植物と人をつなぐもの 第7話(前編)|蒸し暑い日本の夏を乗り切る、おすすめの多肉植物5選

蒸し暑い日本の夏は多肉植物もぐったりしがち。今回は、そんな日本の夏を乗り切れるおすすめの多肉植物とその管理方法のお話です。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)

暑い夏がやってきました。多肉植物にとってはつらい季節の到来です。暑い国からやってきた子たちだから夏にピッタリ!そう思っていたのに、振り返ってみると、春や秋、冬と比べると、断然夏に多肉植物の元気がなくなるんです。中には枯れてしまうこともあります。

ということで、蒸し暑い日本の夏に比較的おすすめな多肉植物をご紹介します。題して、「夏を乗り切る!トキイロ的夏季管理方法2019」です!

 

ロゼットが美しい「白牡丹」

夏に限らず一年を通してロゼットが美しい白牡丹は、グラプトペタルムの強さとエケベリアの美しさを併せ持つ品種です。アレンジの中でも単体でも存在感はばっちり、暑い夏に涼を感じさせてくれます。


▲白牡丹(グラプトべリア属)。

繁殖能力が強く、葉挿しや挿し芽などで殖えるので、流通量も多く、手に入りやすい品種でもあります。

 

高温多湿に強い、南アフリカ出身の「月兎耳」

葉っぱがうさぎの耳に似ている「月兎耳(ツキトジ)」は、ベンケイソウ科の多肉植物で、南アフリカの出身。原産地の気候は雨期、乾期があり、特に雨期には高温になることから考えても日本の多湿な夏にも耐性があると考えられます。


▲月兎耳(ツキトジ・カランコエ属)。

月兎耳は実際に育てていても夏に弱いイメージはありません。葉の葉面の毛は陽射しの強さをコントロールするために備わったともいわれています。何万年もかけて進化したその個性的な形は人の想像力をはるかに超えた創造物だと感じます。

 

フリルのような葉が目を引く「高砂の翁」

フリルを持つピンクのリップは高砂の翁の象徴ともいえます。肉厚で大きな葉はエケベリア属の中でも目立ちます。比較的早く成長し、茎立ちしていくので大きなアレンジにはレギュラーになりえます。


▲高砂の翁(たかさごのおきな・エケベリア属)。

エケベリア属の出身地は主に中南米。一日の気温の較差が大きいので日中の暑いときはじっとしていて夜間に生命維持活動を集中させるように進化しました。日本での管理のポイントは夜間にあります。

 

十分すぎる存在感!大型の「ファング」

ファングは前出の月兎耳とベファレンシスの交配種です。かなり大型になります。トキイロのアトリエのファングは2メートルを越えています。葉の裏側に爪のような突起が無数にありますが、棘ではないので触っても痛くありません。


▲ファング(カランコエ属)。

 

緑の玉に癒される「グリーンネックレス」

涼しげなグリーンカーテンを演出できるグリーンネックレス。風に揺れるかわいい緑の玉が癒しをあたえてくれます。ベンケイソウ科の多肉植物より水もたくさんほしがりますし肥料も使います。そのことを覚えておくとどんどん生長していく姿が見られます。


▲グリーンネックレス(キク科セネシオ属)。

 

元気に育てるポイントは夜間の管理法

日中、多肉植物はただただ光を吸収して葉の中で光合成を進めています。水蒸気や酸素を放出したり二酸化炭素を取り入れたりすることなく気孔を閉じています。浸透圧での水の吸収は多少あるとはいえ、蒸散をしないので根から水もほとんど吸い上げません。

ベンケイソウ科の多肉植物の多くは中南米の高地、もしくは低地の種。夏は一日の温度変化でいうと40℃から夜は15℃まで下がる地域です。

第6話(前編)の光合成の話でも書きましたが、多肉植物は夜、太陽が沈んでから気孔を開き、二酸化炭素や酸素のガス交換や蒸散を始めます。ですので、夜いかに原産地の気候に合わせるかが重要です。

夜間に風を送って湿度を下げ、温度を少しでも下げることを工夫してあげさえすれば蒸し暑く高温な日本の夜でも元気にこえてくれます。「夏の陽射しが強すぎて葉焼けするのでシェード(日よけ)をしましょう。」よくインターネットの書き込みで見かけるフレーズですが、光量でいえば中南米の方が強いのは明確ですよね。

夜間に温度、湿度を下げられないと、蒸散できず新しい水を供給できなかったり、蒸散しているのに断水していたりすると葉の組織に水分が足りなくなり、光の影響をもろに受けてしまい葉焼けします。ポイントは夜間にあるのです。そのことを理解するとただただ光をシェードで弱めるという行為がナンセンスであるということに気づいてもらえると思います。

夏の多肉植物と上手につきあい、やがてやってくる冬の色を楽しみに、多肉ライフ送ってください!

 

関連記事

おすすめコラム