植物刺繍と季節のお話 第9話(前編)|ウール刺繍のオーナメント

刺繍作家・マカベアリスさんが、めぐる季節のなかで出会った自然の景色や植物から刺繍作品ができ上がるまでをエッセイで綴ります。第9話では、ウール刺繍が登場します。

撮影:マカベアリス、奥 陽子(マカベさん) 作品制作・文:マカベアリス

輝くような黄金色の銀杏の葉も、すっかり散ってしまいました。

 

満開の時を迎える山茶花の花

日中でも冷え込む日が増えて、部屋の中ではストーブをつける日が増えています。これからいよいよ寒い季節に向かっていこうとするその時、ふんわりと優しい紅色の花を咲かせる木があります。

公園の片隅にひっそりと咲く山茶花(サザンカ)は、初冬の陽差しに照らされて、満開の時を迎えていました。

この花が咲き出すと、いつも不思議な思いになるのです。暖かくなる春に花が咲き出すのはわかるけれど、これから寒くなる時をわざわざ選んで、こんなに美しい花を咲かせるなんて。

山茶花の花の命は短く、すっかり開いてしまうと、すぐにはらはらと散り始めます。地面に散ったその様子も美しい。

美しいけれど、どこかはかなげで、赤いのに派手な感じはない・・・そんなところが、やはり春ではなく、この季節の花なのかも知れない。

このような植物の姿を見ていると、「それぞれの時を知る」ということが思われます。花は、暖かい春ばかりではなく、冷たい季節にも咲く。その時に適ってこそ美しいものなのです。

 

時が来たら美しく咲き、実る

 散歩していると、冬に向かうこの季節でもほかにもさまざまな植物の姿を見ることができます。道路の植え込みの木のそばで、青々とした葉っぱを広げる草はカタバミの仲間でしょうか?

オリーブの木に絡みつくようにして生えている蔓状の植物にはキラキラ光るような実がついています。

南天の木には赤い実がたわわにつき、住宅街の道路に彩りを添えていました。

植物の体内時計はそれぞれで、焦ることなく争うことなく、自然の摂理に身を委ねて、時が来たら美しく咲き、実る。本当に素晴らしいなあと思うのです。

 

時の流れで蘇った数々の言葉

20年ほど前に大変お世話になった方が、この夏、天に帰り、先日3ヶ月目の記念の会に参列しました。パステルカラーのお花に囲まれた、にこやかで少女のようなその方のお写真を見ていると、その方がかけてくださった数々の言葉が思い出されました。

そして、「そうかあの時こう言ってくださったのは、こんな思いからだったんだ・・・」とか、どんな思いで日々を生きておられたのか・・・などという事が、じんわりと私の胸に響いてきました。当時、若かった私にはわからない事でした。けれど20年余りの時を経て、それは私の中で花が開くように、急に蘇ってきたのです。

こんなに長い時をかけなければわからなかった自分の心の鈍感さに悔やみましたが、今が私にとっての「時」だったのかも知れません。そして時に適ったからこそ、心の中で花が咲き、やがて実り、しっかり根づくことになるだろうと思うのです。

 

山茶花のクリスマスオーナメント

「時」を知って美しく咲く山茶花に想いを馳せ、この花をモチーフに入れて何かつくりたいと思いました。色々考えた挙句、ウール糸を使ってクリスマスのオーナメントをつくることに。

どちらかというと和風な山茶花は、クリスマスのイメージはないかもしれませんが、ここは日本なのであまり気にせず・・・。まずは公園で見た紅色の山茶花を刺してみましたが、他にもライトブルーやグレーの花もつくりました。実際にはない色ですが、全体のバランスを考えてこんな風に色を変えてみる事がよくあります。

今回は少し大人っぽくしたくて、赤をたくさんではなく、ポイント的に使ってみました。ほかにもポインセチアや針葉樹の葉など、冬のモチーフも入れて。

まずは3つができ上がりました。もう少したくさんつくってみようと思います。

 

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