森ゆきこさん(前編)|スイーツファンをとりこにした『アイシングクッキー&カップケーキの本』を出版して7年。今や数々のケーキデコレーションコースを教える人気スクールに。

森ゆきこさん(前編)|スイーツファンをとりこにした『アイシングクッキー&カップケーキの本』を出版して7年。今や数々のケーキデコレーションコースを教える人気スクールに。

本場ロンドンでシュガークラフトを学んだケーキデコレーターの森ゆきこさん。東京・代々木上原のケーキスタジオを訪ね、アイシングクッキーやシュガーケーキの魅力についてお話を伺いました。前編、後編、2回に分けてご紹介します。

撮影:北村圭介  取材・文:小松﨑裕夏

美しいスイーツの中でも、ひときわダイレクトにアートの魅力が伝わってくる“アイシングクッキー”。カラフルな砂糖の装飾をクッキーに施したもので、近年注目を集めています。その第一線で活躍するのが、東京・代々木上原でスイーツデコレーションスクールROSEYを主催する、森ゆきこさんです。 

 

ロンドンで感動したスイーツを日本に

森さんのスタジオにおじゃましたのは、11月の半ば。テーブルにはクリスマスに向けてデザインした新作がたくさんでき上がっていました。下の写真は、2017年のコースレッスンでつくった作品。赤や緑などのクリスマスカラーを使わず、パステルカラーでまとめたやわらかなトーンが森さん流です。

森さんとアイシングクッキーの衝撃的な出会いは、留学先のロンドンでした。スーパーマーケットやカフェに並ぶ、日本では見たことのない個性あふれるクッキーに、一瞬で心を奪われたそう。

「茶色のシンプルなクッキーが、ほんの少し手間をかけるだけで、おしゃれでリッチなものに変身する。見ているだけで楽しくなるのが素敵だなと思いました」

その後、ロンドンのカレッジでケーキデコレーションの基礎を学び、ケーキデザイナーのペギー・ポーションのスタジオで修行。2008年に帰国しました。

日本に戻ってみると、ロンドンの街を華やかに彩っていたアイシングクッキーもシュガーケーキも、まだまだ店頭に並んでいませんでした。アイシングクッキーの魅力を多くの方に知ってもらいたいと、ワークショップやブログを始めます。それが編集者の目に留まり、初の著書となる『アイシングクッキー&カップケーキの本』を手がけることになったのです。

「当時はまだ、アイシングクッキーはまだあまり知られていませんでした。詳しくつくり方を解説した本も少なかったので、初めての人でもできるよう、つくり方を丁寧に解説しました」

目新しいスイーツとはいえ、材料や道具のほとんどはスーパーで手に入るし、市販のクッキーを使えば簡単につくれる。本づくりでは、そんな手軽さが前面に出るよう腐心したそう。


▲森さんが使っている食用色素やシュガーパールなどのトッピングの一部。

本に登場した作品は、ドットや花などおなじみのモチーフから、シンデレラやヘンゼルとグレーテルなど世界の童話をテーマにしたもの、ウエディングやクリスマスなどのアニバーサリーモチーフまで。誰もがつくりたくなる作品をぎゅっと一冊に。2010年に出版されると、たちまちスイーツ好きのアンテナにキャッチされ、話題に。今なお版を重ねるロングセラーになりました。

初の著書から7年。当時は自宅で行っていたケーキ制作も、東京にケーキスタジオを構え、本格始動。スイーツデコレーションスクールROSEYとして多くの生徒さんが通うスクールも手がけるように。

スクールでは伝統的なデザインのほか、森さんのオリジナルデザインも教えています。「美術館で見た古いテキスタイルの模様や、建築のレリーフをヒントにすることが多いです」

なかにはレースのような繊細な作品も。こちらは森さんが大好きだという、白ベース×白いアイシングの組み合わせ。「控えめな華やかさに惹かれます」

こちらは、初級、中級、上級、プロフェッショナルと4つにわかかれたスクールで学ぶ課題作品。モチーフも色も多岐に渡り、アイシンングクッキーの奥深さが伝わってきます。

 

描くのが楽しいアイシングクッキー

取材では、アイシングクッキーのデコレーション方法を見せていただきました。

「アイシングの主な成分は砂糖で甘いため、上にのせるアイシングを薄く塗るなどして甘さをひかえめにしたりすることもあります。スパイシーな生地も合いますよ」

まず、まな板、パレットナイフ、事前につくっておいたアイシングを用意。パイピングバッグと呼ばれるアイシングを入れて絞る袋は、OPPシートをくるくる丸めてつくります。サイズがひと目でわかるよう、色違いのマスキングテープを貼ってひと工夫。

事前につくったアイシングを使う分だけまな板に絞り出します。「アイシングのつくり方は、加熱処理されたメレンゲパウダーと水、砂糖を混ぜるだけと簡単です」

なめらかになるまでパレットナイフで練ります。「この手順を省くと、デコレーションの途中でアイシングが切れるので必ずやってくださいね」。描きたい模様やラインに合わせて、アイシングに水を加えて固さを調整します。

アイシングをパイピングバッグに詰め、先端を切ったら、ラインの太さを確認。

いよいよデコレーション! パイピングバッグを持つとき、反対の手のひと差し指をパイピングバッグに添えると、安定して描きやすくなります。

円を描くときは、均等な力で絞りながらパイピングバッグを持ち上げ、カーブさせたい方向に動かし、ゆっくりと先端をおろします。

パイピングバッグを持つ森さんの手さばきは本当に美しく、さらさらとよどみなく描かれていくその様に思わず見とれてしまいました。取材記者も“お絵描き”に挑戦させてもらいましたが、ミミズが這ったような、なんとも情けない線に・・・。取材後、改めて森さんの著書を見直したら、「アイシングの基本テクニック」のページでは、「遅すぎはダメ、急いでひっぱらない」とNG例もしっかり掲載されていました。

 

後編では、森さんがケーキデコレーションを手がけるようになったきっかけや、カップケーキやシュガーケーキの魅力についてお話します。

 

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