「テキスタイルの箱舟」 テキスタイルデザイナー・押鐘まどかさんのコレクションプロジェクト 2017.9.15(Fri)-27(Wed)

写真協力:CASE GALLERY 取材・文:つくりら編集部

あるときは肌に触れて体に纏い、あるときは空間をしなやかに彩る。
布は、私たちの暮らしのなかで、私たちと一緒に呼吸している愛おしい存在です。

その魅力に取りつかれて、染めや織りを研究している作家やデザイナーは少なくありません。今回、ご紹介するテキスタイルデザイナー、押鐘まどかさんもそのひとり。

東京・代々木八幡の「case gallery」で、9月15日から始まった押鐘さんのエキジビションのタイトルは、「テキスタイルの箱舟」。こちらのイラストレーションがメインビジュアルです。

イラストには、舟にたくさんの動物が。そう、これは旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」をイメージしたもの。押鐘さんはそのコンセプトを、こんなふうに語ります。

「『テキスタイルの箱舟』は、ノアが様々な種を載せて大洪水を乗り切ったように、テキスタイルのクリエーションに関する諸々の種をギューっと詰めて出航しました。各産地の素材、工場独自の技法を羅針盤に、アイディアという航路を練り、新しい表現を求めて試作という【航海】を続ける全10 回のサーフェイスコレクションプロジェクトです」

その第1回目の“寄港先”が、case gallery。これから年1回のペースで、まずは10年間、「テキスタイルの箱舟」を続けていきたいそう。長い、長い、一大プロジェクトの幕開けです。

記念すべき初回に、箱舟から選ばれた動物は、シカとゾウ。こちらが、シカのテキスタイル。オレンジとグレイの2配色です。

リネンウールガーゼの生地に、水玉模様。この水玉を、押鐘さんはシカの斑点と見立てました。

会場には、この生地の着想時のプロット(原型)も展示。最初はいつも手作業で1つつくってみるのだそう。

「プロットは、そのままでは1点もの。これをどのように生地として、ある程度の量を製造できるものにするかを考えていきます」

試行錯誤の結果、麻とウールで織った生地に、原毛のフェルトをニードルパンチでつけていく生地づくりを考案。でも、それだけでは済まされず、原毛をパンチしたところを、手でひとつずつ絞り、てるてる坊主のような形にして、地色とは異なる色でもう一度染める。すると、“坊主頭”のてっぺんは染まらず、その周辺だけが2度目に染めた色に染まり、生地全体にもその色が加わり、より深みのある表情が生まれます。

よく見ると、1つ1つの“坊主頭”の表情が違っています。縁どりの色でぐるりと囲まれたもの、申し訳程度に色がついたもの。まさにそれは、シカの斑点よろしく、偶発的な“自然の摂理”に委ねられ、のびのびと生地いっぱいに広がっています。

そして、こちらがもうひとつの動物、ゾウです。

こちらはリネン。ぼたん雪が舞っているようにも、たゆたう水草のようにも見えるオーガニックな模様、近づいて触れてみると、これはなんと紙です。しかもゾウの皮膚のようにシワシワしています。

「生地は3色でプリントしているのですが、そのなかの1色にだけ、上から和紙を張り込みます。その後、プリントされていない部分の和紙を洗い落としています」

ゆるく織られたリネンは透け感があり、光りを誘います。吊干しで乾燥させたという生地は、自然なシワができていて、絶妙なニュアンス!

スカーフにしたり、ワンピースにしたり。身に纏っても素敵だし、カーテンやパーテーションなどとして毎日の空間に迎え入れたら、布そのものを贅沢に、たっぷり堪能できそうな気がします。

毎回、2種類の動物を選び、2柄2配色で展開するというこのプロジェクト。1年に1回、10年続けたら、20種類の動物に、40ものの生地が誕生します。大海原に漕ぎ出したばかりの大プロジェクトに、こちらまでワクワク。

「テキスタイルの箱舟」に乗った動物たち、第2回目はどんな動物が登場するんでしょう? 会場で見つけた動物のブローチに、そのヒントがあるのか、ないのか――。

 

期間:2017.9.15(Fri)-27(Wed)
土日祝日:11:00〜19:00、平日:13:00〜18:00 *月曜定休(祝日の場合は翌日)会場:CASE GALLERY
渋谷区元代々木町55-6
入場無料

問い合わせ先:CASE GALLERY mail@casedepon.com
http://casedepon.tumblr.com

おすすめコラム