アートクレイシルバー|粘土が純銀に変わる!魔法のようにでき上がるシルバーアクセサリー。講師:古橋路子さん(m silver)

アートクレイシルバー|粘土が純銀に変わる!魔法のようにでき上がるシルバーアクセサリー。講師:古橋路子さん(m silver)

「アートクレイシルバー」。ものづくりが好きな方なら一度は耳にしたことがあるかもしれません。やわらかな銀粘土を焼成してつくるクラフトアートで、アクセサリーを中心につくり手が増えています。今回、レッスンを体験させていただいたのは、古橋路子さんの「silver petit pas」(シルバープティパ)教室です。

撮影:田辺エリ 取材・文:つくりら編集部

どんなアートも自然の創造物には遠く及ばない――自然への畏敬の念をものづくりの糧としている作家は少なくありません。古橋さんもそのひとりではないでしょうか。彼女のホームページをのぞいてみると、“アートになった自然“がそこここに。乾いた植物にそっと手を差し伸べて、“魔法の白い粉”でアートとして甦らせる。美しさを封じ込め、より永く、より愛を享受できるように。もしかしたら古橋さんは慈愛に満ちた救世主なのかもしれない・・・。どこまでも膨らむ妄想にひとりごちながら、足早にレッスン会場へ。

 

繊細な作品に触れ、創作意欲がアップ

会場に入るなり目に飛び込んできたのは、サイトでしかと眺めていたあの作品たち。おお、実物だ! 鮮やかに葉脈が浮き立つ葉っぱ、ドライの果てに銀に姿を変えたヨウシュウヤマゴボウのブローチ・・・。アートとして命をつながれた植物は、なおも凛とした美しさを湛えています。
「本物にまさるものはありません。作品にしようと思うと、葉っぱの選び方まで変わります」。古橋さんの説明に、うんうんと納得。


▲お客様のリクエストでつくった葉っぱのトレイ。葉っぱにシルバーペーストを塗り、焼成させると、葉っぱ自体は焼失し、葉脈を写しとったシルバーペーストだけが残る。


▲ヨウシュウヤマゴボウのネックレス(上と左)とブローチ(右下)。真ん中が本物のヨウシュウヤマゴボウをドライにしたもの。


▲こちらはナンキンハゼの実を、見たまま感じとったままに手でつくり出したピアス。ぷっくりとした丸みがそのまま再現されている。


▲レッスン前、作品サンプルを準備する古橋さん。


▲モールドにはアルファベットをはじめ、さまざまな絵柄が入っている。

そしてこちらが、本日つくれる作品の一例。好きなモチーフを選んでネックレスやブローチに。

大きなテーブルには、レッスンで使う道具が人数分きっちり並べられています。すべて古橋さんが用意してくれるので、参加者は手ぶらでOK。その日のうちに作品ができ上がり、持ち帰れるのがなによりうれしい。


▲レッスン会場は千葉県・新浦安にある「スタジオブーケ」さん。フレンチテイストでまとめたインテリアは、完成作品を撮影する舞台装置として生徒さんに大人気。

 

やわらかな銀粘土がどんどん形を変えていく

いよいよレッスンがスタートです。

私は葉っぱモチーフのネックレスをつくることにしました。
ほかのモチーフよりも大きめなので、つくりやすいかも・・・とほのかに期待して。

まずは小さな袋から銀粘土を取り出します。手でまるめ、透明なミニプレスを押し当てながら、ボードの上でボールを転がすようにして表面をなめらかに。

粘土の両脇にゲージを2枚ずつ重ねて高さを保ちながら、ローラーで伸ばして銀粘土を平らにします。クッキーの生地を伸ばすのと同じ要領ですね。

伸ばした粘土の大きさでモチーフがきっちり隠れるかどうか、モールドに当ててみてチェック。

モチーフ部分に離型剤用のオイルを塗ってから、粘土を置き、上から透明のトレイで抑えます。両脇のスケールは各1枚ずつに減らして、高さを調整。

粘土に葉っぱのモチーフが刻まれました。おっと、左側の葉っぱにちょっと粘土が足らなかったみたい。が、このまま突き進むことに。

まわりの余分な粘土をクレイカッターで切り取っていきます。まだ粘土がやわらかいので、粘土がカッターに引っ張られてしまうことも。あせらず、ゆっくり、慎重に。

クッキングペーパーの上に粘土を載せて、保温プレートの上で乾燥させます。私がつくった葉っぱのモチーフは、ほかの方の作品よりもずいぶん大きいですね(笑)。

乾燥させて石膏のようになったら、ゴム台の上に載せて、ヤスリを使ってまわりのバリを削っていきます。大きなヤスリを使うと一気に削れていくので、削りすぎに注意。このあとさらに細かいスポンジヤスリで整えて。ネックレスにする場合は、このあとにドリルで穴をあけます。

いよいよ焼成。電気炉に入れます。800度で5分。

電気炉から取り出しました。あら、少し小さくなっちゃった? 「焼成すると一割くらい縮みます。焼くとまわりに結晶ができて白くなります」(古橋さん)

ステンレスブラシで結晶をはがしていくと、次第に銀色に。わぁっ、だんだん輝いてきた!ピッカピカにしたいか、マットに仕上げたいかは、ここからの磨き加減で決まるそう。

最後にネックレスチェーンをつけて、でき上がりました!

 レッスンで学んだことは、つくり方、だけじゃない

銀粘土の入った小さな袋をビリリと破るところから始めて、およそ2時間。曲がりなりにも1つのネックレスが完成しました。ずいぶんと大味になってしまった作品第1号を眺めながら、次はもう少しこぶりのモチーフに挑戦しようと秘かに心に誓います。

レッスンに参加してから数週間後、インスタグラムのタイムラインに流れてきた古橋さんの投稿に、こんなメッセージが綴られていました。

「最近歩く時に、
自転車をこぐ時に
目に入る、本当にその辺りの植物。
つくりが面白いもの、
細かな変化をしていくものが
気になります」

日々の制作の隙間からこぼれ落ちる、古橋さんの小さなつぶやき。彼女のレッスンに参加していなかったらきっと読み飛ばしてしまったことでしょう。あの時間を共有したことで、ここに立ち止まれる感性が、私の中に育った。“アートになった自然”に心奪われた瞬間、指先を動かして銀粘土と向き合った瞬間、だんだんとアクセサリーに変わる様を見守った瞬間・・・。いくつかの断片がまざまざと思い出され、レッスン数週間後の私の心に、古橋さんの言葉がじわりとしみ渡ります。

実際に手を動かしてつくりあげた達成感もさることながら、その日の体験が記憶となって自分のなかでゆっくりと醸成され、美意識として育まれていったことへの嬉しい誤算。古橋さんから学ばせていただいた大切なこと、それは「仔細に自然を観察する」という“日常の在り方”だった気がします。

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