紙もの愛と詩について思うこと。|Favorite things 第10話(前編)

詩人・月森文(つきもりふみ)としても活躍しているスタイリングフォトグラファーの村川麻衣さん。今春には詩人としての個展「次の春には、」を開催しました。今回は、そんな詩にまつわるお話です。

撮影・文:村川麻衣

古い紙の佇まいが詩的に感じるのは、そこに潜む背景や物語を想像してしまうからでしょうか。それは詩の持つ余白と似ているように思います。長い時を経て変化した風合いや匂い、紙に書けるだけ書いた筆跡から伝わる確かな温度。ヨーロッパの紙ものやアンティークを扱うお店で働いていた約5年間、毎日のように古い紙に触れることのできた日々は私の人生に色濃く残っていて 、紙への愛おしさは増していくばかりでした。

写真は古いポストカードのコレクション。

お気に入りは引き出しの中にまとめて仕舞って、季節や気分に合わせて選び、玄関やフランスのガラス棚の中に飾ったりしています。

 

紙と物と詩が溶け合う世界

東京・高円寺のブックショップ&ギャラリー「タタ」で開催した展示「次の春には、 」では、世界を旅しながら生まれた詩や日常的でありながらもどこか切なさを帯びた詩と古い紙の懐かしく儚い部分を掛け合わせ、月森文の部屋として表現しました。

展示のタイトルにした「次の春には、 」には、立ち止まって考えて欲しいという気持ちや、こんな状況だからこそ次の季節に抱く希望や期待、またいつかどこかへ旅する夢をみてほしい・・・ほんの少しの空白に込めたいくつもの想いがありました。

ベルギーの古い紙に脱色したシダの葉っぱを重ねたもの。

個々の持つ表情や物語を引き立たせるため、空間全体にも余白をもたせました。国や時代も超えて、紙と物と詩が溶け合う世界を感じてもらいたかったのです。

後編では、詩と掛け合わせた古いもの、展示のインスピレーションをくれた京都のお店などについてお話したいと思います。

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