青天の霹靂。まさかのダメ出しで充実したハウツーページ|編集後記 第6話

『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』の編集後記6回目です。いよいよゴールに近づく本づくり。順調に進んだ制作作業に、思いもよらぬ難題が……。

撮影:斎藤由美 文:須藤敦子、つくりら編集部

巻頭の写真集、連載を再構成した12か月の花の話、シェライユやグランヴィルといった別アプローチでのショートストーリー……。潤沢な新規写真のおかげで、編集作業は順調に進み、全ページのデザインを終え、本づくりは校正へ。

このまま突き進めると思いきや、なんと、この段階で版元さんから、思いもよらぬリクエスト=「ダメ出し」が。ハウツーページの分量を増やしたいというのです。ハウツーページとは、ブーケやアレンジメントの作り方を解説したページのこと。コロナ禍でなかったら、日本で由美さんと一緒に工程カットを撮影したかったページです。

思えば、連載を始める際に、「書籍化したときに載せたいので、できれば月ごとにハウツーを撮っておいてください」と、由美さんにお願いしていたのでした。仮に日本で追加撮影ができたとしても、旬の花材は調達が難しいので、連載と同時進行で撮影しておいてもらえたら、と思っていたのです。全部の月は無理でも、トータルで10作品くらいは欲しいと考えていたのでした。

本づくりを進める段階で由美さんが用意してくれたのは、アネモネのコンポジション・スペシャル、シャクヤクのブーケ、草花の投げ入れ、バラとヤマゴボウの投げ入れの4つ。当初予定していた10作品と比べれば少ないのはわかっていたのですが、打ち合わせするなかで、ほかのページも大充実してきていたので、相対的にハウツーのボリュームは少なくてよいだろう、と考えていたのです。実際、この時点では、ハウツーは巻末に8ページほどという構成でした。

しかし、「ダメ出し」が出たからにはなんとかしなければなりません。版元さんの要望は、16ページはほしいとのこと。今の倍のページ数です。ハウツーなので、由美さんがストックを持っているはずもなく、すべて新しく撮影してもらわなくてはなりません。

私は覚悟を決めて由美さんに連絡し、事情を説明して、追加で撮影してもらいたい旨を伝えました。撮影から原稿アップまで、猶予はほぼ1週間。こんな無茶なお願いは、いくら由美さんとはいえ、コロナ禍でもあるので、難しいに決まっている……。

ネガティブムード満載の私のメッセージに対し、由美さんのお返事はひとこと「やります!」でした。

キューブワーク『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』より

それからは、あれよあれよというまに、段取り、撮影、原稿をサクサクと進め、シャンペトルブーケ、ブーケロン、キューブの小作品4つ、そしてテーブルセンター、と、新規のハウツーページが続々とでき上がっていったのです。

当初の8ページから18ページへと大幅に増やしたハウツーページは、デザイナーの高橋さんのアドバイスで、巻末の位置から月の話のすぐ後ろへ。グレー地をしくことで独立した「まとまり」になりました。

「雨降って地固まる」。

まさにそんな感じのハプニング。でき上がった本を改めて見直すと、このハウツーページがすこぶるいい。カジュアルで気取りがなく、さりげなく花活けのテクニックが語られています。

ダメ出ししてくれた版元さん、ポジティブオーラで乗り切ってくれた由美さん、ページ構成をシャッフルしてくれたデザイナーの高橋さんへ深く感謝。本づくりは、そこに関わる人たちの「英断」の積み重ねで、ブラッシュアップされていくのです。

Instagram:@tsukurira0714

【書誌情報】
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』
著者:斎藤由美『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』パリ在住のフラワーデザイナー、フォトエッセイストとして活躍する斎藤由美さんが、「花のある暮らし」をテーマに12か月の花を紹介します。
華やかな作品や暮らしに溶け込む花あしらいなど、パリの街に咲き誇る花々の美しい表情を切り取った、たくさんの写真とともにお伝えします。
すぐにでも生活に取り入れられる花活けのテクニックや、由美さんがいち早く日本に広めたシャンペトルブーケに、コンポジション・スペシャル、キューブワークのプロセス解説も。
20年以上パリに暮らし、由美さんが感じた、個性を重んじるフランスの生き方や、花と人、真の豊かさについて綴るエッセイに、心豊かに生きるヒントを見つけることでしょう。ページをめくるたびにパリのエスプリも感じる、心のエステになる一冊です。

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