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絹糸で刺繍する(前編)|京都の老舗糸屋「糸六」女将の挑戦。刺繍作家atsumiさんとのコラボレーションバッグができるまで。

絹糸で刺繍する(前編)|京都の老舗糸屋「糸六」女将の挑戦。刺繍作家atsumiさんとのコラボレーションバッグができるまで。

昨年7月「つくりら」立ち上げ時に取材させていただいた、京都の老舗糸屋「糸六」さんが、刺繍作家atsumiさんとコラボレーションする・・・。ワクワク感いっぱいのワークショップの告知をしたのは5月のこと。その翌月に行われた「絹糸でぬりえをするように刺繍する糸六ミニトート・ワークショップ」、つくりらで取材させていただきました。その様子を前編、後編、2回にわけてご紹介します。前編は、京都の老舗糸屋に、絹糸で刺繍が楽しめるオリジナルトートバッグが生まれるまでのお話です。

撮影:石川奈都子  取材・文:平岡京子  協力:糸六株式会社

創業明治4年。京都の老舗糸屋「糸六」

京都市下京区、呉服で知られる室町通りのほど近くに、明治4年創業の老舗糸屋「糸六」はあります。昔ながらの京都の商家の趣きをそのまま残した社屋、その暖簾の奥では、長きに渡って変わることなく、独自の京都らしいはんなりとした色彩で染め上げた160色の絹糸を全国に向けてお届けして、着物や手工芸にまつわる多くのものづくりに愛用されてきました。


▲糸六の歴史と共に歩んで来た糸巻き機。各部品には昔ながらの竹や木材が使われ、いくつもの糸巻きがからからと回り出すと、とても色鮮やかで美しい光景が広がる。

 

社屋2階に集いの場、「六治郎庵」が誕生

これからの時代に、より愛されて、求められる糸とはどんなものか――現在の5代目当主、今井登美子さん、そして今年、6代目となることが決まった長男の春樹さん親子は、これからの糸六の有様を思い描きながら動き始めます。そのはじめの一歩となったのが、糸六の社屋2階に京都の文化や手工芸を愛する女性たちが集う場をつくることでした。

歴史ある建物の佇まいはそのままに、2階に誕生したスペースは、現在の糸六の形と精神をつくり上げた三代目当主、今井六治郎に由来して「六治郎庵」と命名されることになりました。

 

糸屋の女将、初めてのチャレンジ

絹糸の新たな魅力や可能性を見出し、これまで以上に多くの方に感じていただきたい。そう思い続けていた頃、今井さんはとあるトークショーに足を運びます。そこで出会ったのがatsumiさんでした。アパレルや幅広い商品開発などで培った独自のセンスの作品で注目を浴びている新進気鋭の刺繍作家です。


▲糸六の小上がりで、糸を選ぶatsumiさん(右)と女将の今井登美子さん。「私がふだん使っている綿の刺繍糸とは、色も艶感も全く違いますね」とatsumiさん。「京都らしいはんなりした色を揃えていますから、atsumiさん好みの色選びを楽しんでくださいね」と今井さん。

atsumiさんのお話を聞き、そこで開催されたワークショップの様子を見学した日、今井さんは「この人だ!」と思ったのだと話してくれました。ワークショップなど一度も開いた経験のない糸屋の女将さんが、ものづくりのプロのatsumiさんとコラボレーションする――そんな初めてのチャレンジを決心した瞬間でした。

今井さんは右も左も分からないまま、がむしゃらにatsumiさんにアプローチ。atsumiさんは今井さんの気持ちに打たれて、京都の糸六を度々訪れては今井さんと語り合い、絹糸に触れ、色彩を感じ、糸巻き機などの伝統的な道具のある仕事場などを見学。各種の絹糸を持ち帰って、忙しい日々の中でふだん使っている刺繍糸とは全く違う、絹糸を素材とした刺繍にチャレンジしてくれていました。


▲創業時から大切に使われてきた機械が並んだ仕事場。「こんな風に絹糸を巻いてきたんですね!」と、とても楽しそうなそうに糸巻き機を見つめるastsumiさん。その姿を見ていた今井さんは、「atsumiさんは本当に糸がお好きなんだと感じて、とっても親近感を覚えました。きっと何か楽しいことが始まると、ドキドキしたんですよ」と話してくれた。

 

初心者でも刺繍が楽しめる「素材」としてのバッグ

ほどなくして、atsumiさんから糸六さんに提案がありました。それは、こんなこと。

「せっかくですから、長年愛されてきた糸六の絹糸を使った新しいセンスの刺繍が楽しめて、京都の趣きも感じられるようなデザインを考えたいと思います。手芸バッグとしても、京都のお土産としても、日々持ち歩いても楽しいオリジナルのバッグをつくりましょう」。

この日から、本当の意味で、糸六さんとatsumiさんのコラボレーションが始まりました。このバッグが完成したら、それを素材に絹糸を使った刺繍のワークショップを行うということが、みんなにとっての大きな目標になったのです。

atsumiさんが糸六さんとコラボレーションする上で最も大切にしたのは、このバッグが本来は刺繍のための素材であるということ。初心者の方がたとえ1ポイントしか刺繍できなくても、それが絵になるようなデザインにしたいと考えました。図案の中に文字が多く含まれているのは、初心者の方にとっても刺繍しやすい直線部分を増やすための工夫なのだそう。

また、図案を写す作業は苦手な方が多いので、プリント自体がそのまま素敵なデザインになるように配慮してデザインをしたというatsumiさん。細やかな心配りに感心させられました。

後編では、老舗糸屋「糸六」× 人気刺繍作家atsumiさんによる、「絹糸でぬりえをするように刺繍する糸六ミニトート・ワークショップ」の様子をご紹介します。ワークショップ当日の様子や、atsumiさんのレッスン風景、糸六さんの美しい絹糸のことなどをお話します。お楽しみに。

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