更新日: 2021/08/18
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』の編集後記5回目は、花農家の村シェライユのお話です。困難に見舞われても屈しない人々の営みに、勇気のあり方を教えてくれるエピソードです。
撮影:斎藤由美 文:須藤敦子、つくりら編集部
「花のある暮らし」を伝えるための、さまざまなアプローチ。そのひとつは巻頭の「写真集」でしたが、別の切り口としてチーム全員が共感したものに、「フォイヤジストの村、シェライユ」がありました。
新規撮り下ろし分として、由美さんから大量の画像が届いた2020年の12月。再びオンラインで集まり、写真について由美さんに解説してもらいました。
いくつかのフォルダの中に「シェライユ」というものがあり、聞けば、そこはパリ近郊の花農家の村だそうで、葉もの、枝ものを専門に扱うフォイヤジストの村として知られていると言います。
フォイヤジストという存在がとてもフランスっぽいなあと興味を覚えたのですが、さらに由美さんが、コンフィヌモン(ロックダウン)の際に、週に1回、パリまでお花を届けてくれた人がいる、というエピソードを話してくれたのです。
コロナ禍だからこそ、外出できないときだからこそ、花に救われた。そんな話が私たちの心に響きました。
雑誌と違って書籍は長く書店に置かれるので、通常、旬の情報やトピックはあえて掲載しません。けれども、このエピソードはあえて今回の本に刻みたい。このとき、チーム全員がそう感じたのです。
世界中がコロナ禍に見舞われ、人々の生活が、社会全体が未曾有の危機に直面した2020年。その年にパリ近郊の花農家の村で、「花を届ける」という小さな活動があり、それが人々の心を癒した。コロナ禍で再認識した花の力。コロナ禍に制作した本だからこそ、しっかり記録しておきたい。私自身も強く思いました。
Instagram:@tsukurira0714
【書誌情報】
『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』
著者:斎藤由美パリ在住のフラワーデザイナー、フォトエッセイストとして活躍する斎藤由美さんが、「花のある暮らし」をテーマに12か月の花を紹介します。
華やかな作品や暮らしに溶け込む花あしらいなど、パリの街に咲き誇る花々の美しい表情を切り取った、たくさんの写真とともにお伝えします。
すぐにでも生活に取り入れられる花活けのテクニックや、由美さんがいち早く日本に広めたシャンペトルブーケに、コンポジション・スペシャル、キューブワークのプロセス解説も。
20年以上パリに暮らし、由美さんが感じた、個性を重んじるフランスの生き方や、花と人、真の豊かさについて綴るエッセイに、心豊かに生きるヒントを見つけることでしょう。ページをめくるたびにパリのエスプリも感じる、心のエステになる一冊です。
斎藤由美
パリ在住フラワーデザイナー/フォトエッセイスト。信州で花教室主宰後、2000年パリへ花留学。著名なフラワーアーティストの元で修行。コンペに勝ち抜きホテル・リッツの花装飾を担当。現在は驚異のリピート率を誇るパリスタイルの花レッスンと執筆が主な活動。花市場と花店視察など研修ツアーも手がける。著書に『シャンペトルのすべて』『コンポジション』『二度目のパリ』などがある。
インスタグラム: @yumisaitoparis
ブログ「パリで花仕事」:https://ameblo.jp/yumisaitoparis/
須藤敦子
出版社勤務を経て、フリーの編集者に。「つくりら」には立ち上げから参加し、2020年9月まで編集ディレクションを務める。企画・編集した書籍に『Flower Noritake』『二十四節気 暦のレシピ』『パリスタイルで愉しむ 花生活12か月』『植物刺繡と12か月のおはなし』(日本文芸社)、『Calligraphy Styling』『Calligraphy Lifestyle』『amenote』(主婦の友社)などがある。