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PieniSieniさん(後編)| “かんたん・かわいい・安い”だけじゃない。とことんフェルトと遊んだら新しいクラフトアートに行き着いた!

PieniSieniさん(後編)| “かんたん・かわいい・安い”だけじゃない。とことんフェルトと遊んだら新しいクラフトアートに行き着いた!

前編ではPieniSieni(ピエニシエニ)さんがフェルト刺繍を始めたきっかけや、考案した技法などについてお伝えしました。後編では、フェルトの魅力や、コンテストに出品する意味、本に対する考えなどについてのお話をお届けします。

撮影:奥 陽子  取材・文:庄司靖子

多くの人が手づくりしやすいフェルトに注目

ブログにアップするためのハンドメイドレシピ――そこから始まったPieniSieniさんのものづくり。でも、なぜ「シートフェルト」を選んだのでしょうか?

「切りっぱなしOKで扱いがかんたんだから。また身近にあって手に入りやすいというのも大きな理由です。手づくりのサイトで求められる傾向を見ていると、かんたん、かわいい、安い、というのが人気のポイントで、フェルトはその要素にぴったりでした」

さらに、PieniSieniさんをとらえたのは、そのテクスチャー。「フェルトの質感って、身近で親しみやすくてどこか懐かしい、誰もがほっこりするものですよね。幼なじみみたいな感じです」

 

「初心者がつくれるもの」というお題に応えて

共著『フェルトでつくる かわいい花とスイーツ』では、初心者がつくれるもの、というのが本のコンセプトでした。PieniSieniさんは、自身の得意なフェルト刺繍はいったん脇に置き、フェルトに刺繍をせず、パーツを組み立てる簡単な方法を紹介。

「切りっぱなしのフェルトを立体的に仕上げる作品も私のスキルのひとつです。ご要望があればいくらでもアイデアを提供したい」とPieniSieniさんは言います。編集者や読者の声に耳を傾け、歩み寄る。そこには特定の技法に固執せず、柔軟な姿勢で作品制作に取り組むプロの顔がのぞきます。

『フェルトでつくる〜』は、花の種類別に作品を紹介した本ですが、じつは制作依頼があった段階では、こんなふうに3つのイメージで考えていたそう。

「左はグレーのダリアをメインに落ち着いた雰囲気。中央は大人の和テイスト。右はかわいい、がイメージコンセプトです」。思わぬ“隠しテーマ”を聞けて得した気分(笑)。ああ、こんなふうにグループにしても素敵なのね、と新たな発見です。

3月に出版予定の著者本では、落ち着いた色合いのフェルトを使用し、大人の雰囲気の作品が並ぶそう。「はっきりした色合いを好んで使ういつもの私とは違う作品をお見せできると思います」

 

日々生まれる新たな技法、斬新なデザイン

「ものづくりを始めてから何年か経ったとき、今年は最初にデザイン画を描いて最終目標を立て、計画的にものをつくることを訓練しよう、と決めたことがあったんです」

そう言って見せてくださったのが数々のデザイン画。それらはもはやスケッチというレベルを越えて、緻密に描き込まれています。まさにそのまま飾っておきたくなる “絵画”!


▲コンテスト出品作品の「秘密の花園」。「この作品ではありがたいことに金賞(文部科学大臣賞)をいただきました」


▲ビーズの首飾り「躍動」のスケッチ画と作品。

こちらはフェルト刺繍のバッグ「闇夜の華」のデザイン画。作品と見比べてみると、デザイン画が忠実に再現されているのがわかります。


▲左の刺繍バッグ「夢想の華」は、手づくりコミュニティサイト主催のコンテスト受賞作品。右がフェルト刺繍のバッグ「闇夜の華」で、美術公募団体のコンテスト入選。

「こういうアップリケの技法を使った平面的、あるいは半立体的な作品もつくっていきたいです」

 

コンテストへの出品は可能性への挑戦

PieniSieniさんはこれまで、創作活動をしながら、積極的にコンテストに作品を出品してきました。その受賞歴は数えきれないほどですが、一度賞を取れば満足してしまう人も多いなか、なぜ果敢に挑戦を続けるのでしょうか?

