poritorieさん(前編)|リネンに咲く小さな草花は、アンティークの世界と調和する唯一無二のリボン刺繍。

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poritorieさん(前編)|リネンに咲く小さな草花は、アンティークの世界と調和する唯一無二のリボン刺繍。

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アンティークな雰囲気と上品な色づかいのリボン刺繍で多くのファンを魅了しているのが、「poritorie(ポリトリエ)」の植木理絵さん。今春『小さな草花でいろどる リボン刺繡&小物たち』を出版し、イベントやワークショップで活躍中です。アトリエを兼ねたご自宅にお邪魔させていただき、リボン刺繍の魅力やアンティークへの思いについてお話を伺いました。前編、後編の2回にわけてご紹介します。

撮影:奥 陽子  取材・文:酒井絢子

アンティークとオリジナルにこだわったアトリエ

刺繍作家、植木理絵さんのアトリエ兼ご自宅は、町を見下ろす丘にありました。鳥のさえずりが聞こえ、窓から見える景色には緑があふれ、ときに可愛いタヌキがひょっこり現れてこちらを覗いていることも。

室内には、アーティスティックなドライフラワーのスワッグやシックな色合いのボタニカルフレームなど、ひとつひとつにこだわりを感じられるインテリアアイテムが飾られています。取材班からは幾度も感嘆の声が上がり、撮影班は「どこもかしこも撮りたくなる!」といたるところでシャッター音を響かすほどの、とっても素敵な空間。

こちらは植木さんのアトリエの一角。イベントなどで作品をディスプレイする際に使用するリネンの生地や、お気に入りのアンティーク雑貨が棚におさめられています。キャビネットの上には、作品づくりの資材にもなるたくさんのバスケットが。

過去にイベントで展示用に制作した作品もさりげなく並べられています。オーバルのフレームは木工作家の友人にオーダーしたもの。ミモザの花は、著書『リボン刺繍&小物たち』でもブラウスやバッグにあしらわれた、poritorieの作品を語る上で欠かせないモチーフです。

ブローチや耳飾りなどに必要な金具などのパーツは、ガラス棚の中に分類され、すっきりとおさめられています。フレームやフォントが箱ごとに違う手作りのラベルも、植木さんのこだわり。

 

針を刺す時間は、ピアノの音色と共に

植木さんがアトリエで刺繍をする時間は、主に昼下がりから夕方にかけて。クラシックなピアノの音色をささやかなBGMにしながら、自然光の中でゆったりと刺していくのだそう。窓際に置かれた木製のデスクが作業スペース。黒のリネンにリボン刺繍が映える作品「花かんむりのむぎわら帽子」もディスプレイされています。


▲デスク上の小引き出しには、カリグラファーのヴェロニカ・ハリムさんに書いてもらった「poritorie」のカードが。植木さんご自身もヴェロニカさんのファンで、ワークショップに参加したこともあるのだとか。

 

ひょんな出会いからリボン刺繍の道へ

アンティーク好きで、趣味でパッチワークなどに親しんでいたというお母様から、たくさんの影響を受けたという植木さん。「でも、私は小さいときはぬりえもはみ出しちゃうような不器用な子だったんです。手芸の経験もほどんどなかったのに、大人になってから刺繍にはまっちゃって」と笑います。

そんな植木さんがリボン刺繍にめぐり合ったのは、度重なる偶然がきっかけでした。

何か趣味を始めたいと思っていた矢先に、行きつけのカフェで刺繍教室の案内を目にし、その可愛らしさに興味を持って教室に参加することに。その後、今度は別のカフェでリボン刺繍教室が開催されているところに偶然遭遇。リボン刺繍も習い始め、その面白さのとりこになっていったのです。


▲刺繍に欠かせないピンクッションは、木工作家の友人とコラボレーションして制作したこだわりのアイテム。ホワイトオークのベースに植木さんの刺繍入りのリネンがおさまったエッグスタンドのようなフォルム。とっても可愛い立ち姿。

