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美しく酒をのむ(後編)|「五味のおつまみ」×5種の酒。鮮やかなマリアージュに刺激され、眠っていた五感が動き出す。

美しく酒をのむ(後編)|「五味のおつまみ」×5種の酒。鮮やかなマリアージュに刺激され、眠っていた五感が動き出す。

前編では、陶芸家の長谷川泰子さんと山夲順子さんの酒器についてご紹介しました。後編では、料理研究家・片幸子さんの「五味のおつまみ」と日本酒のマッチングについてお話しします。

撮影:田辺エリ 取材・文:つくりら編集部 協力:株式会社プラスサチ/料理力研究所

お酒をのむもうひとつの楽しみは、酒の肴、“あて”です。暑くて食欲がないときでも、美味しいお酒と少しのあてがあれば、どうにか切り抜けられる。毎夏、決まってそんな日が幾日かあります。

 

日本の食文化、5つの味

この日、料理研究家の片幸子さんが用意したのは、「五味のおつまみ」。

五味とは、塩味、酸味、苦味、旨味、そして甘味。塩味は「豆腐の味噌漬け」、酸味は「人参の胡麻酢和え」、苦味は「ゴーヤの糠漬け」、旨味は「焼き羅臼昆布」、甘味は「ドライプルーンとクリームチーズ」です。

この5つの味を、それぞれ日本酒と合わせて楽しもう、というのが、「五味の味わいと日本酒のマッチング」のセッションです。


▲「五味のおつまみプレート」。こちらの器は陶芸家の山夲順子さんの作品。

ほかの参加者のテーブルをふと眺めると、なんとお皿が全部違います。思わず、立ち上がって、“器めぐり”に歩き出してしまいました。


▲こちらの器は長谷川泰子さんの作品です。

 

自然の恵みを活かした頚城酒造の酒づくり

1697年から酒づくりを始めたという新潟県上越市の頚城酒造。代々続く造り酒屋に生まれた八木崇博さんは、ごく自然に日本酒がある風景のなかで育ったそう。

「柿崎は新潟県の南西、旧中頸城郡の北端、人口1万人くらいの小さな町です。古くから水に恵まれた土地で、自社の酒造りには米山の伏流水でもある自家井戸と平成名水百選『大出口泉水』を用いています」

豊かな山々が育む水と、肥沃な大地に育つ米、そして歴代の杜氏から継承してきた酒づくりの技術。この3つを大切に酒をつくってきたのだと語ります。


▲日本酒とおつまみのマリアージュについてお話してくれた、頚城酒造の八木崇博さん(左)と料理研究家の片幸子さん(右)。

頚城酒造さんが用意してくれた日本酒は、写真の5種類。写真右から、作家さんの作品制作のために送った酒「純米吟醸 越路の紅梅」、「八恵久比岐 大吟醸 空」、「純米 越路乃紅梅」、「八恵久比岐 純米吟醸 風」、そして一番左が「燗で呑む越路乃紅梅 純米生詰」です。

 

淡麗な酒から燗酒までを堪能

はじめの一杯は「八恵久比岐 大吟醸 空」。こちらは頚城酒造さんの地元、柿崎にて契約栽培をした「山田錦」を100%使用した大吟醸酒。「八恵久比岐(はっけいくびき)」の「八恵」とは、「太陽(陽)・水・土・大気(空)・風・森林(木)・雪そして、人」で、「抜けるように青い柿崎の空」をコンセプトにつくったお酒なのだそう。


▲「八恵久比岐」のラベルは、柿崎の8つの恵みをマークにしたものだと説明してくれた頚城酒造の八木さん。

食中酒として香りを抑え、すっきりとした、雑味のない味わいの「空」は、酒器でなく、グラスに注ぎます。こちらのお酒と合わせるのは、塩味の「豆腐の味噌漬け」です。

酸味の「人参の胡麻酢和え」と苦みの「ゴーヤの糠漬け」には、酸味のあるドライな、キレのよい「純米 越路乃紅梅」を合わせます。

旨味の「焼き羅臼昆布」には、豊潤なうま味を特長とした酒「八恵久比岐 純米吟醸 風」を合わせ、甘味の「ドライプルーンとクリームチーズ」には、「燗で呑む越路乃紅梅 純米生詰」、燗酒です。

「マリアージュのポイントは、酒とおつまみの味わいの特長を合わせることで、お酒の味わい、おつまみの味わいがそれぞれ、より引き立つ」と、片さんは説明してくれます。

「たとえば、酸味とキレが特長のお酒に、うま味の強いおつまみを合わせると、おつまみのうま味にお酒が負けてしまい、お酒の存在感が薄れます。お酒を引き立てるおつまみ、食事を引き立てるお酒、という組み合わせがあることを実感していただくという試みです」

片さんに燗酒をついでもらったときは、すでにほろ酔いは通り越し、すっかりいい気分。悲しいかな、お酒の味もかなりうろ覚えです。

この「美しく酒をのむ」は、朝から夜まで3回に渡り、開催。平日にも関わらず、総勢、50名を越える方が参加したそう。

酒蔵の蔵元、二人の陶芸家、料理研究家。その道のプロフェッショナルが、それぞれの視点で提案した「美しく酒をのむ」シーンに、五感はもちろん、知的好奇心も大いに刺激されました。心にも、体にもしっかりと栄養が行き渡ったと実感。2018年猛暑の忘れがたき一日として、しっかりと記憶に刻まれました。

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