川畑杏奈さん(後編)|『5つのステッチでできるannasの刺繡工房』。工作感覚で手軽に楽しめる紙刺繡を提案。

, ,

川畑杏奈さん(後編)|『5つのステッチでできるannasの刺繡工房』。工作感覚で手軽に楽しめる紙刺繡を提案。

, ,

前編では、川畑さんのアトリエや刺繍教室、サテンステッチの基礎を網羅した『annasのプチ刺繍』のお話をしました。後編では、紙刺繍や動画配信など、新たな取り込みについてご紹介します。

撮影:奥 陽子 取材・文:梶 謡子

これまでに10冊以上もの本を手がけてきた川畑さんですが、原動力になっているのは、初心者の方にもっと刺繍を楽しんで欲しいという熱い思い。

 

『刺繍工房』での新しい試み

「初めて針を持つ方や、不器用で刺繍は苦手という方に、どうしたら刺繍の魅力を伝えることができるのかを常に考えてきました。そんなとき、ふとひらめいたのが紙刺繍です。以前、モンテッソーリの幼稚園で先生として働いていたとき、紙刺繍が女の子たちにとても人気だったことを思い出し、さっそく試作をしてみました」


▲『annasのプチ刺繍』(左)と『5つのステッチでできるannasの刺繍工房』(右)。どちらの本も、初心者の方にもっと刺繍を楽しんでほしいという思いから生まれた。

布に刺繍するのとは違い、紙に穴をあけながら刺す紙刺繍では、使えるステッチが限られます。けれど、その制約こそが新しいデザインを生み出すきっかけになりました。点と線を結んでできるデザインは、時に北欧っぽくもあり、レトロでどこか懐かしい印象。同じ穴に刺すと糸が抜けてしまうため、刺す順序を考えながらの作業には、パズルのような面白さも。こうして誕生した『5つのステッチでできるannasの刺繍工房』は、これまでサテンステッチを多用することが多かった川畑さんにとって、1つの転機となりました。


▲『5つのステッチでできるannasの刺繍工房』のための下描きと試作用のステッチ。実際に手を動かしてみることで気がつくことも多く、アイデアがより明確に。

「紙刺繍のいちばんの魅力は、なんといっても工作感覚で手軽に楽しめること。そして、メッセージカードやラッピングペーパーとして活用することで、つくる楽しみに加え、贈ったりもらったりと、まわりの人と喜びを分かち合うことができます。いくつかの図案を組み合わせたり、逆にモチーフを1つだけ取り出したりと、アレンジも無限大です」


▲「カードやタグにステッチして、プレゼントに添えても」と川畑さん。紙刺繍にはつくる楽しさだけでなく、贈る楽しみも。

 

You tubeやSNSでの取り組み

刺繍教室や本づくりのほかにも、インスタグラムやツイッター、フェイスブックなど、さまざまなSNSを連携させながら積極的に情報を発信しています。なかでも注目を集めているのがyou tubeを利用した動画配信です。『annasの動画でわかる刺繍教室』では、本の中では説明しきれなかった刺繍の基本や道具の使い方、ステッチの刺し方などをさまざまの視点から懇切丁寧に解説。


▲動画でもおなじみのコーナー。「撮影もすべてアトリエで行っています。作品が映えるよう、壁にはグリーンの壁紙を貼りました」

「人に教えることで初めて気づくこともたくさんありますが、本だけでは一方通行になりがち。遠方で教室に通えない方や、刺繍をしたことがない方など、より多くの方に興味を持ってもらえたらと、動画を配信することを思いつきました」

視聴者からの質問やリクエストに答えるなど、SNSを活用することでファンとのコミュニケーションは双方向に。誌面にとどまらない発想の豊かさも、川畑さんの大きな魅力といえそうです。

 

広告や装画。広がっていく仕事の可能性

刺繍作家とイラストレーターという2つの顔を持つ川畑さん。「手芸」というジャンルの枠を飛び越え、活躍の場はますます広がりを見せています。たとえば文庫本の装画や挿し絵、デパートや電車の中吊り広告、商品パッケージ、ドラマへの美術協力など。今後も暮らしの中の身近な場所で、川畑さんの作品を目にするチャンスがあるかもしれません。


▲こちらは「ぐるなび」関西版の中吊り広告。「デザイナーさんから届いたイメージラフをもとに、明るめの色を意識しながらステッチしました。ふだんは刺さないモチーフにも挑戦したので新鮮でした」


▲製菓会社からの依頼でパッケージ用の刺繍を担当。「個包装のキャンディに366日分の誕生花と花言葉を添えるため、制作に一苦労。図案は図鑑などを参考に考えました」


▲人気作家の小説やエッセイ本の装画も。「これまで以上に多くの方の目に触れる貴重な経験となりました」

今後の目標は、以前からあたため続けてきた刺繍のアニメーションに力を入れていきたいそう。

「1コマ1コマ、手作業で仕上げていくので時間も労力もかかりますが、そのぶん完成したときの喜びはひとしお。1つのメディアにこだわらず、いろんな方法でこれからも刺繍の魅力を伝えていきたいと思っています」

 

おすすめコラム