詩×古いもので伝えたいこと。|Favorite things 第10話(後編)

前編では、詩人・月森文(つきもりふみ)として開催した個展「次の春には、」についてお話ししました。後編は、詩と掛け合わせた古いもの、展示のインスピレーションをくれた京都のお店などについてです。

撮影・文:村川麻衣

よく足を運んでいた平安蚤の市で、いつも足を止めてしまうお店がありました。ある時は丸いものばかり、ある時はサンカクばかり、ある時はオブジェばかり 。毎回店主さんがテーマを決めて並べられるものが楽しみで、いつか実店舗に行ってみたいと思っていました。

 

一瞬で心奪われた、古いものたち

お店が開いているのは週に一度、日曜日だけです。もともと牛乳屋さんだった建物に古いものたちが静かに並んでいて、足を踏み入れた途端、すっかり心奪われてしまいました。

もともとの紙の淡い色や形もかわいいのに、並べ方ひとつで魅力がぐっと増しているよう。

棚にぎっしりと並んでいるのは色褪せた水色の箱。ラベルの文字さえも愛おしい。

一見同じものに見えますが、ラベルの文字や箱の色褪せ具合が違います。

▲bild 京都市左京区鹿ヶ谷西寺ノ前112-102 open:日曜日(現在はアポイント制) 

 

古いものに詩を合わせて表現

東京・高円寺のブックショップ&ギャラリー「タタ」で開催した展示「次の春には、 」では、こちらで購入した古いもの4点に詩を合わせて表現しました。積まれていた古いメモ帳から選んだのは染みのあるもの。中にはこの春のリアルな気持ちを綴った詩を手書きで書きました。

日本の古いアクリルのキューブの下に重ねたのは、この春の心境を表した詩を。

台形のガラスに合わせたのは、強い意志を伝えたくて。

目を凝らさなければ見えない言葉に、ハッとさせたくて、表情のある板であえてぼんやりと見せました。

今回の展示をきっかけに、そしてこの窮屈な現実とは裏腹に妄想や想像は膨らみ、詩と古いものを掛け合わせた作品を届けていきたいと思います。

「こんな時こそ一遍の詩があれば」そんな想いで進めてきた展示の準備。新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、予定していた期間より短くなってしまいましたが、状況を受け止め、今だからこそ溢れ出てくるインスピレーションを見逃さず、私なりにできることを形にしていこうと思っています。

そのひとつの取り組みが「POETIQUE」。まだ立ち上げたばかりですが、これはPOEMとANTIQUEを足した造語で、月森文としてお届けする詩と古いものをベースとしながらも、その枠に捉われることなく、詩+○○としてさまざまなアーティストやお店、企業などとコラボレーションし、詩の可能性を広めていけたらと思っています。

POETIQUE (https://poetique.stores.jp/)

 

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