植物と人をつなぐもの 第5話(前編)|花を咲かせるのは過酷な大地で生きるための大切な営み。丁寧に時間をかけて受粉のチャンスを待っているのです。

TOKIIRO(トキイロ)さんの連載、第5話は多肉植物の花のお話です。ときに鮮やかな大輪を咲かせて、私たちをあっと驚かせてくれる多肉植物。その神秘をトキイロの近藤義展さんが解き明かします。

撮影・文:TOKIIRO(近藤義展)

植物のキラキラした新芽が季節の移り変わりに色をつけています。多肉植物も冬の紅葉が徐々に夏カラーに変化しはじめる今頃は、花芽もついて、多肉を並べた棚も華やいでいます。


▲花芽の準備を始めたラウイ(エケベリア属)。


▲朧月(グラプトペタルム属)。グラプトペタルム属の花の特徴でもある星型。

 

多肉植物は彼らの時間サイクルで咲く

多肉植物が紅葉・黄葉することにビックリされる方がいらっしゃるかと思いますが、花も咲くんですよ。小さな可憐な花が。すべての個体が一年草の様に毎年咲くわけではないですが彼らの時間サイクルで咲きます。それは半年ごとかもしれないですし、一年ごとかもしれないですし、10年に一回、40年に一回、100年に一回かもしれないです。


▲七福神(エケベリア属)の立ち上がる花芽。

ベンケイソウ科のエケベリア属などは、葉そのものの形が花のようなロゼット状の多肉植物ですが、もともと自生している場所は地面に限りなく近い場所です。受粉受精で新しいDNAをつくり、それを媒介者に見つけてもらう必要があるため、花芽を伸ばすと考えられています。


▲銀明色(エケベリア属)。花芽を高く伸ばして存在をアピール。

咲き始めると一気にすべてのつぼみを咲かすのではなく、一つ一つ丁寧に咲かせながら時間をかけて受粉のチャンスを待ちます。


▲カネイ(グラプトペタルム属)。

 

受精の機会を増やすため、クローンをつくることも

けなげに花を咲かせはするけれど、植物の生育に過酷な大地では、受粉受精の媒介者となる昆虫にとってもやはり過酷で、同じように絶対数が少なかったんですね。


▲月美人(パキフィッツム属)の花は鈴なりに咲く。

そのため、いつ訪れるかわからない受精のタイミングを待つために、葉や折れた茎から根を張り、新芽を出す方法で、花を咲かせることなく、個体をクローンでつないでいくように進化したのです。受粉がなかなかできないので、受粉のタイミングや確率を上げるためにクローンをつくるといわれています。


▲レッドイーグル(エケベリア属)。


▲秋麗(グラプトペタルム属)。冬には薄いオレンジに紅葉する耐寒性耐暑性がある品種。


▲エケベリア属の多肉植物。交配種のため、品種名不明。

後編では、多肉植物の花を咲かせるコツについてお話します。

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