節の話「芳香で夏の到来を告げる三大香木のクチナシ」|夏至

制作・文:猪飼牧子 撮影:清水美由紀 文・つくりら編集部

明日6月21日から二十四節気は夏至(げし)です。

夏至『二十四節気 暦のレシピ』より

夏至になったその日は、一年の中で昼の時間がもっとも長い一日です。ちょうど梅雨時で、日の長さの変化を実感しにくい時季でもありますが、夏至になった日を境に一日の昼の時間は短くなってきます。ただし、日の出が一番早く、日の入りが一番遅いわけではありません。一年の中で日の出が一番早いのは夏至の一週間ほど前、日の入りが一番遅いのは一週間ほど後。トータルすると夏至の初日の昼の時間が一番長いというわけなのです。

少し汗ばむようなこの時季、道を歩いているとどこからともなくふんわりと芳しい香りが漂ってくることがあります。真っ白い花をたわわに咲かせ、その香りで季節を告げるクチナシです。

 

三大香木のクチナシの花 独特の芳香で夏の到来を告げる

クチナシ『二十四節気 暦のレシピ』より

クチナシはアカネ科クチナシ属で、日本や中国、台湾などアジアに分布している植物。ジンチョウゲやキンモクセイと並んで三大香木といわれるほど芳香の強い花として有名です。

子どもの頃からクチナシの香りが大好きで、街路樹で咲きはじめたクチナシを見つけては鼻をうずめていました。はじめて鉢植えの花がほしいとリクエストをしたのもクチナシです。一重も八重も育てましたが、クチナシが好きだったのは人間だけではありませんでした。白い花には、小さな黒い粒々のような虫、アザミウマがたかり、葉っぱは、オオスカシバの幼虫により丸裸に。無農薬で美しく育てるのは大変だと思い知らされました。

少し早咲きの一重のクチナシは、十月から十一月頃に赤みの強い橙色の実をつけます。この果実は山梔子(さんさし)と呼ばれる生薬で、消炎、解熱などの効果が期待され、打ち身などの患部の熱を吸収し、症状を和らげる塗り薬に。ちなみに八重のクチナシは華やかで庭木では好まれますが、実がならないため薬用ではありません。

クチナシ『二十四節気 暦のレシピ』より

この山梔子は飛鳥時代から布地を黄色に染める染料としても用いられてきました。栗きんとんやたくあんのきれいな黄色も、このクチナシ色素の色です。

クチナシの花はエディブルフラワーでもあり、お茶の香りづけなどにも利用されています。日本においても花を食べる歴史は古くからありますが、十八世紀頃の料理本にはミカンやスミレ、ボタンの花などと並び、クチナシも干してから和え物にしていたという記述がありました。

梅雨の時季、雨が続くと気分が落ち込みがちですが、そんなとき、私は香りをたよりにクチナシの咲いている場所を探しに歩きます。ベルベットのように滑らかな花弁に雨粒がぷっくりと光り輝く姿は、眺めているだけで心が洗われるのです。

Instagram:@tsukurira0714

【書誌情報】
『二十四節気 暦のレシピ』
猪飼牧子・清水美由紀 著「二十四節気 暦のレシピ」古くから季節を表す言葉「二十四節気 七十二候」をテーマに、季節の移り変わりを花や植物で感じながら、ものづくりの楽しみを提案。
小さな変化を繰り返しながら、季節とともに四季をたどっていく植物。その時季の植物をアレンジメントや料理やおやつに生かしたり、心と体を健やかするハーブやアロマを活用したり、ちょっとしたおもてなしの小物をつくったり。二十四節気を植物とものづくりで体感できるアイデアとレシピ120を紹介します。

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