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手づくりは冒険。雅の世界に心を遊ばせて

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撮影:masaco  文:太田明子

このところ、めっきり和の世界に傾倒しています。日本の魅力に今更気づくなんて、年齢のせいでしょうか。それとも古都に暮らしているからか。

仕事やプライベートで、七つの海を渡るように旅してきましたが、たどり着いたのは、原点回帰。ふるさとに似た海沿いの町に家を建てました。そこで季節を感じ、日本古来の慣習をたどりながら、できることを少しずつ踏襲しています。お盆やお彼岸、お正月のしきたりなど、生まれた国で先祖の風習を守る生活は、あたり前のことにようやく追いついたようで、ひと心地ついています。

旅や行事に伴い、雑貨も増えました。集めた国内外の家具や織物、アンティークの大半が、手仕事によるもの。想い出がよみがえるだけでなく、作品に費やされたであろう多くの時間とエネルギーに想いを馳せ、改めて自分の生き方を省みて気を引き締めたり、励まされ、なぐさめられたりしています。

買ってきたお気に入りを眺めていると、丹精込めたものの愛おしさに気づかされ、自分でも手をかけ時間をかけてつくってみたくなります。

たとえば、てまりを使ったネックレス。

寒色・暖色といいますが、色に温度があるみたい。水色と白は、いかにも涼しそうな取り合わせです。『宝石みたいなてまりとくらしの小物』(寺島綾子著)に、そのつくり方が詳しく載っています。同書の特色は、伝統ある加賀てまりを宝石に見立てて小物を仕上げている点。雅な世界にジュエリーを引き込むとは、まさに和洋折衷の遊びゴコロ。双方のいいとこ取り!

こんな小さな球体ですが、ひとたびつくってしまうと、取り付ける金具やパーツによって、ブローチやリングなどに七変化。配色しだいで華やかにもおとなしくもでき、自在な表情を醸します。

「どんな鳥も想像力より高く飛べる鳥はいない」

これは寺山修司さんの言葉で、思春期の頃から私の心の引き出しにあり、時おりそっと取り出しては原動力にしてきました。

さて、どんな服と合わせようか、それとも帽子やバッグ、インテリアの装飾品にしましょうか。完成を予想する。そこからすでに一人旅の冒険。想像の翼を広げて空を羽ばたくようなものです。

あなたなら、どんな空を飛びますか。

写真は『宝石みたいなてまりとくらしの小物』より

参考文献:『ロング・グッドバイ』(寺山修司著 / 講談社文芸文庫)

 

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