植物と人をつなぐもの 第1話(前編)|多肉植物がおしえてくれた大切なこと。私たちをやさしく包み込む、光のような存在とは?

独創的な多肉植物のアレンジが好評のTOKIIRO(トキイロ)さんの新連載がスタートします! テーマは「植物(きみ)と人(わたし)をつなぐもの」。第1話は、トキイロさんの活動についてのお話です。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展、近藤友美)

はじめまして。TOKIIRO(トキイロ)です。近藤義展、友美のユニットで、千葉県浦安市のアトリエで多肉植物を中心にアレンジメントを制作しています。


▲浦安にあるトキイロのアトリエ。入り口には多肉植物があふれています。

多肉植物の生命力や環境適応力に惹かれて、2009年より「季色(トキイロ)」として創作を始めました。日々、作品をつくりつづけるうちに、もっとグローバルな活動につなげていきたい!という思いが募り、2015年にユニット名を「季色」から「TOKIIRO」に。現在は園芸業界の枠を超えて、グリーンデザインやワークショップなど、多岐に渡って活動しています。この連載では、私たちが日々体感している「植物」と「人」とのつながりについてお話していきます!


▲多肉植物を置いているのは室内でなくて、外。

 

2015年から始まった表現の場。初回は「unite」がテーマ

トキイロは、毎年10月に新しい一年を迎えます。10月はトキイロを始めるずっと以前から何かが変化していくカギとなる月でした。そのことを決定づけたのは、2015年から始まった東京・馬喰町のギャラリー「組む 東京」さんでの個展。ここでの展示が翌年のトキイロの在り方を表現する場となり、そのテーマを軸に新しい一年を歩むようになったのです。

衝撃の第1回目は、合体を意味する「unite(ユナイト)」を展示会のタイトルに。作家の器を「空間」ととらえ、その空間に向き合ってトキイロはどんな世界を描くか。器に宿るストーリーをどんなふうに創っていくか。陶芸家さんとの融合。それがこのときのテーマでした。


▲「組む東京」さんの屋上に設えた「多肉植物の島」。

 

2016年「心静かに植物(きみ)の声をきく」

真摯に多肉植物と向き合い、その存在を感じながらトキイロは進んでいるんだなあと実感したのが、この年。その中でも植物の役割、植物と人との関係、人間の立ち位置などを深く考える機会が増え、多肉植物を通してたくさんの学びがありました。


▲植物の息づかいが感じられるような、心静かな時間を過ごしていただきたい。そんな思いで展示しました。

2016年の展示のテーマは、「心静かに植物(きみ)の声をきく」。日常生活で起きる頭の中の会話をいったん静かにして、多肉植物の声に耳を傾けてみる。植物と同じ目線で、近くで何かを感じてみる。そんな試みをした年でした。植物を“きみ”と呼ぶことで、より近しい間柄になれたような・・・。この呼び方はこれ以降もつづくことになります。

 

2017年「植物(きみ)の声が流れとなり」

植物の声にじっと耳を傾けて一年。聞こえてきた声があらわすものは、自然の声であり、地球の声でもありました。目に見えるもの、0・1の配列で表現できるもの以外の何か・・・。そこには理屈では説明できないドキドキやワクワクのようなトキメキがあったり、すべての存在を包み込むような温かい何かがありました。


▲鍛造作家の成田理俊(なりたたかよし)さんの器 にアレンジした作品。

目には見えないけれど、確かにそこに何かがある。そんなところに物事の焦点を当ててみると、私たち人類が、今、考えなければいけないことやするべきことが見えてくるのではないか。2017年はそんな使命感のような思いに辿り着きました。

 

2018年「植物(キミ)と人(ワタシ)をつなぐもの」

トキイロが活動を初めて10年目にあたる節目の展示。日々、植物と向き合うことで見えてきたものは、ますます深まり、宇宙までをも視野に入れた大きなテーマになってきました。

植物と人間。どちらも生きているのは同じ地球。宇宙にきらめくひとつの星です。人類誕生からずっとエネルギーを共有し、共生してきました。植物には調和能力があって、人もその中に優しく包まれている気がします。それはあまりにも自然なことなので、私たちはつい、そのことを忘れてしまいがちです。

多肉植物の世界をとおして、この大切なことを思い起こせるような展示ができないだろうか? それが2018年のインスタレーション。砂と竹を用いて、日常と分離された乾いた空間で生命の神秘を表現しました。

来場された方には、さまざまな感情を一度手放して、一歩一歩、砂を感じながら進み、意識を内側に向けたときの変化を丁寧に追いかけていただきました。体験してくださったみなさんそれぞれが何かを感じ、持ち帰ってくださったのではないかと思っています。

生命の誕生や生きる力とまっさらな自分で対峙したとき、五感でつかむ何かに出会えたような気がします。世界に満ちあふれていて、私たちをやさしく包み込む、光のような存在の何かに。

2019年はこのテーマを一年かけて掘り下げながら表現していきます! 後編では2018年から始まった新しい取り組みについてお話しています。

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