に通して縫われた糸を抜くことです。針にかかっていない、長く幅広に渡っている糸は、ただ、引っかかっているだけだからです。ですから、この糸を目打ちなどで引き抜くことで、あっという間にほどくことができます。
ロックミシンの目のほどき方
はさみで端をカットし、針に通して縫われた糸(赤い糸)をリッパーで切る。その後、針に通っていない糸(青い糸)を引っ張って抜く。
刺繍でもほどくときがありますね。間違えたり、うまくいかなかったり、やっぱり変えてみたくなったり。
刺繍では、刺繍ばさみや小ばさみ、リッパーで切ってしまうほどき方と、針や目打ちなどで糸を引きながらほどくやり方があります。糸の状態にもよりますが、ほんの一目二目なら、針や目打ちで引きだしてまた刺し直すこともあります。それ以上になると糸が擦れていたり、くせがついていたりして、刺し直してもきれいに刺せないこともありますから、切って、新しい糸の部分を使う方がいいときもあります。
1 糸を引き出すほどき方
先が丸くてカーブしている目打ちは、手首をたくさん動かさなくても、楽に針目に引っかけられて糸を引くことができます。先の丸いものが入らないほど細かい針目の場合は、尖っている目打ちを使います。針は細いものでは曲がりやすいです。
2 切ってしまうほどき方
刺繍のほどき方
はさみで糸をカットする。布を裏側にして先の曲がったカーブした目打ちで糸を取る。
ほどくということ、いかがだったでしょうか? 縫われ方や糸の密度に合わせたほどき方、覚えておくと便利ですよ。
安田由美子
針仕事研究家。文化服装学院で洋裁とデザインを学び、卒業後は同学院の教員として勤務。現在は洋服や刺繍作品のデザインとつくり方を手芸書に発表し、フランス手芸書の日本語版の監修も行っている。「つくりら」のコラム「素材と道具の物語」に執筆中。2017年11月に『はじめてでもきれいに刺せる 刺しゅうの基礎』(日本文芸社刊)を出版。10年続くブログ「もったいないかあさんのお針仕事 NEEDLEWORK LAB」では手芸書を中心に幅広く手芸の情報を発信している。http://mottainaimama.blog96.fc2.com/