植物刺繍と季節のお話 第9話(後編)|ウール刺繍のオーナメント

刺繍作家・マカベアリスさんが、めぐる季節のなかで出会った自然の景色や植物から刺繍作品ができ上がるまでをエッセイで綴ります。第9話・前編では山茶花の花をモチーフに、ウール刺繍のクリスマスオーナメントが3つでき上がりました。後編ではいよいよ全作品が完成します。

撮影:マカベアリス、奥 陽子(マカベさん) 作品制作・文:マカベアリス

冬の晴れの日は、空気が澄んでいるせいか、空が一層青く感じます。夏には瑞々しい緑の葉をいっぱいにつけていた木々も、紅葉し、やがて散り、枝を残すだけとなりました。

 

空に描かれた木々の枝アート

一見さみしい風景ですが、12月の澄んだ青空をバックにしてみると、それは繊細で時にユーモラスなアート作品のように見えるのです。

暑い時期に長い間、花を保っていた百日紅は、乾燥した実をところどころに残し、細かな枝を空に向かって伸ばしています。

人にはつくり出せないその繊細な線、陽に向かって伸びる微妙なカーブ・・・見ていて飽きることがありません。

花水木の枝は、よく見ると先端に赤い実をつけています。空とのコントラストが美しく、枝ぶりがなんとなくユニークです。

公園で空を見上げていると、さまざまな木の枝アートを見ることができます。

 

色褪せた花びらや枯れ葉を楽しむ

冬の公園では、他にもいろいろな発見があります。

初夏の頃に咲き、そのままドライになった紫陽花。ほどよく色褪せた花びらは美しく、光に照らされるとアンティークの宝石のようで、見つけたことを秘密にして、そっとしておきたいような気持ちになりました。

地面を覆うたくさんの枯れ葉。歩くとカサカサと、打楽器を叩いているような気持ちのよい音がして、楽しくなります。

日差しに向かって一心に、小さな葉を広げるクローバーからは、賑やかなおしゃべりが聞こえてきそうでした。

冬の季節にも変化する植物の姿に、しばし寒さを忘れ、心が温まりました。

 

クリスマスは一年を振り返るような気持ちに

12月も半ば、街にはクリスマスの装飾が溢れる頃となりました。

幼い頃から宗教的な感覚でクリスマスをとらえてきた私は、ロマンチックだのパーティだの・・・とお祭り騒ぎをすることに少々抵抗があるのですが、それでもデパートやスーパーなどで、クリスマスソングや賛美歌などが流れると、何にせよ祝福の時、喜びの時なんだなと嬉しくなるのです。

クリスマスが、12月という締めくくりの月ということもあって、必然的に一年を振り返るような気持ちになります。

今年は特にいつもとは違う大変な一年だったな。けれど嬉しいこともあったし、久しぶりにあの人の元気な顔も見る事ができた。辛かったことや、未だ解決できない問題もあるけれど・・・。

空を見上げるとふと思うのです。神様はどんな思いで私たちを見ているのだろうと。

生きていると山も谷もあるけれど、こうしてこの世に生かされている事自体が祝福なのかもしれない。そのことを喜び、感謝する時がクリスマスなのかも・・・と。

 

温かみのあるウール糸は、冬になると使いたくなる

前回に引き続き、ウール刺繍のオーナメントをつくりました。

寒い季節になると、やはり温かみに惹かれ、この時期はよくウール糸で刺繍します。私が好んで使っているウール糸はアップルトン社のクルウェルウールです。

太すぎず、細すぎず、適度な刺し心地で、25番刺繍糸と同じ感覚で使えます。ただ注意すべき点は、ウールという特性上摩擦に弱いので、長くても70㎝ほどに切って使うこと、針はフランス刺繍針よりも、シェニール針(リボン刺繍用針)を使うこと。以上を守ればふんわりと優しいふくらみのあるステッチを刺すことができます。

10個作って並べたら、もみの木のようになりました。

こんな風にトレイに並べてリースのように見立てても。

毎年ツリーを飾りつけてクリスマスをお祝いしていた我が家も、子ども達の成長とともに出すことはなくなっていました。今年はこのオーナメントを壁に飾って、嬉しいクリスマスの時を迎えたいと思います。

 

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