青木恵理子さん(前編)|太いから早く編める。ズパゲッティの糸が編み物を始めるきっかけや入り口になったら、すごくいいこと!

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青木恵理子さん(前編)|太いから早く編める。ズパゲッティの糸が編み物を始めるきっかけや入り口になったら、すごくいいこと!

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手編みのバッグを自分でつくってみたい―そんな願いを叶えてくれたのが、手芸作家の青木恵理子さんでした。これまで発表したバッグのデザインは数えきれないほど。“編むバッグ”の第一人者、青木恵理子さんに、手芸作家になったきっかけや編み物の魅力についてお話を伺いました。前編・後編、2回にわけてお届けします。

撮影:奥 陽子  取材・文:庄司靖子  協力:ハイジ

青木恵理子さんにお話を伺うためお邪魔したのは、東京・中目黒にあるハンドメイドの雑貨と手芸材料のお店「ハイジ」さん。そこで行われていたのは、著者本『ズパゲッティで編むバッグと雑貨』の作品展です。

 

バリエーション豊かなズパゲッティのバッグ

店内に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、著書に掲載されていた作品の数々。ちょっとお散歩するときに持ちたくなるようなミニバッグから、よそ行きのクラッチバッグや実用的なバスケットまで! さまざまなバリエーションのバッグや雑貨がにぎやかに空間を彩っています。

さっそく青木さんにお気に入りの作品を尋ねてみると、「スクエア底のコンビバッグ」、というお返事が。これは棒針で編んだズパゲッティの編み地とニット地を合わせたデザインで、編み物と縫い物、両方の要素が入っています。

「試してみたいデザインやテクニックを1~2点入れることができるのが著者本のいいところですね」というように、ズパゲッティの作品ではあまり見かけないデザイン。青木さんらしさが表現されている作品のひとつです。

こちらが著者本『ズパゲッティで編むバッグと雑貨』。取材の日は、表紙の水玉模様のミニバッグのワークショップの開催日、午後から生徒さんがやってくるそう。

玉編みで水玉模様を表現したミニバッグは、色違いで欲しくなる可愛さです。

麻ひもやリネンなどを編むことが多い青木さんは、ズパゲッティのような太い糸は、依頼がなければ編まなかったかもしれないと言います。「でも、この糸の果たした役割は大きいですね」


▲こちらはテープ状にアップサイクルされた糸、Hooked RIBBONXL(フックドゥリボンXL)。ズパゲッティと同様に裁断した生地の残りを使用しているが、細かく裂いて紡ぎ直している。ズパゲッティに比べて軽量。

 

太い糸は早く編める。だから人気になった、と実感

ズパゲッティが日本に入ってきたとき、「ハイジ」店長の藤永さんから「サンプルを編んでほしい」と頼まれました。それが青木さんとズパゲッティのつきあいの始まりです。

「編み物は時間がかかりますよね。だからこそ、早く編める太い糸は世間に受け入れられたのではないかと感じています。この糸が編み物を始めるきっかけや入り口になったらすごくいいことですし、編み物が楽しい、と思ってくれたら嬉しいです」

太い糸と針で編むときはかぎ針を握るように持つという青木さん。糸のタイプによって持ち方を変えています。

 

シンプルで飽きのこない“青木デザイン”の秘密

青木さんは服飾系専門学校で、デザインと縫製全般を学び、卒業後はアパレルメーカーに就職しました。販売を経験したあと、パタンナーやデザイナーのもとで働きましたが、「自分はトレンドを発信する側じゃない」と気づきます。

「早く次の季節の服を着たい、新しいデザインを試したい、という気持ちが起こらないんです。それは気候的な意味ではなく、流行を追いたいという気持ちがないということなんですね」と青木さん。「もちろん、流行は気になりますし、振り回されてますよ(笑)。今の時代の空気を感じてはいます。ただ、定番なものが好きなんです。そして好みがあまり変わらないんです」

そんなお話を聞いて、青木さんのつくるものが、シンプルで飽きのこないデザインである理由がわかったような気がしました。

 

雑貨店勤務、そして手芸作家へ

アパレルメーカーを退職した後、雑貨店で働き始めた青木さん。実は「ハイジ」のオーナーである藤永さんは、その雑貨店に勤務していたときの職場仲間です。


▲雑貨店勤務時代からのつき合いである青木さんと藤永さん。青木さんが初めて個展を開いたのも、藤永さんの雑貨店「ハイジ」だったそう。

同じ店で働く先輩後輩という間柄だったふたり。「いつかは雑貨ショップを開きたい」と、夢を追いかける藤永さんの傍らで、青木さんもまた、忙しい日々の業務の合間を縫って、“雑貨をつくって販売する”、という試みを始めていたのです。

当時の青木さんの作品は縫い物がメインでした。裂き布を使ってコースターの縁編みをしたり、編み機でバッグをつくったり。やがて、勤めていた雑貨店の店長に「ものづくりに集中しては」と背中を押してもらい、手芸作家としての第一歩を踏み出すことになりました。

 

麻ひもでひらめいた、“編むバッグ”

これまでたくさんの“編むバッグ”を提案してきた青木さんですが、当初はなかなか気に入ったものがつくれなかったそう。写真のバッグは、試行錯誤を繰り返しながらようやくたどり着いた、今、最も気に入っている作品。素材はマニラヘンプの細いタイプです。

そもそも最初にバッグを編んだきっかけはどんなことだったのでしょう。

「ヘレン・カミンスキー(オーストラリアのファッション・アクセサリーブランド)が日本に上陸したとき、バッグを買ったんです。それがとても気に入っていてずっと使っていたのですが、あるときふと、これは編めるんじゃないかな、って思ったんですね。手で持つタイプのバッグが欲しくて。ところがいざラフィアを探してみると、1.5メートルくらいの束しかない。それもお花屋さんくらいにしか置いてなくて・・・。そこでナチュラルテイストのバッグのイメージで素材を探していたら、家で麻ひもを見つけたんです」

これはいけるかもしれない。そう直感した青木さんはさっそく麻ひもでバッグを編んでみました。すると思いのほか評判がよく、初めて開いた個展で並べてみると、即完売。雑誌でも紹介され、青木さんの麻ひものバッグは飛ぶように売れました。当時はバッグの編み図も本もありません。青木さんはまさに、編むバッグの先駆者といえるでしょう。その後、出版社から麻ひもバッグの本を出すことになり、手芸作家として、本づくりにも関わっていくようになりました。

後編では、青木さんの編み物やソーイングへの思いについてお話を伺っています。取材日に開催されていたワークショップの様子もちらりとお見せしています。

 

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