「コンテストって、おもしろいんですよ。例えば本のお仕事はできる枠の中でしかやらないですよね。納期もあるし、当然、依頼された企画コンセプトに合わせなくてはならない。でもコンテストはすべて自己責任。予算の制限もなく素材も自由に使え、何より新しいことにチャレンジできます。冒険といった方が合っているかもしれません。自分がどういう評価を受けるか知りたいですし、ドキドキワクワクするんです。もちろん、間に合わなかったり結果にがっかりしたりすることもありますが、刺激になりますよね。自分のスキルアップの場として、機会があれば挑戦し続けたいと思っています」

アトリエを見回すと、そこかしこにコンテストの出品作品が飾られていました。どの作品も、大胆かつ細やかに構成され、圧倒的な存在感を放っています。

額装作品のタイトルは「夏の不意打ち」。「現時点でもっとも仕上がりが気に入っている作品です。昆虫、花、共に今できる一番のスキルが盛り込まれています」

額の隣りのネックレスも出品作品。後ろの留め具に使っているのは、ヴィンテージのベークライトボタンです。

「気に入って買ったヴィンテージのボタンなどは、販売用には使えないので手元に置いておく予定の作品に取り入れています」

花に囲まれるように蝶やトンボなどがとまっている、ひときわ目を引くこちらのバッグは「田園」。出版社主催のコンテスト受賞作品です。

昆虫は花よりも難易度が高いのでスキルアップになるのだそう。「子どもの頃に住んでいたのが自然の多いところで、季節ごとに道端に咲くタンポポやコスモス、そしてその周りに虫が飛んでいるという風景が当たり前でした。その景色はずっと頭の中にあります」

ビーズとフェルト刺繍のパーティーバッグ「聖夜」では、バッグ右下にレイアウトされた葉の葉脈をビーズで表現。「最初にビーズ刺繍をしてその間に刺繍していくんです。今後、こういう表現もやっていきたいです」。出版社主催のコンテストで入選した作品。

ビーズとフェルト刺繍を取り入れた作品は、バッグ以外のアイテムも。

左はヘッドドレス「誓い」。裏にピンをつけ、コンテスト出品後にブローチとしても使用できるようアレンジしたそう。右は首飾り「躍動」。どちらも生活情報サイト主催のコンテストで受賞した作品です。

ビーズ協会主催コンテストには、ビーズ100%のネックレス「愛の花」を出品し、みごと受賞。試行錯誤しながらつくった思い出深い作品で、カップボードに飾っています。「このとき、ビーズステッチのレシピもたくさん考えたので、またつくりたいですね」

 

まだまだフェルトで遊べる

本格的にフェルト刺繍を始めて約5年。PieniSienさんは「キャリアとしてはまだまだ浅い」と謙遜しますが、つくってきた作品はかなりの数に上ります。それだけ、集中して相当なスピードで制作してきたということ。これまでに出版した本は著者本2冊、共著2冊。数々の手芸雑誌でも取り上げられ、今年も春2冊、秋1冊の著者本が出版を控えています。

出版のほかにもフェルトメーカーや手づくりサイトからキットを販売するなど、その活動はとても意欲的。「レシピを考えて制作していくという作業が大好きなので、本のお仕事が一番性に合っている」と言いながらも、これからは講座を開いて、フェルタートの技術を伝え、この世界の楽しさを広げていきたいそう。

最後に、今後の抱負をお尋ねすると、「まだまだフェルトで遊べると思っています。ビーズを足したり刺繍したりして、フェルトの可能性をもっと広げたい。もし行き詰まったら何か突拍子もないものに手を出すかもしれませんが、まだこの素材でいろいろと挑戦したいですね」と語ってくれました。


▲トルソーに飾っているのは3月末から東京都美術館で開催される展示会に出展予定のネックレス。展示会へ出展する作品は実用性は低いが、リメイクしてイベントなどで身につけるようにしている。

 

 

 

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