ささきみえこさん(前編)|ノスタルジックな気分で楽しみたい、刺繍×フェルトの幸運モチーフ

ささきみえこさん(前編)|ノスタルジックな気分で楽しみたい、刺繍×フェルトの幸運モチーフ

刺繍をはじめ、彫刻、版画、イラストと多方面で活躍されているささきみえこさん。その多才さの秘密を探るべく、お話を伺いました。前編では、9月に上梓したばかりの著書『フェルトで作る 世界のお守りチャーム』にまつわるエピソードや、ささきさんがものづくりをはじめたきっかけをお伝えします。

撮影:奥 陽子  取材・文:酒井絢子 撮影協力:Maison de Chapeau* Ulala Koroku

今年9月に発売されたばかりの『フェルトで作る 世界のお守りチャーム』には、ささきみえこさんがデザインしたユニークな作品がぎっしり詰まっています。

 

世界各国のチャームをフェルトで表現

長くおつき合いがあるという編集者から、世界のお守りチャームをつくってみないかと依頼を受けた際は、まず驚いてしまったというささきさん。刺繍作家として図案本を手がけたり、カルチャーセンターでの刺繍講座を受け持っていたりはするけれど、フェルトを使った作品は今まで仕事として請け負ったことがなかったそう。


▲今回の撮影は、ささきさんの友人でもある帽子デザイナーUlala Korokuさんのギャラリー、東京・大岡山の「Maison de Chapeau* Ulala Koroku」で行われた。

「でも子どもの頃によくマスコットをつくったりはしていたんですよね。あの頃もフェルトで形をつくって、綿を入れて・・・。懐かしい感じが蘇ってきたと同時に、今になってフェルトに刺繍をすることがとても新鮮に感じられました」

本に掲載されているお守りは29種類。動物がモチーフになっているものもあれば、幾何学模様や古くから伝わる精霊の姿が刺繍で描かれたものも。いずれもささきさんが自由にデザインし、チャームとして仕上げています。


『フェルトで作る 世界のお守りチャーム』(日本文芸社)。さまざまなデザインのチャームが表紙を賑やかに飾る。

どの作品も鮮やかな色づかいで、目を引くものばかり。気軽に縫い始められそうな感じも魅力です。

「フェルトは比較的手に入れやすいサンフェルト株式会社のものを使用しています。色に限りがある中でどう組み合わせて可愛く仕上げるか、けっこう悩みましたね。刺繍糸も最もメジャーなディー・エム・シーのもの。糸はこの本に限らず、ほかの刺繍作品でもほとんどディー・エム・シーを使っています」


▲掲載されたお守りチャームをずらりと並べて。「ヘビとりんご/インド」のヘビや、「ヒイラギリース/イタリア」などに、普段の刺繍では使うことがないスパンコールを使うのが面白かった、とささきさん。


▲「ココペリ/アメリカ」はアメリカ先住民が崇める精霊「ココペリ」がモチーフ。「ココペリ」のお人形だけのマスコットにはピンとこなかったため、楕円形のフォルムに幾何学模様を合わせることに。


▲「ココペリ/アメリカ」の裏側は、ネイティブアメリカンらしさをイメージした、オリジナルのデザイン。

 

手芸の楽しさは、祖母から受け継いだ

ささきさんがものづくりに芽生えたきっかけは、お祖母さまのセツさんとの時間。編み物や縫い物の基礎を教えてもらったそう。

「小学校に上がる前の頃、よく祖母と一緒に過ごしていて。お互いたっぷり時間があったので、いろいろな技法を教えてもらいました。一緒にぬいぐるみの服とかを編んだり。実はそのぬいぐるみの服がまだ残っていて、我が家の末っ子が自分のぬいぐるみに着せているんですよ」

3人姉弟のお母様でもあるささきさん。上のお子さん2人は残念ながら手芸にはあまり興味を示さないそうなのですが、下のお子さんは「一緒になんかつくろうよ」なんて言ってきてくれるときもあるのだそう。


▲こちらはささきさんのご長男のお気に入りで、愛用のリュックにもつけているという「ファティマの手/モロッコ」。


▲キリストの人類に対する愛の象徴の心臓がモチーフとなっている「コラソン/メキシコ」。フェルトと刺繍の組み合わせがつくっていて楽しかったとささきさん。


▲枕元に飾るとよいとされている「ドリームキャッチャー/アメリカ」。部屋の雰囲気を一新してくれそうな大ぶりのオーナメントチャーム。

 

洋服づくりや染色にも挑戦してみたい

刺繍やイラストも手がけ、彫刻や版画での表現も続けているささきさんの現在は、刺繍の仕事の依頼が最も多くメインになっているそう。こんなに忙しくなるとは予想していなかったと言います。


▲サインペンで描いたイラストの上に動物モチーフの作品が生き生きと並ぶ、イメージページ。どういう風景にするかは編集者と相談しながら決めていったそう。


▲「刺繍の紹介」ページに掲載されたステッチ見本。『フェルトで作る 世界のお守りチャーム』掲載作品は、7パターンの縫い方でつくることができる。

「書籍そのものが好きなので、手芸本をつくるのは楽しいですね。これからも、刺繍やイラストなどのジャンル問わず、本の仕事に携われたらいいなと思います」

今後時間が許せば何をされたいですか?とお尋ねすると、洋服づくりや染色にも挑戦してみたいと目を輝かせるささきさん。心の底からモノづくりが好きなのだということが伝わってきました。

後編では、多岐にわたる表現方法や、刺繍について詳しく伺ったお話をお届けします。

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