もうすぐハロウィン。お祭り気分を閉じ込めて、小さな道具をこしらえる

撮影:masaco   文:太田明子

ハロウィンというと、お化けなどに扮した子どもたちが近所を練り歩き、軒並みにドアを叩いては、「お菓子をくれないと悪戯するぞ(Trick or treat)」とおねだりする愉快なお祭りとして知られています。

アメリカ発祥と思われがちですが、本来はイギリスで始まった風習。古くはケルト人(ヨーロッパの先住民族・ドルイド教)が先祖の霊をまつるお祭りに由来します。ケルト民族の暦では11月1日が新年の幕開け、一年の収穫を神に感謝する日でした。その前夜10月30日は大晦日にあたり、先祖の霊が戻ってくると信じられていました。同時に、地上をうろつく魔女や悪霊たちが家の中に入ってこないように、一晩中ランプを灯したのでした。カボチャなどをくりぬいて提灯をつくり、藁人形や麦の穂でいろんな動物をつくり、仮面・仮装をして行列をなして広場のたき火の周りで歌ったり踊ったり。そして最後に人形を燃やすならわしがあったそうです。

この風習は、3~4世紀ごろ、ヨーロッパにキリスト教が広まりさらに発展。7世紀ごろには、キリスト教の祝日である万聖節の前夜祭All Hallow’s Eveningと重なることから一緒に行うようになり、これを縮めてHalloweenという行事になりました。

『愛らしい加賀のゆびぬき』(寺島綾子著)では、ハロウィンを象徴する墓地とお化けを、大胆な遊び心でゆびぬきに閉じ込めました。

本書は加賀に伝わるお作法道具、ゆびぬきのつくり方をガイダンスしたもので、もとは加賀友禅のお針子さんたちが余った布や糸でつくった実用品。一本の絹糸を幾重にもかがり、糸を交差させて綾なす存在感あふれるもの。規則性のある手作業で、色や分割、技法によって模様が無限に変化するため、まるで万華鏡をのぞくような不思議な面白さに魅了されます。

土地の先人たちが礎を築いた文化を、長い時代にわたって守り抜く高い精神性が、どこかハロウィンの歴史とリンクします。ケルト民族のいにしえの慣習に想いを馳せながら針を動かすと、あっという間に時が流れるような気がします。ていねいに完成させたものを飾ったり使ったりする悦びも格別。

去年とはひと味違うハロウィンを迎えてみてはいかが。

 

写真は『愛らしい加賀のゆびぬき』より。

参考文献:『イギリス祭事・民俗事典』(チャールズ・カイトリー著、澁谷勉訳 大修館書店)、『ハロウィン』(ロビン・メイ著、バーグランド・薫訳 同朋舎)『日本大百科全書 2001』(小学館)

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