1冊の本にするときに考えたこと|編集後記 第2話

『植物刺繡と12か月のおはなし』の編集後記2回目は、フリー編集者・須藤敦子さんがマカベアリスさんの連載を書籍にするために、どう編むかと思案し、定石にとらわれないものづくり、本づくりに徹する一端をお伝えします。

撮影:マカベアリス、清水美由紀、奥 陽子(マカベさん) 文:須藤敦子、つくりら編集部

本当にありがたいことに、つくりらでの連載、「植物刺繍と季節のお話」の書籍化が決まり、1冊の本として再構成することになりました。

1か月に1作品のペースで作品を紹介していたので、連載に登場した作品は全部で12点。1冊の書籍にまとめるとなると、もっともっと作品点数が必要になります。全体のページ構成を考え、各月に2作品ずつ新規で作品をつくってもらうことになりました。

刺繍の本は、本を購入してくださった方が、本を見ながらきちんと刺せること。それが大前提の実用書です。作品写真と図案がきっちり載っていることが大事で、むしろ、それだけあれば十分なのかもしれません。しかし、今回の本は、そういった「実用書」の側面だけでなく、マカベさんの自然を慈しむ心が伝わる読み物の要素も加えたいと考えていました。

マカベさんが1年にわたって連載で綴ってくれた季節のお話。その内容も盛り込んで、刺繍作品が季節の変化と足並みをそろえて、ゆっくりでき上がっていった様子も伝えられたら……。

実用面と読み物がしっくりと1冊にまとまった本。そんな欲張りな思いを持っていたので、絵づくりから一緒になって、ぐいぐいとディレクションしてくれるデザイナーが必要です。わたしは以前『La vie a la Campagne ジャムとパンのオリジナルレシピ』の本でご一緒させてもらった福間優子さんにその願いを託しました。

刺繍の実用書の場合、口絵と呼ばれる作品紹介ページは、ハウススタジオを借りて、スタイリストとカメラマンで一気に撮影していく、という方法をとることが多く、わたしも最初、そのつもりで福間さんに相談しました。

いろいろと候補を出し合った打ち合わせの帰りぎわ、福間さんは、「この本はそういうつくり方じゃないほうがいいと思う」と言いました。そう、わたしも福間さんも、「通常のやり方」ではピンとこなかったので、なかなか候補が出てこなかったことに気づきました。

たとえばロードムービーみたいに、いろんなところで作品を撮っていくとか。その場所の空気感も一緒におさめていくような……。わたしたちは、定石どおりの発想からいったん外れて想像をめぐらせました。

マカベアリスさん 空想植物の小さなバッグ

フォトグラファーの清水美由紀さんなら、そんな写真を撮ってくれるかもしれない。清水さんにマカベさんの作品をまるごと受けとめてもらい、彼女の感性で撮影してもらえたら……。

マカベさんや版元さんにも賛同してもらい、清水さんの活動拠点である松本でロケをすることになったのです。

東京から遠いけれど、ぜひマカベさんにも立ち会ってもらいたい。半分ダメ元で相談すると、「ぜひ!立ち合います」と、夢のようなお返事。こうして撮影が始まりました。

Instagram:@tsukurira0714

【書誌情報】
『植物刺繡と12か月のおはなし』
著者:マカベアリス『植物刺繡と12か月のおはなし』

「つくりら」で、昨年1年間連載された人気エッセイ「植物刺繍と季節のお話」で発表したポーチやバッグなどの小物作品12点に、リースやサンプラーの新作23点を加えた全35作品を掲載。
4月から始まって3月まで、12か月の季節の移ろいや草花、風景を切り取り、刺繡で表現。全作品の実物大図案と作り方を紹介しています。電子版でも図案のダウンロードができます。
マカベさん自身が季節の中でどのように題材を得、どのようにそれを形にするかを垣間見ることができ、オリジナルの刺繡作品制作のヒントがたくさん詰まっています。エッセイで紹介された季節のモチーフをデザインする過程や、布の素材や糸の色選び、刺し方のコツ、などについても、ポイントを押さえて収録しています。

おすすめコラム