植物刺繍と季節のお話 第6話(前編)| パッチワークにリスペクトを込めて

刺繍作家・マカベアリスさんが、めぐる季節のなかで出会った自然の景色や植物から刺繍作品ができ上がるまでをエッセイで綴ります。第6話のテーマは、パッチワーク。マカベさんが夢中になっていた懐かしのテレビ番組のエピソードも登場します。

撮影:マカベアリス、奥 陽子(マカベさん) 作品制作・文:マカベアリス

夜明けの時間が次第に遅くなる。ミンミン蝉に混じって、時々ツクツク法師の声が聞こえてくる。朝夕は少し気温が下がり、秋の虫たちが合唱を初める・・・。

 

次の季節へと姿を変える木々

盛夏から晩夏へ、そして初秋へと移り変わるこの季節が私は大好きです。苦手な暑さから徐々に解放され、気持ちがゆっくりと落ち着いてくるのです

一雨ごとに季節が進む・・・とはその通りで、雨上がりの公園に吹く風は新しい季節を連れてきているようでした。銀杏の木は、はや丸々とした実をつけていました。マテバシイの枝には青い実がしっかり実っています。

人間が「暑い暑い」と言いながら何とか夏をやり過ごしている間にも、木々たちは着実に次の季節への準備をしていたのだなあ。毎年のことながら、粛々と生命の営みを続ける植物の姿には感動を覚えます。

 

編み物とパッチワークに夢中になった日々

この季節になると、何か無性に手を動かしたくなるのは私だけでしょうか?

刺繍を仕事としていなかった頃は、大体この時期に毛糸と編み棒を、しまいこんである押入れから引っ張り出してきていました。そうして、家事がひと段落した夜になると、手袋や靴下など小さなものからせっせと編んでいくことが楽しみでした。

チクチクと細かい作業がしたくなって、パッチワークに励んだこともあります。パッチワークと言っても、私の場合は難しい技法などは使わず、ただ四角に切った小さな布をつなげていくだけ。花柄やチェックなど少しテイストの違う布も、つなげていくと不思議に味になって一枚の大きな布の時とは違う表情になります。そして手をかけた分、愛おしさを感じるのです。

このパッチワークを初めて知ったのは、子どもの頃に観たテレビ番組でした。「大草原の小さな家」。アメリカの西部開拓時代に、たくましく生きる一家を描いた、ローラ・インガルス・ワイルダー原作の物語です。

愛情あふれる父さん母さんとその娘たちが、次々とやってくる困難にも負けずに明るく生きる物語は素晴らしく、毎週土曜日夕方の放送を姉とともに楽しみにしていました。その一家が住む丸太小屋の家のそこここに、パッチワークのカーテンやら、ひざ掛けやら、寝具やらがありました。素朴だけれどカラフルで、木製の粗末な椅子やベッドにとてもよく合っていて、子どもの私は「すてきだなあ」と画面に見入っていたことを思い出します。

大人になってからあるとき、懐かしくなって小説版を読み耽ったことがあります。そこには、テレビ版ではあまり印象に残らなかった開拓の大変さ、作物が採れなかったときの飢えとの戦い、冬をしのいでいく辛さなども描かれており、尋常ではない苦労を伴って、その時代があったことを知りました。

すてきなパッチワークも、布が貴重な時代に少しの切れ端でも大切に・・・ということから生まれたのでしょう。けれどそんな大変な生活の中でも、女の人たちが針を持ち、布の色合わせを考えながら縫い進めていくひとときは、きっと心楽しい時だったのでは・・・と想像します。

今と違って手づくりすることが、生活に直結する時代。針を持つことはたくましく生きることでもあったのかも知れません。今は何もかも手作りする時代ではなくなりましたが、それでも自分の手で何かをつくり出すことは、たくましく生きることに繋がるような気が私はしています。

特に新しいウィルスの出現で、当たり前のことが当たり前でなかったと否応なしに知らされた今、何が起こるかわからないときに、具体的に何かをつくり出すことができるというのは、自分にも周りにも大きな力になる事と思います。

さて、話が少し飛躍しましたが、今月はこのパッチワークにリスペクトを込めて、刺繍でこれを表現してみよう。少々時間がかかりそうですが、心も落ち着く初秋の夕べ、チクチクとゆっくり刺し進めましょう。

 

 

 

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