Favorite things 第1話 |小さなものが好き。その先には宇宙が広がっていると思う。

スタイリング・フォトグラファーの村川麻衣さんの連載「Favorite things 世界を好きでいっぱいにする!」がスタートしました!多感で多彩な麻衣さんの目線で綴る「好きなもの、好きなこと」のお話です。小さなものが大好きだという麻衣さん、最初のお話は、小さな手工芸品や雑貨をスタイリングする楽しさについてです。

撮影・文:村川麻衣

はじめまして。村川麻衣といいます。スタイリングと撮影のお仕事を中心に、アンティークのバイイングや企画・ブランディング・ディレクションなどを行っています。また、13歳から詩を書いていて、月森文として活動しています。

約5年間、ヨーロッパのアンティークや紙もののアイテムを扱うお店で働いていました。オーナーが買い付けてきた海外からの商品が届く度に、胸をときめかせ、少しずつ集めてきた小さなもの。そして、大阪とイギリスを行き来しながら蚤の市を回って出逢った様々なものなどをご紹介していけたらと思っています。

▲旅先で見つけたガラスのボタンや誰かの文字が綴られた古い封筒。

 

今、目の前にあるものに運命を感じる

インスタグラムで#maii_favoritethingsというハッシュタグをつくって、私の”好き”を集めては、時々現実逃避。国や時代を超えて、今私の目の前にあるものに運命を感じてしまいます。いつからかそういったもので世界をつくって写真を撮ることが気分転換のようなものになっていました。

この写真は、福岡や東京のアンティークショップで出逢ったものや手芸屋さんで見つけたもの、いつのまにかドライになっていた植物などを並べたもので、寒い冬の日に撮った1枚です。古いものや新しいもの、紙や石膏やプラスチックや植物など素材もいろいろですが「真冬の白」という気分だったので、白い封筒の上に並べました。

古いガラスのボトルに挿したのは、白いドット柄のチュールにフランスアンティークのガラスの青い花。淡いピンクのガラスの色と時を経たラベルの佇まいが存在感を引き立てます。

壁にランダムに貼っているのは異国の古い写真や楽譜、マッチのラベルやレース。紙だけじゃなく、違う素材のものを足すことで一気に雰囲気が出るように思います。

 

『FAVORITE THINGS』という名の小さな本

そうしているうちに、友人から「本つくったら?」と言われたことがきっかけとなり、撮りためていた写真をまとめた小さな本をつくることにしました。

以前、つくりらでも告知していただいたのですが、大阪・堂島にあるALNLMというギャラリーで本の展示会を開催しました。本の先にあるような世界感をイメージして部屋をつくり、本と#maii_favoritethings目線のものを販売しました。

古いガラスの板は升目状に切り込みが入っているので、チェスの駒を並べてその下に小さいガラスのボトルを置きました。新しいゲームが生まれる予感がします。

会期中にいらしていただいた方に出すカップやおやつをのせる器もぜんぶ私の好きなものにしました。

展示会では訪れた人たちも、思い思いに写真を撮っていかれました。ふとカメラを向けたくなる、そんな場面をALNLMではつくりたかったのです。

 

写真の余白。何を足して、何を引くか。

この写真は加賀ゆびぬきと小さなてまりの作家でしられる寺島綾子さんが主催する「こゆきの会」の作品展のDM写真に使っていただいた1枚です。

この時も家にあった小さなものたちが大活躍してくれました。こういう場合は、カメラを固定して液晶モニターを見ながら、それぞれの配置を決めていきます。

どんなに小さなものでも、何を足して、何を引くか、またそこにできる写真の余白を大切にしています。

小さなものを撮るとき、下地にアート系の本を使ったりします。よく使うのは大好きなCy Twomblyの作品です。シルクの糸にガラスのビーズを通しただけの被写体も、背景に表情があるだけでずいぶん違ってきます。

こちらの写真はスプーン。見つけた時、「スプーンなのに星の穴が空いてる!」と驚きましたが、角砂糖をすくうためのスプーンなのだろうと思います。持っていた星のスパンコールとサイズが似ていたので ”星をすくうためのスプーン”として販売しました。

日常の中でも、ふと写真を撮りたくなる瞬間があります。自分なりの目線や切り取り方で残した一瞬にまた新しい時が刻まれるような感じがします。

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