祖母、母、そして娘。3世代の遺伝子に組み込まれ、伝承される手仕事。「HAND on AND on」2019.5.18(Sat)〜5.26(Sun)葉山

撮影・文:つくりら編集部

不思議な手刺繍に心を奪われました。

それは緻密なようでいて、自由でしなやか。刺し手の楽しそうな息づかいが伝わってくるよう。作家の名前はHitomi Usutani。インスタグラムのタイムラインに流れてきた彼女の作品に釘付けになったのは、今年4月のことです。

インスタグラムに紹介されていた作品展で興味をそそられたのが、葉山の「SUNSHINE+CLOUD」で開催される「Hand on AND on」。「親子3世代展示」と書かれたその内容をご本人にお尋ねすると、「母は染色作家でウスタニ・ミホといい、祖母の臼谷美恵はインドのカンタ刺繍をしています」とのこと。お祖母さまは御歳85歳。その3世代の手仕事が一堂に会すという、またとない展示のよう。これは絶対に観に行かなくては・・・!

Hitomiさんが在店しているという開催2日目、会場におじゃましました。

壁面には、Hitomiさんのフリーステッチ刺繍とお祖母さまのカンタ刺繍が飾られています。作風も手法もまったく異なるのに、なんとも美しいハーモニー! やはり “遺伝子”の成せる業なんでしょうか。

会場に置かれた虫メガネでフリーステッチを拡大して見てみると、糸1本でアルファベットが。これは、50年代に活躍したアメリカの詩人、アレン・ギンズバーグの詩で、Hitomiさんが高校生くらいのときからバイブルとして読んでいたものなのだそう。

そして、「SUNSHINE+CLOUD」とのスペシャルコラボレーションが、「DOG ON THE BEACH」ON THE SHIRTS。美術作家、永井宏の名作「dog on the beach」の詩を、Hitomiさんが手刺繍したリネンシャツ。ステッチは衿に入っていたり、肩に入っていたり。1枚1枚、違うのです。

会場には「dog on the beach」の本も。本が置かれた布の英文はHitomiさんが綴ったもの。

会場奥でひときわ目を引いたのが、藍染めのストール。お母さまのウスタニ・ミホさんの作品です。

張りのある生地はパイナップルの葉脈を使ったというピーニャ。フィリピンの伝統工芸ということですが、最近では職人も少なくなり、希少なものになっているのだそう。このピーニャを藍で染め、ところどころ繊維を抜いて模様をつくっています。「縫い締め絞り」というのだとHitomiさんが教えてくれました。

展示会のタイトル、「HAND on AND on」の「hand on」は、手渡す、伝える、知らせる、という意味。そして「on and on」は、引き続き、休まずに、延々と、という意味。

布に囲まれて育った環境から、自然と手仕事に親しむようになった3世代。技法も表現方法も三人三様なのに、底流に流れている何かが一緒、のような気がする。だから見ているこちらもなんだかほっとして、幸せな気持ちになってしまうのです。

期間:2019.5.18(Sat) – 5.26(Sun)
場所:SUNSHINE+CLOUD
神奈川県三浦郡葉山町一色 2151-1
https://sunshine-cloud.com/
開催時間: 11:00〜19:00 *月曜休み
問い合わせ先:046-876-0746

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