パリ取材・第4話|「パリ」という鏡を覗き込んだら、日本の素晴らしさも見えてきた。「日本の伝統」×「パリのセンス」で生まれるものはきっとある。

パリ取材・第4話|「パリ」という鏡を覗き込んだら、日本の素晴らしさも見えてきた。「日本の伝統」×「パリのセンス」で生まれるものはきっとある。

つくりら海外取材スペシャル第4話は、第3話で紹介したパリのメルスリーめぐりの続きです。“マストゴー”の手芸屋さん「Sajou」が登場!パリ在住のアーティスト、イザベル・ボワノさんと京都の老舗糸屋、糸六さんの素敵なランデブーも密着取材しています。

撮影:清水美由紀 取材・文:平岡京子 現地コーディネート:窪田セリック由佳 取材協力:糸六株式会社

パリに来たら必ず寄りたい店、サジュー

メトロのレオミュール・セバストポル駅からしばらく歩くと、静かな街並みの中に鮮やかなオレンジ色をした店舗が見えてきます。ここが、パリのメルスリーめぐりでは欠かすことのできない有名店、「Sajou Paris(サジュー パリ)」です。


▲オレンジ色が効いている絵になる店構えの「Sajou」。

「Sajou」は1830 年ごろにジャック・シモン・サジュー氏によって創立。創業者のサジュー氏はフランスで最初にカラーの図案集を出版した人物だと云われています。その後、時代の流れに逆らえず、100年以上続いた老舗メゾンも1954年に一度閉店。その約50年後、現在のオーナーであるフレデリック・クレスタン・ビエ氏が「Sajou」の版権を譲り受け、復活させました。


▲「Sajou」の店内は、木のぬくもりが感じられる居心地のいい空間。


▲店内の木の色と、オリジナルの商品のパッケージが優しく調和。

店内では、「Sajou」が初めて印刷して販売した図案を昔のままの姿で購入できるほか、糸や針、布やキットなど、歴史ある「Sajou」らしさを感じるオリジナルの商品が並んでいます。


▲木綿や混紡など、各種のオリジナル糸が揃う棚。センスの良い色合いとディスプレイの美しさに見とれてしまう。


▲ふたの部分に好みの刺繍ができる小さな缶の小物入れ。キットになっているもの、でき上がっているものなどが選べる。ギフトにも人気。


▲お裁縫箱は「Sajou」のエッセンスが詰め込まれた逸品。手仕事は滅多にしない人でも、つい欲しくなってしまう可愛らしさ。

取材に訪れた日、オーナーはあいにく不在でしたが、スタッフの方の気遣いで、オーナーに電話をつないでくれるという、嬉しいひと幕も。「次はぜひ日本で会いましょう」とのオーナーの伝言に糸六さんも大感激。オーナーへのプレゼントとして、糸六の絹糸見本帳をスタッフに託し、再会を約束してお店を後にしました。


▲とても親切でフレンドリーなスタッフの女性と、糸六の今井登美子さんと春樹さん。お互いに仕事で触れている糸や針などを間に挟めば、言葉は通じなくてもちゃんとコミュニケーションが取れるのはすごい!

 

23000種類以上が揃うボタンの専門店

サクレクール寺院がある観光名所、モンマルトルへ。ここにボタンの店、「Dam Boutons(ダム・ブトン)」があります。モンマルトルには生地や手芸材料を扱うお店が数多くありますが、ボタンの専門店は「Dam Boutons」1軒のみ。充実した品揃えで広く知られたお店です。


▲モンマルトルのボタン専門店「Dam Boutons」の看板。

店内に入ってびっくり。壁一面に並ぶボタンは、ヴィンテージからオリジナルまで23000種類以上!目が回るほどの数です。色や素材、形状などによって分類されたボタンは、一種類ずつ細長いケースに入れられて、天井まである棚に整然と陳列されています。


▲「Dam Boutons」の店内には、壁一面にボタンが並ぶ。

ボタンの素材は、ココナッツ、コルク、セラミック、エナメル、真珠、ラインストーンなど、種類が多いうえに、棚が高くて手が届きません。あれこれ見たいお客様のリクエストに応じて、店主は踏み台を上ったり、降りたり、大忙しです。


▲赤系の色でまとめた棚にも、こんなに多くの種類のボタンが揃っている。

アンティークのボタンやバックル、ビジューなど、個性豊かなものが好きな今井さんは、普段から少しずつ購入しては帯留や小物に仕立てて楽しんでいるそう。たくさんのボタンに囲まれ、とっても嬉しそうです。


▲床から天井まで、こだわりのボタンで埋め尽くされ、選ぶのも大変。

 

パリ在住のアーティスト、イザベル・ボワノさんと対面!

メルスリーめぐりの日、もうひとつ、楽しみにしていたことがありました。パリ在住のアーティスト、イザベル・ボワノさんとの“ランデブー”です。

植物、人、動物と、幅広い題材をユーモラスな表情と美しい色彩で描くイザベルさんは、刺繍やバッグ、ラッピングペーパーなど、ものづくりでも豊かな才能を発揮しているアーティスト。日本でも多くの著書を出版し、雑誌の連載も担当しているほどの大の親日家で、日本語も少し話せます。


▲イザベル・ボワノさん。佇まいや物腰にセンスの良さが漂う。

京都の老舗糸屋である糸六さんに関心を持ってくれて、糸見本を見ながら「きれい!」を連発。刺繍も楽しむ彼女は、創作意欲をとても刺激されたよう。リネンを使って袋物などをデザインすることも多いイザベルさんは、リネンと絹糸がとても合うのではないかと熱心に語ってくれました。


▲愛らしくてセンスを感じるイザベルさんのイラスト。絹糸とのコラボも相性が良さそう。


▲街角のカフェで糸見本帳を見るイザベルさんと今井さん親子。

「いつかコラボで何かをつくれたらいいですね!」と、意気投合する3人。この良縁を機会に、伝統の絹糸がパリのテイストと混ざり合い、新しい表現をつくり出す日もそう遠くないのかもしれません。

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