カミキィさん(前編)|色や柄を選んで折って、飾って贈って楽しんで。試行錯誤しながら生み出す、オリジナルのおりがみ作品

カミキィさん(前編)|色や柄を選んで折って、飾って贈って楽しんで。試行錯誤しながら生み出す、オリジナルのおりがみ作品

YouTubeチャンネル登録者数12.7万人、Instagramフォロワー2.8万人と、大人気のおりがみ作家・カミキィさん。新著『和テイストで楽しむ カミキィの か和いい季節の おりがみ』(日本文芸社)も話題になっています。今回はそんなカミキィさんに、おりがみにハマったきっかけからおりがみの魅力、本づくりや動画づくりのエピソードまで、たっぷりとインタビュー。前編・後編の全2回でお届けします。

撮影:鈴木江実子  文:酒井絢子

「折って飾って贈って・・・と、おりがみは楽しみ方がいっぱいある」というカミキィさん。折るだけでも楽しいおりがみを、さらに暮らしの中に取り入れる提案が豊富で、大人たちにも大人気です。徹底的にオリジナルにこだわり、次々と新作を発表しては話題を呼んでいるカミキィさんですが、そのルーツは縫い物や編み物などの手芸にあるようです。

 

大好きな手仕事だからこそ、続ける理由を探して

小学生の頃は、当時流行っていたフェルト人形の本が大好きで、つくり方を見てはマスコットを縫っていたそう。ちまちまとした作業がその頃から好きだったと言いますが、その後は特に手芸に親しむことはなかったそう。

そして社会人になってから、とあるあみぐるみ作家の本を手にしたことをきっかけに、あみぐるみづくりに夢中になり、手を動かすことで仕事のストレスを発散するように。あみぐるみ以外にも、お花やクローバーなどのモチーフをつけたヘアゴムなどのアクセサリーをはじめ、バッグやポーチなどの布小物をつくっていたことも。

▲読書の秋にぴったりな、「きのこのしおり」。YouTube動画再生数100万回越えの大人気作品「ねこのしおり」同様、実際にしおりとしてそのまま使うことができる。かさの部分が丸いのが「まつたけ」、広がっているのが「エリンギ」。

そのうちに雑貨店で委託販売を始め、ちょうど時代もハンドメイドブームに。しかし、「つくることが楽しくて続けていた制作活動ですが、これといって個性のない自分の作品に徐々に自信が持てなくなっていました」とカミキィさん。売るために作品を量産する、という作業にも限界を感じ、いつの間にか「つくること」にさえ全く楽しさを感じられないようになってしまい、ついには手づくりからは遠ざかるように・・・。

▲季節に合わせ、作品を組み合わせて作ったリース。上は「1月のリース」、下は「9月のリース」。ニット小物や布小物を制作していた頃、色や柄の組み合わせを考えるのが楽しかったと振り返るカミキィさん。「その点は、おりがみ作品の組み合わせを考えてリースをつくる楽しさと通じるところがあるかも」

 

ひょんな出会いから、おりがみの世界へ

手づくりから遠ざかり、パート仕事と家事育児を続ける日々の中、近所の公園でたまたま出会ったボランティアの「折り紙おじさん」。子どもたちに教えてくれるのは大変ありがたいけれど、教えてくれる作品がいつも同じであることに気がついたカミキィさんは、もっと子どもたちが喜ぶような他の作品を…とネタ探し。それがおりがみ作家になるきっかけとなりました。

初めてオリジナルで折り方を考案したのは、知り合いの方が考案したキャラクターの「うし」。

「その折り方を考えるときは、朝起きてすぐ折る!くらいの情熱がありました(笑)。どうやったら耳とツノの角を出すことができるだろう、と。折って表現できた時は難解パズルを解いてスッキリしたような感覚でした」

▲おりがみ1枚で作れる「ちょうちょふうとう」は、ポチ袋にしても。カミキィさんの作品には、しおりや封筒、ポケットになっていたりと、飾りとして使えるだけでなく実用的なものも多い。

そして、つくりたい形になるように考えながら折る、という楽しみも知るようになり、ますますおりがみにのめり込んでいったのだそう。

「おりがみにはいくつかベーシックな形があり、『基本形』と呼ばれています。例えば折り鶴をつくる途中の形は「鶴の基本形」。最初の頃はそういった『基本形』から色々と折ってみて何かの形に見えてきたら、さらに発展させてつくることが多かったです」

作品づくりを続けながら、動画やブログで発信しはじめたのが5年前。今ではYouTubeチャンネル登録者数12.7万人、Instagramフォロワー2.8万人という大人気作家です。

 

頭をひねってあれこれ折って、イメージを形に

▲季節によって色や飾り方を変えることで、さまざまなシーンで使える「きく」をご祝儀袋に。「折るだけ」で凹凸を表現するのはとても難しい。「オリジナル作品をつくり始めた頃は特に、切らずにつくることにこだわっていたので今より難易度が高い作品が多いです」

新たな作品をつくるときは2つのパターンがあるのだそう。ひとつは「このモチーフがつくりたい」とその形になるようにあれこれ折ってみるというパターン。もうひとつは特に何かをつくるというわけでもなく折っているうちに何となく何かの形になってきて作品ができ上がるパターン。

「動物をつくろうとしていたのにお花ができた、なんていうことも。アイデアスケッチを描くこともたまにあります。イメージ通りにつくれたときは嬉しいですね」

初めて生み出す作品は、試作ができた直後で折り手順を覚えているうちに同じものをもうひとつつくり、その2つを保存。「ひとつだけだと開いてから元に戻せなくなることもありますので・・・。試作をした後日に改めてつくってみると、全然折り方を覚えていなくて『こんな折り方よく思いついたなあ』なんて自分で思うこともあります」

▲桜の花びらが角にあしらわれた、箱型の立体作品。「おりがみで立体的につくるのは、平面よりも難しい!立体の動物などを創作される方、尊敬します」

オリジナルのおりがみ作品づくりを始めたことで、ふだんの暮らしの中でも「おりがみのモチーフになりそうなものはないか」と周りを見るようになったというカミキィさん。同時に、世間で今求められているものは何かという視点も持つようになったそう。

「季節の飾りに使えるモチーフはもちろん、例えばコロナ禍では学校などの施設でマスク着用を促すための掲示に使えるようにと『マスクをつけたうさぎとねこ』の作品をつくったりもしました」

人気作家として、多くの人に受け入れられる作品を生み出し続けるカミキィさん。後編では、新たにたくさんのオリジナル作品が掲載された著書『和テイストで楽しむ カミキィの か和いい季節の おりがみ』(日本文芸社)の制作エピソードや、YouTube動画作成にまつわるお話などを伺っています。

 

おすすめコラム