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パリスタイルで愉しむ 花生活12か月 第21話 サパン・ド・ノエル

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フラワーデザイナー&フォトエッセイスト斎藤由美さんの連載、「パリスタイルで愉しむ 花生活12か月」。第21話はサパン・ド・ノエル、クリスマスのモミの木のお話です。

撮影:斎藤由美、Yukiko MORRIS (シャンゼリゼ) 文:斎藤由美

クリスマスのことをフランス語で「ノエル」といいます。カトリックが多い国なので、ノエルは家族で過ごす大切な行事。日本の大晦日と似ています。ノエルに必須なのがサパン、モミの木です。

 

お花屋さんには生のモミの木がいっぱい

11月後半、ボジョレーヌヴォー解禁の頃になると、お花屋さんの店頭は生のモミの木でいっぱいに。さまざまなサイズがあり、子どもたちと一緒に選びに来たお父さんが、肩に担いで帰る姿が見られます。見本のモミ以外はネットをかぶせているので、持ち運びが便利。小さなアパルトマンや少人数の家庭には、小ぶりの成形ツリーが近年人気です。海外生活歴が長い友人たちに聞いたところ、ロンドン、NY、香港も生のモミの木が主役だそう。

ある年のこと。ランジス花市場ツアー参加の方々と一緒に、市場内にある資材店のツリーディスプレイをすることになりました。日本でこんなに大きなツリーを飾ることはなかなかなく、フランスの文化にも触れられ、みなさんにとても喜んでいただけました。資材店のマダムも大満足。こうして、みんなが笑顔になるシーンをこれからも作っていきたいと思っています。

私がレッスンをしている「ローズバッド・フローリスト」にも毎年、近くに住む常連客から高さ3.5メートルのサパンの注文があります。外からは見えないだけに、そんな大きなモミの木を余裕で飾れるアパルトマンがあることに驚きを隠せません。そのお宅が時々催す夕食会に、大きなブーケとテーブル用の小さなブーケを10個届けるのですが、花器はすべてバカラのクリスタル。水を入れるとき、蛇口に当たらないよう緊張してしまいます。

またパティスリー界のピカソといわれるH氏の自宅にサパンを設置したときのこと。渡されたのは、すべてクリスタル製のオーナメントでした。高価なものですし、ずっしりと重量があるため、モミの枝からすべり落ちないように、とても気を遣いました。

店舗には電飾つきのガーランドが欠かせません。11月下旬、パリのフローリストたちはファサードの装飾に大忙し。年に数回の稼ぎ時です。

 

今年のシャンゼリゼは無観客で点灯式

夜が長いヨーロッパの冬を明るく灯すのがイルミネーション。外出規制中の今年もシャンゼリゼでは無観客で点灯式が行われました。我が家の近くでも、通りや広場が光に包まれています。

 

クリスマスのテーブル飾り

日本ではクリスマスを前に、リースのレッスンが盛んに行われますね。先述のようにフランスはモミの木が主流なので、リースを飾るとしても、すでにできあがっているものを買うくらい。自分でつくるという感覚はないようです。

昨年は、ノエル前後にロンドンを訪れました。

お世話になった家へリースをプレゼント。白いモヘアの毛糸とキャンドルをあしらって、テーブル飾りにしました。

我が家ではリースに小さな電飾を巻きつけ、真ん中にアイビーを入れた花器を置いてみました。

別の年は友人を招いてラクレットパーティーを開催。ラクレットは冬のポピュラーな家庭料理。スライスされたチーズを各自、小さなフライパン状の器に入れ、卓上電熱器で溶かし、生ハムやゆでたジャガイモにかけて食べます。

グラスのような小さな器にエバーグリーンをテープで巻きつけ、中にブーケを入れた「コンポジションスペシャル」をつくってテーブルフラワーに。カリグラフィーでノエルのカードを書いて愉しみました。

日本にいるときクリスマスといえば、イヴの方が重要なイメージでしたが、ノエルは25日の祝日がメインです。朝、モミの木の下に置かれたプレゼントを開け、シャンパーニュで乾杯しながら生牡蠣が並ぶ海の幸プレート、フォアグラを前菜に。何時間にも渡るランチは栗を詰めた鶏の丸焼き、フロマージュと続き、デザートは薪の形をしたケーキ「ビュッシュ・ド・ノエル」というのが典型的なメニューです。

フランス人にとって大切なこのイベントを家族で行えるよう、11月から1ヶ月半、第2次ロックダウンが実行されました。ノエルに大人数で集ったり、移動したりするせいで、コロナ感染の第3波が懸念されていますが、どうか今年1年吹き荒れた嵐がおさまり、みんな元気で心温まるノエルを迎えられますように。

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