パリスタイルで愉しむ 花生活12か月 第1話 ミモザ

パリで活躍するフラワーデザイナー&フォトエッセイストの斎藤由美さんの連載がスタートします! 毎回、その季節の主役の花をクローズアップして、花のある暮らしをご紹介。第1回目、2月の花はミモザです。

撮影・文:斎藤由美

パリの冬は、石畳との境界線があいまいなほど空がグレーで、鉛色の空気に包まれます。日が短いときは朝9時まで暗く、起きたら電気をつけるのが冬の朝、最初にすること。

夕方も5時前には暗くなってしまうので、オフィスにいたらまったく自然光に当たらず1日が終わることもあります。もっとも昼間、外に出たとしても太陽が輝く日は冬の間、数えるほどしかないのですが・・・。

 

パリジャンたちの顔もほころぶ、黄色の花

しとしとよく雨も降る、一面グレイッシュな街にミモザの鮮烈な黄色が現れると、パリジャンたちはようやく救われたような気持ちになります。

3月8日「ミモザの日」は、とくにイタリアで男性から女性にミモザを贈る日とされ、最近は日本でも知られつつあります。しかし温暖化の影響でしょうか、実際にミモザがパリに出回るのは1月末から2月中です。

パリ郊外にあるランジス市場に行くと、イタリアから届いたフサフサのミモザが台車いっぱいに売られています。「今年はなんだか早いなあ」などといいながら、フローリストたちもうれしそう。

サンジェルマン・デ・プレ界隈、オデオン劇場の前にある「ローズバッド・フローリスト」には、毎年高さ2mを超えるミモザがウィンドウを埋め尽くし、街行く人々は足を止め、顔を輝かせます。

マルシェ(朝市)の花屋スタンドにも、無造作にバケツに入れられたミモザが並び、まるでそこだけスポットライトが当たっているかのよう。思わず輝く黄色に引き寄せられます。

ミモザは花のもちがよくないせいか、たわわな1束が1500円程度と手頃な値段です。確かに、ひよこみたいにふわふわした丸い花は、すぐにしぼんでしまいますが、あまり光の届かないパリのアパルトマンに飾れば、まるで太陽を連れて帰ってきたかのように、一気に明るい気持ちになります。

そして、少し青くさい独特の香り。ミモザを抱えて歩くたびに、あたりにふわりとしあわせな香りが漂います。

長く暗い冬、今冬はストもあり余計に険しい顔のマダムたちも、ミモザを見ると目元を優しく緩めます。メトロで向かいの席のムッシューが微笑んでくれたり。そんな小さな交流もうれしいものです。

 

ノルマンディーのミモザの街、グランヴィル

ミモザといえば、南仏にあるミモザ街道が有名。レモン祭りでにぎわうマントン、すみれの村と併せて一度は訪れたいと思っていますが、実はノルマンディーにもミモザで知られる街、サン・ジャン・ル・トマがあります。

フランス人にはノルマンディーは「雨が多くて寒い」というイメージのようですが、実は暖流のおかげで冬は比較的暖かく、2月に満開のミモザが見られるのです。

パリ・モンパルナス駅から電車で3時間のところにあるノルマンディーのグランヴィルという街は、モンサンミッシェルから40kmと近く、「北のモナコ」と称される風光明媚なところ。

クリスチャン・ディオール氏の生家が美術館として公開され、モード好きな人には興味深い展覧会が行われています。カジノやヨットハーバーもあり、フランス随一の貝類の水揚げ港としても知られ、この季節は牡蠣はもちろん、生ハマグリ、巻貝など新鮮な海の幸を楽しめます。

お庭のミモザを手折って食卓にさっと飾り、牡蠣に合わせて酸味のある白ワイン、ミュスカデで乾杯。その前にいただくアペリティフ(食前酒)は、シャンパーニュとオレンジジュースのカクテル「ミモザ」を楽しむのもいいですね。

 

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