「もともとお花や葉っぱが好きで、お花の教室に通っていたこともありました。リボン刺繍を初めて見たときは、こんなに立体的にお花を刺繍できるんだ!かわいい!って感動したんです。お花を好きな気持ちと、刺繍が楽しいって気持ちが、私の中で合致したような感じで・・・」と、リボン刺繍と出会った頃のことを振り返ります。

 

SNSで作品発表の場が広がる

インスタグラムなどで作品を発表しているうち、ショップを開く友人に出品を頼まれ制作したことから、本格的な作家活動がスタートします。ブローチ展や植物をテーマにした企画展など、いろいろなところから声がかかり、これまでたくさんの作品を発表してきました。


▲よく使うエンブロイダリーリボンが、ボタニカル柄のボックスにぎっしり。リボンはMOKUBAの3.5㎜幅と7㎜幅がほとんど。取り出しやすいよう色味ごとにまとめて。

「私の好みのイメージに誰かが共感して気に入ってくれるということがやっぱり嬉しいですね。いまでもイベントなどでお客さんが実際にブローチなどをつけていてくれたりすると、感激しちゃいます」


▲ピンクッションやカッティングツール、手芸用ボンドなどのよく使う道具たちは、持ち運びやすい取っ手付きの木製のソーイングケースにまとめられて。こちらはお母様から譲り受けた年季ものなんだとか。

展示や出品だけでなく、ワークショップも不定期に行なっているそう。今後はリボン刺繍の楽しさも伝えていけたらと話します。


▲白いお花はイベント出品のために制作中の「マーガレットのブローチ」のためのパーツ。ブローチに仕立て上げられるのを待つばかりに。

 

作品づくりのインスピレーションは海外からも

植木さんのご主人は買い付けもご自身で行う古着屋さんのオーナー。海外への買い付けには植木さんも同行し、アンティークアイテムを探したり、作品のインスピレーションを受けたりするそう。アメリカやヨーロッパなどで見つけた“掘り出しもの”は、アトリエのあちこちに飾られています。

こちらは古い手紙。「紙ものにも目がないので、マーケットなどで見つけると、思わずたくさん購入してしまうんです」

窓辺には、イギリスの田舎の蚤の市で出会ったヴィンテージのお人形がちょこんと飾られています。シェーカーボックスや手づくりした布張り箱と一緒に、心なごむコーナーに。

実は植木さんはリボン刺繍作家という肩書きだけでなく、カフェのインテリアコーディネーターとしても活動することがあるそうで、そのための什器の買い付けなども担うんだとか。取材日の少し前にも、ロンドンに行ってきたばかりだそう。

「ロンドンといっても街の中心部から2時間くらい車を走らせた場所にある、アンティークマーケットなどを巡りました。夫婦ふたりで重たい什器も車に積んだりしなくちゃいけないので、けっこうな力仕事なんですよ」

笑顔でお話ししてくれましたが、植木さんはとってもたおやかな印象で繊細な作品をつくる方なので、そのギャップに驚きです。

 

心惹かれるのは、植物の自然な姿

幼い頃から自然と親しんできたということもあり、植物そのものが大好き!という植木さん。アトリエにも、草花や枝をモチーフにしたアイテムが数多くありました。

作業デスクの前面に飾られたシックな印象の二つの額装。左の渋いフレームはドイツで購入したというワイルドフラワーの標本です。右側は、poritorieの個展の際に展示した、「ハナコトバブローチ」をモチーフとしたポスター。ハンコ作家と紙物作家の友人とコラボレーションし制作したそう。

こちらは玄関を入ると出迎えてくれる、アトリエ横のディスプレイ。ご夫婦でこだわってリノベーション設計したというシャビーな白壁に、柔らかな色調のアンテイィークアイテムが並んでいます。

アンティークとたくさんの植物に囲まれた穏やかな空間。あのナチュラルでシックなリボン刺繍はここから生まれたんだと、作品の背景を垣間みた感じがしました。

後編では、植木さんが魅せられたリボン刺繍の楽しさや、初の著書『リボン刺繍&小物たち』などについてお伝えします。

 

 

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