第11回 繕うということ(後編)|わざと目立たせてデザインを楽しむダーニングは、専用の道具がなくても、日用品や余り毛糸などでもできます。

前編では、ほつれや破れを未然に防ぐ方法や、「虫食い」や「かぎ裂き」などを直すのに便利な修繕用品を紹介しました。後編では、デザインとして楽しめる繕い、ダーニングについてお話しします。

文:安田由美子(針仕事研究家 NEEDLEWORK LAB) 撮影:天野憲仁(日本文芸社)

デザインとして楽しむ繕い。ダーニング

近年、ダーニングマッシュルームなどを使って繕い物をするのが、ちょっとしたブームのようです。darningは繕うという意味です。わざと目立たせて、デザインにしちゃう繕い物もいいですね。破れや穴はちょうどいい位置にはできないので、それに合わせてバランスよく色を配置したりするのがコツではないでしょうか。

ダーニングにもいろいろな方法があります。アメリカの雑誌で18世紀の刺繡やダーニングのサンプラーの復元したものが載っていました。綾織りを折り上げていくダーニングなども載っていて、昔の丁寧な手仕事に感動します。


▲アメリカの雑誌『SAMPLER & ANTIQUE NEEDLEWORK』2002年夏号。

 

ダーニングの道具は日用品を代用できる

繕うときに下の布や編み地まで縫ってしまわないように、また、でき上がったときにちょうどよくなるように適度なカーブをつけながら縫うためにダーニングマッシュルームという道具があります。これは、キノコの形をしていて、キノコの軸にあたる部分を持つか、机に立ててかがるものです。軸がないものでもでき、ダーニングエッグとも呼ばれるのもあるそうですよ。木製のものは軽いし、冷たくもないのでちょうどよいのです。

このダーニングマッシュルームが出回る前、日本の家庭では電球などを使って繕い物をしていた方も多かったようです。家庭内の他の目的の道具でも、ちょうどいいカーブのものを探してみると結構あります。


▲ダーニングに使える道具。(左から時計まわりに)丸みのあるハンドクリームの容器、スパイスの瓶と丸みのあるふた、木製きのこ型くるみ割り、ダーニングマッシュルーム、ダーニングに使う針、布を固定する髪留め用のゴム

 

余り毛糸なども使える

ダーニングのための専用の糸も販売されています。細い糸だとすっきり仕上がります。ほかには余っている毛糸などでもできます。あまり太い糸だとやりにくく感じたり、厚みが出てしまうので、ほどよい太さの糸を選びましょう。リネンの生地にはリネンの刺繍糸なども使えます。同じ素材にするとなじみがよいですが、綿の刺繍糸でもできます。


▲ダーニング専用の糸。ウールとアクリルの混紡。各約16m。


▲ダルマ毛糸iroiroはウール100%の中細毛糸。20g巻き(約70m)で50色揃っている。


▲麻の糸。アイリッシュリネンのリネン糸。リネンの生地にダーニングするときにはリネン糸がなじみやすい。

 

簡単にできる平織りのダーニング

毛糸などを使う場合は、くねくねしたクセがついていることがあります。あとでからまってやりにくいので、アイロンややかんの湯気でまっすぐにしてから使うのがコツです。この一手間で、からまらずにスムーズに進められます。

いちばん簡単なのは平織りでしょうか。先の丸い毛糸針や太めのクロスステッチ針、リボン刺繍針を使います。穴の部分に道具のカーブの部分を当てて、髪留めゴムで固定します。繕いで隠れる位置から糸を出したら、穴を隠すように交互にすくいながら、まず縦に糸を平行に渡していきます。穴の上から下まで渡し終えたら向きを変えて今度は平織りをするように最初に並べた糸を1本おきにすくっていきます。織りが終わったら隠れた位置で何回か返し縫いをして完成。最後にスチームアイロンで表面を軽く整えます。


▲靴下にできた穴にダーニング。先の丸い針で縦に糸を置いていき、向きを変えて平織りを織るように経糸をすくっていく。


▲ダーニングができた靴下。靴下の穴に、経糸を赤、緯糸を紺で平織りにしたもの。


▲キッチンクロスにダーニングしたもの。リネンのキッチンクロスの小さな穴をリネン刺繍糸を2色使ってダーニング。


▲セーターにダーニングしたもの。上はダーニング専用糸を2色使い。下の3つは合細(あいぼそ)程度の太さの毛糸で。穴や傷の程度によって、周りもちくちく縫ったり、丸くダーニングしたりする。

 

ニット地におすすめ。チェーン・ステッチ

平織りのダーニングのほか、面を埋めていくのに便利なのはチェーン・ステッチです。サテン・ステッチなどに比べて粗が目立ちにくいのも嬉しい点。穴ではなくて、繊維が細くなり、薄くなってしまったときにおすすめです。伸縮性もあるステッチなのでニット地などにもよいですよ。筒状の部分だったら瓶などにはめて行うとやりやすいです。


▲瓶に手袋をはめて、手首のほつれをチェーン・ステッチで繕う。

 

アップリケで繕うときは、伸縮が同じ生地を使う

破れや穴を繕う方法のひとつに、別の布を縫いつけたり、貼りつけたりするアップリケがあります。伸びる生地は同じように伸びる生地で直します。シールのように貼り付けるアップリケが一番簡単ですが、はがれるのが心配な場合は周りを少しかがっておきましょう。

接着の樹脂がなかった時代は布を当ててかがっていたそうです。靴下が貴重だった昭和20年代には、靴下をはめて直す道具もありました。写真の道具は母の道具です。簡単な作りの道具ですが、靴下をはかせた状態で、アップリケしたり、かがったりできるのが意外に便利で今でも使うことがあるそうです。


▲靴下を直すときの昔の道具。靴下のサイズに合わせて調整ができる。


▲型に靴下をはめて直しているところ。補修布を貼って渦巻きにかがりつけて丈夫に。

 

持っていると便利。補修用の針と糸のセット

ずいぶん昔から使っているもので、意外に知られていないのが、ほつれ補修のための針です。この針は、引っかけたりして飛びだしてしまった糸などを裏に引き込むときに使います。針と言っても針穴が無く、代わりにざらざらした表面で飛び出した糸を裏に引き込んできれいにします。手芸店で「ほつれのん」という、気になるネーミングで見つけて以来、ずっと便利に使っています。


▲ほつれ補修用の針で、飛びだしている糸をからませて埋め込む。

繕うときはできるだけ近い色の糸があるといいので、いろんな色がセットになっている糸も便利です。ボタン付け糸などは多色が少しずつセットになっているものがあります。


▲いろんな色の糸がセットになっているボタンつけ糸。

また、ちょっとほつれてきそうなところへは「ピケ」を塗るといいです。硬くならず、ほつれが止まり、固まっても無色透明です。とても便利でロングセラーの商品なのも納得です。


▲伝線したストッキングのほつれどめにも使える「ピケ」。

できるだけ目立たないように修復することに腐心する「繕いもの」を、あえてデザインとして楽しんでしまうダーニングのお話、いかがだったでしょうか?前編では、ほつれや破れを未然に防ぐ方法や、「虫食い」や「かぎ裂き」などを直すのに便利な修繕用品を紹介しています。こちらもぜひご覧ください。

 

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